2021年9月5日(日)
主張
菅政権とオリ・パラ
感染爆発招いた責任免れない
東京パラリンピックはきょう閉幕します。中止を求める国民の声に逆らい、東京オリンピック・パラリンピックを強行した菅義偉首相はパラ閉会式を待たずに政権を投げ出しました。オリ・パラ期間中、コロナ感染は爆発的に広がり、各地の医療崩壊の危機が深刻化しています。「人災」を引き起こした菅首相に国民の怒りが集中したのは当然です。首相と一体でオリ・パラを推進した自民党・公明党の責任は免れません。
「普通ない」の警告無視
五輪が開幕した7月23日に全国の新規感染者は4225人でした。それが五輪閉幕の8月8日には1万4472人に膨れ上がり、パラ開幕の8月24日には2万1569人に激増しました。7月後半に400人強だった全国の重症者はいまや5倍以上の2200人を超えました。医療がひっ迫し、症状が悪化しても入院できず自宅で亡くなる人が相次ぐ重大事態です。
オリ・パラ開催が国民への誤ったメッセージとなって、多くの人の移動や集まりを促進させた結果であることは疑う余地はありません。「無観客」にしても、開会・閉会式が行われた新国立競技場周辺はごったがえし、自衛隊ブルーインパルスの飛行を見る人たちが各地で「密」をつくりました。
世界最大級のスポーツ祭典を決行し祝祭ムードをあおっている政府が、緊急事態宣言を出して自粛や行動制限を求めても、国民の心に届くはずがありません。
政府のコロナ分科会の尾身茂会長は6月、「いまの状況で普通は(開催し)ない」と警告していました。変異したデルタ株が猛威を振るう危険も指摘されていました。オンライン署名や東京都議選での自民党大敗、メディアの世論調査などで中止を求める民意も明白でした。首相は、それを無視し「安全・安心の大会」にすると言い張り「楽観シナリオ」にしがみついて開催に突き進みました。
国民の命と引き換えにした首相のギャンブルによって、犠牲と被害を拡大した罪は消せません。五輪閉幕の際、「無事に終えた」「素晴らしい大会」(8月9日)と自賛したことは、国民の苦しみが眼中にない許しがたい態度です。
パラ競技場に子どもを動員する「学校連携観戦」を容認し、参加した学校の教師や生徒の感染が確認されたことは深刻です。安全・安心と相いれない行事にあくまで固執したことを反省すべきです。
感染対策に総力を挙げなければならない時にオリ・パラに人材が割かれ医療提供体制に大きな負荷をかけたことは重大です。直ちにコロナ優先に切り替える時です。
許されぬ政治利用の思惑
2012年に政権復帰した安倍晋三前首相は原発事故後の状況を「アンダーコントロール」と世界を欺く演説までして招致に熱中しました。政権浮揚に使う思惑からです。昨年のコロナ禍での延期を2年後でなく1年後にしたのも、自身の総裁選日程をからめた動機だったとされています。
安倍政権を引き継いだ菅首相が開催だけでなく「有観客」にまで執着したのも自らの再選戦略のためでした。国民もアスリートも置き去りにして大義も理念もないオリ・パラを強行したことは重大な汚点です。五輪の政治利用を企てた「安倍・菅政治」は厳しく問われなければなりません。