2021年9月9日(木)
主張
自民党の総裁選び
安倍・菅政治支えた責任免れぬ
政権を投げ出した菅義偉首相の後継を選ぶ自民党総裁選(17日告示)をめぐる動きがあわただしくなっています。コロナ対策を議論するための臨時国会召集には応じない一方で、閣僚や派閥の領袖(りょうしゅう)・幹部らが会合を重ね、支持拡大に動き回る姿は、国民置き去りの権力闘争という他ありません。出馬の意欲を示しているのは、すべて安倍晋三前政権と菅政権で政府や党の要職を務めた顔ぶれです。破綻した「安倍・菅政治」を支えてきた共同の責任が問われる政治家では、国民が願う新しい政治への転換はできません。
目先で「顔」を替えても
菅首相が直前まで意欲を見せていた総裁選出馬を断念したのは、国民から噴き出した政権批判に追い詰められた結果です。無為無策を重ねたコロナ対応に怒りが集中しただけでなく、異論を排する強権政治、次々と発覚する「政治とカネ」の疑惑解明に背を向けたことも強い批判を浴びました。
問題は菅政権の1年にとどまりません。菅首相が昨年9月の政権発足時に掲げたのは「安倍政権の継承」でした。問われているのは、安倍前政権の約8年と合わせた「安倍・菅政治の9年」であり、それをこぞって支えて推進した自民・公明の政治そのものです。
安倍・菅政権は昨年はじめからコロナで失政を繰り返し、感染爆発を引き起こしています。科学的知見を無視し、国民と対話を行う意思も能力もないなどの致命的欠陥を大本からたださなければ、コロナ危機打開の道は開けません。
金権腐敗と国政私物化も際立ちました。安倍前首相がかかわる「森友」「加計」「桜を見る会」問題をはじめ閣僚らの一連の疑惑について説明責任を果たす姿勢は皆無です。沖縄県民の声に真っ向から反して米軍新基地建設を進める強権体質は、日本学術会議への人事介入で一層あらわです。
強権とモラル崩壊の政治を引き起こした根本にあるのは、立憲主義を無視・破壊した2015年の安保法制=戦争法の強行です。安倍前首相が持ち出した9条に自衛隊を書き込むなどの改憲策動も、菅政権は受け継ぎました。
総裁選に出るとされる政治家は、これらの失政・悪政の中心に身を置いた経歴の持ち主です。岸田文雄前政調会長は、第2次安倍政権発足の12年から5年近く外相を務め戦争法などを推進しました。高市早苗前総務相は大臣在職中に靖国神社を参拝するなどのタカ派です。同氏は総裁選で安倍氏の支援を受けたことを売り物にしています。河野太郎規制改革担当相は菅首相の側近で、担当したワクチン接種では供給不足で混乱を起こした責任があります。
他に名前があがる政治家も、安倍・菅政治の主要な支え手ばかりです。誰が「顔」になっても政治の中身は変わりません。
政権交代必ず実現しよう
市民連合と日本共産党、立憲民主党、社会民主党、れいわ新選組は8日、総選挙での野党共通政策で合意しました。憲法に基づく政治の回復、科学的知見に基づくコロナ対策強化、格差と貧困の是正などが柱です。国政の基本問題の政策と、それを実行する政権の実現に合意したことはきわめて重要です。本気の共闘の態勢を必ずつくりあげて政権交代を実現し、政治の展望を開きましょう。