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2021年9月22日(水)

主張

島根2号機「合格」

安全置き去りの再稼働やめよ

 原子力規制委員会は15日、中国電力の島根原発2号機(松江市)について、再稼働に必要な安全対策の新規制基準に「適合」するとした審査書を正式決定しました。中国電は「大きな節目」として、再稼働への動きを加速させる構えです。しかし、原発そのものの危険とともに事故時の避難計画の実効性など周辺住民の不安や懸念は消えません。安全を置き去りにした再稼働に突き進むのでなく、きっぱり廃炉にすべきです。

県庁所在地で唯一の原発

 島根原発2号機は2012年1月に定期検査で運転を停止しました。13年12月、再稼働についての申請を規制委に行い、約8年にわたる審査が行われました。同原発から2キロ南の宍道断層の評価をめぐり中国電側は訂正を繰り返すなどしました。検査記録報告書の偽造なども問題になりました。

 島根原発は全国で唯一、県庁所在地に立地しています。県庁など主要な行政機関は同原発から10キロ圏内にあります。事故発生の際、県の対策本部が機能しなくなる危険は濃厚です。県は出雲市に機能を移すとしていますが、同市も避難計画の策定が義務付けられている30キロ圏内です。どの時点でどう移動するのか、現実に実施することは困難視されています。

 同原発30キロ圏内は島根、鳥取両県にまたがり、約46万人が暮らしています。避難計画への疑問は尽きません。島根県側約39万人は、県内だけでなく岡山、広島両県に避難することになっています。鳥取県側約7万人は同県の中部、東部へ逃げるとしています。地震や津波、大雪などいくつもの災害が重なった場合、道路が確保できるのかなど課題は山積しています。

 原発周辺住民の避難では今年3月、日本原子力発電の東海第2原発(茨城県東海村)の訴訟で水戸地裁は「実現可能な避難計画が整えられていると言うにはほど遠い」と指摘し、運転差し止めを命じました。30キロ圏内に約94万人が居住する同原発の再稼働の企てに対する司法からの強い警告です。

 水戸地裁の司法判断は、避難計画の実現性・有効性への疑念が消えない島根原発にも通じます。そもそも規制委は、避難計画を審査の対象にしていません。

 住民を安全に避難させる保証もなく、再稼働にゴーサインを出すこと自体が大きな問題です。

 周辺自治体の意向を聞かない中国電への不満も上がっています。中国電は島根県と松江市の「同意」があれば再稼働できるという立場です。しかし、島根県内の出雲、雲南、安来の3市、鳥取県と同県内の境港、米子の2市の同意については後ろ向きのままです。周辺自治体から「立地自治体も周辺も原子力災害のリスクは同じ」(「東京」16日付)と批判が出ています。地元自治体を無視するやり方には全く道理はありません。

「安全神話」復活許すな

 島根原発2号機は、10年半前に重大事故を起こした東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型炉です。審査請求された原発の再稼働を次々と認めることは、事故の教訓を忘れた「安全神話」の復活にほかなりません。地球温暖化対策を口実に、深刻な環境破壊を引き起こす原発に依存し続けることは、あまりに無責任です。原発再稼働路線は中止し、原発ゼロの日本にすすむことが必要です。


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