2021年9月18日(土)
シリーズ検証 安倍・菅政権の9年
税財政
国民だまして負担増
安倍・菅政権の税・財政政策は、国民に消費税増税を押し付ける一方、大企業には減税してやり、社会保障も削減するという究極の新自由主義政策でした。これらを安倍・菅政権は謀略まがいの手法で国民をだまして進めてきたのです。(肩書は全て当時)
(小村優、清水渡、杉本恒如)
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「日本を、取り戻す」。12年12月の総選挙で自民党が掲げたスローガンです。この選挙で、自民党は公約に「世界で一番企業が活動しやすい国」を盛り込みました。首相に就任した安倍氏は、(1)金融緩和(2)財政出動(3)成長戦略―を柱とする大企業優遇の「3本の矢」をアベノミクスとして推進。円安と株高を加速しました。
国民には恩恵も実感がないまま、「好景気」を演出。これらの狙いは消費税増税を国民に押し付けることでした。
14年4月、安倍政権が8%への消費税率引き上げを強行すると、たちまち個人消費が冷え込み、景気悪化が明らかになりました。14年4~6月期の国内総生産(GDP)は東日本大震災以来の落ち込みとなりました。
消費税増税前や増税当初、安倍首相は消費への影響は一時的なものだと繰り返していました。しかし、景気低迷は続き、GDPの個人消費が増税前水準を回復したのは19年7~9月期、つまり10%増税前の「駆け込み消費」の時期でした。
謀略まがいの手法 議席かすめ取り…
社会保障削り 5兆9000億円以上 大なた
大企業に減税 法人税3回 優遇税制も
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消費税増税で国民生活と日本経済をボロボロにする一方、安倍・菅政権が力を入れたのは大企業減税と社会保障の削減です。15年度、16年度、18年度と3度にわたって法人税率を引き下げ、政権発足当初25・5%だった法人税率は23・2%まで低下。さらに毎年のように研究開発減税など大企業優遇税制を拡充。20年度「改正」では菅政権が看板としてきた「デジタル化の促進」を口実に、ソフトウエアについて、これまで対象にならなかったものも減税の対象とする研究開発減税の拡充を行っています。
医療や介護 年金支給も
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社会保障費については毎年の予算編成の中で自然増分(高齢化や医療の高度化で当然に増える費用)を削り続け、9年間で2兆円(国費)も削減しました。生活保護費の切り下げ、医療・介護の自己負担の引き上げ、75歳以上の高齢者の医療保険料値上げなどを行いました。
自然増分の削減とは別に、法改悪などに基づく社会保障費(給付費)の削減も次々に実行に移しました。年金支給額を9年間で約3兆6千億円も切り下げ、医療・介護の自己負担割合を引き上げました。
両者を合わせると、安倍・菅政権の9年間で5兆9千億円以上の社会保障費が削減されました。(表)
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党利党略で増税を延期
政府は当初、消費税増税について14年4月に8%にしたあと、15年10月に10%とする「連続増税」を予定していました。しかし、景気悪化に加え、国民の反発が強く、2度目の増税を強行することはなかなかできませんでした。安倍首相は14年11月に消費税増税を15年10月から17年4月に延期すると表明。審判を仰ぐとして解散・総選挙を行いました。この総選挙で自民・公明両党を合わせて改選前の水準を維持する議席を確保しました。
また、参院選直前となる16年6月にも消費税の再延期を宣言。参院選で与党は改選議席を上回る議席を獲得しています。結局、消費税増税の延期を党利党略として利用し、国民をごまかして議席をかすめ取ったのです。
便乗値上げ 政府が容認
19年10月の消費税増税に向けて政府がとったのは、謀略的な便乗値上げの促進でした。消費税率引き上げと同時に商品価格が引き上がると、経済への悪影響が目立ち、政権批判も高まるため、増税以前に価格を引き上げさせる作戦です。18年11月、公正取引委員会や消費者庁などの連名で、増税前に経営者の判断で値上げしても「便乗値上げ」とはみなさないという趣旨の文書を公表。これを受けたのか18年末から19年半ばにかけて商品値上げが相次いだのです。
それでも19年10月、10%への消費税率引き上げが強行されると、景気悪化が顕著になります。19年10~12月期の実質国内総生産(GDP)は年率換算7・5%減という大幅なマイナス成長となりました。
ここにコロナ禍が襲いかかっているのが現状です。目前に迫る総選挙では、富裕層と大企業に応分の負担を求め、消費税は5%に減税させることが世界の流れにもかなう道です。
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