2021年11月17日(水)
主張
GDPの落ち込み
暮らし底上げの対策が急務だ
コロナの感染拡大によって日本経済が深い傷を負っている姿が改めて浮き彫りになりました。内閣府が発表した2021年7~9月期の国内総生産(GDP、速報値)は、物価変動を差し引いた実質で4~6月期に比べ0・8%落ち込みました。年率換算では3・0%の下落です。マイナス成長は1~3月期以来2期ぶりです。個人消費がコロナ禍によって直撃された影響は極めて深刻です。苦境にある国民の暮らしを支え、日本経済を立て直す対策が急務です。
個人消費の大幅低下
7~9月期のGDPを費目別にみると、GDPの半分以上を占める個人消費が前期に比べ1・1%も減少しました。7~9月期はコロナの第5波の感染拡大で緊急事態宣言が発令された時期とほぼ重なります。東京五輪・パラリンピックの開催を強行し、感染爆発を引き起こしたことで、旅行や外出、外食の自粛や、休業が長引く結果を招き、個人消費の冷え込みに拍車をかけました。
個人消費以外で見ても、内需は民間住宅投資が2・6%、民間設備投資は3・8%のマイナスと不振です。輸出も2・1%のマイナスに転じました。半導体不足で自動車の生産・輸出が落ち込んだなどが原因です。
コロナ対応で科学を無視した無為無策を続けて感染を急拡大させたうえ、国民生活を守るための経済支援などをまともに行ってこなかった菅義偉前政権の責任は重大です。
GDP以外の経済統計で見ても、2人以上世帯の家計の消費支出は、8月は前年同月比で3・0%、9月は1・9%の減少です(家計調査)。原油価格の上昇や円安の影響を受けて、消費者物価や企業物価(卸売物価)も上昇しており、関連する業者を苦しめ、個人消費に打撃となっています。今後懸念されるコロナ感染「第6波」への備えにも不安が強く、経済の先行きは不透明です。
日本経済は、コロナ禍以前から、安倍晋三元政権の「アベノミクス」で格差と貧困を広げ、2回にわたる消費税の増税で消費不況に陥っていました。20年度のGDPもマイナス4・4%と、19年度に続くマイナス成長です。
21年7~9月期のGDPはコロナ感染拡大以前の19年10~12月期の水準を下回っており、日本経済の成長を止めている大本にメスを入れなければ、経済を安定的な成長の軌道に乗せることはできません。
岸田文雄政権は、「新しい資本主義」を目指すことを売り物にしていますが、安倍政権以来の経済政策の焼き直しです。国民の暮らしは後回しで、大企業のための「成長」を目指すやり方では、国民の暮らしは改善されません。
消費税減税の決断こそ
コロナで傷めつけられた暮らしや中小企業の経営を応援する緊急の対策とともに、安倍政権が10%に引き上げた消費税の税率を5%に戻すことが不可欠です。コロナ禍で消費税(付加価値税)の減税に踏み切る国が相次いでおり、日本も真剣に検討すべきです。
コロナで苦しむ国民の負担を減らすことと合わせ、コロナ禍でも大もうけしている大企業や大資産家に応分の負担を求めて財源を確保し、暮らしを底上げする経済政策への転換を図るときです。