2021年9月4日(土)
主張
菅首相が辞任へ
国民の怒りの声が追い詰めた
菅義偉首相が、今月実施する自民党総裁選に出馬しないことを明らかにしました。事実上の退陣表明です。昨年9月の就任から約1年で政権を投げ出すことになったのは、国民の世論と運動に追い詰められた結果です。コロナ対応に無為無策を重ね感染爆発を招いた菅政権への批判は大きく広がり、内閣支持率は急落していました。菅氏の辞任だけでは国民の願う政治は実現しません。菅首相とともに悪政を推進してきた自民・公明の与党には重大な責任があります。今こそ市民と野党が本気の共闘の力を発揮し、総選挙で政権交代を果たす時です。
コロナ大失政への怒り
菅首相は就任時に、コロナ対策を「最優先の課題」とし、「爆発的な感染拡大は絶対阻止」すると表明しました。しかし、言葉だけでした。医療や検査の体制強化は置き去りにして、人流を増やす「Go To事業」に固執したことで、感染者数を激増させました。
科学的な根拠を踏まえず、国民に説明しない菅政権のコロナ対応の致命的欠陥は、東京五輪・パラリンピックを強行したことに象徴的に示されました。緊急事態宣言の発令・延長を繰り返しても、感染抑止に逆行する五輪開催は国民への誤ったメッセージとなり、「第5波」の感染爆発に拍車をかけました。菅首相による「人災」が国民にもたらした犠牲と被害はあまりに甚大です。
五輪閉幕直後の8月下旬、菅氏の選挙区がある横浜市の市長選挙で全面支援した候補者が惨敗したことは、「菅政治ノー」の民意を劇的な形で示しました。五輪開催の是非が問われた7月の東京都議選でも、自民党は敗北しています。命より五輪を優先させ、そのことに反省のない政権が国民から見放され、行き詰まるのは当然です。命最優先への政治への転換がいよいよ重要になっています。
菅首相の強権体質にも批判が相次いでいます。憲法が保障する「学問の自由」を踏みにじり日本学術会議の人事に介入したことは、学者・研究者をはじめ幅広い国民の怒りを招きました。いまだに任命拒否の説明を拒み続ける首相にはまったく道理がありません。
沖縄県名護市辺野古での米軍新基地建設では、戦没者の遺骨が眠る沖縄本島南部から埋め立て土砂を使うことを企て、県民の強い怒りをかきたてています。非道を押し通すことは通用しません。
「政治とカネ」問題の不信と疑念も尽きません。安倍晋三前首相の「桜を見る会」「森友」など疑惑の解明に完全に背を向けるなど、国民の政治不信をいっそう増幅させました。まず「自助」といって国民に「自己責任」を迫る冷たい姿勢も批判を浴びました。
今こそ政権交代の実現を
1年前、菅首相が掲げたのは安倍政権の継承・前進でした。問われるのは安倍・菅政権の9年間がもたらした政治の破綻です。自民党は総裁選で菅氏のかわりを選ぶとしていますが、自民・公明の枠内では首相の顔がかわっても、コロナ危機で浮き彫りになった政治の行き詰まりを打開することはできません。
新しい政治を実現するには政権交代しかありません。自公政治そのものを退場させるために、目前に迫った衆院選で野党が結束してたたかうことが不可欠です。