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2021年9月2日(木)

「ニュース女子」訴訟

DHCテレビに賠償命令

名誉毀損認定、謝罪掲載も

東京地裁

 沖縄の基地建設反対運動を取り上げた東京MXテレビの番組「ニュース女子」で名誉を毀損(きそん)されたとして、人権団体「のりこえねっと」共同代表の辛淑玉(しん・すご)さんが制作会社DHCテレビジョンと司会を務めた東京新聞論説副主幹(当時)の男性に1100万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が1日、東京地裁でありました。大嶋洋志裁判長はDHC社に550万円の支払いと謝罪文の掲載を命じました。

 判決は、同番組が沖縄県東村高江地区でのヘリパッド建設反対運動について「過激」「襲撃される」「テロリスト」などの表現を用い、「ことさらに暴力が加えられる可能性を強調し、それを一般の視聴者に印象付け」たと指摘。辛さんが経済的支援を含めて運動をあおったと報じたことで、辛さんの社会的評価を著しく低下させ、「重大な精神的損害」を与えたとしました。

 また制作側が「原告に対して裏付け取材をしていない」として、番組内容を「真実と信じる相当の理由があったとはいえない」と述べました。

 賠償については「金銭賠償のみによる補てんでは十分とはいえない」と指摘。同社サイトの当該番組動画を送信しているページに、辛さんに対する謝罪広告を掲載するよう命じました。期間については「動画を公表している限り削除や改変をしてはならない」としました。原告が求めた動画の削除は認めませんでした。

 司会を務めた男性への請求は棄却しました。男性は2200万円の賠償を求めて辛さんを反訴していましたが、これも棄却されました。


「画期的判決」 辛淑玉さんら会見

写真

(写真)記者会見する辛淑玉さん=1日、都内

 「画期的判決をいただいた」―。1日の東京地裁判決を受け、原告の辛淑玉さんと弁護団は都内で記者会見し、判決を評価しました。一方で、請求が棄却された部分については控訴する方針を表明。DHC社もこの日配信したネット番組の中で、控訴の姿勢を示しました。

 「この番組は、私を使って沖縄の平和運動を愚弄(ぐろう)するという、最も悪質な形のフェイクニュースだった」

 辛さんは番組をこう振り返りました。「このむごさをきちんと裁判の形で歴史にとどめ、後世の人が考えられるようにしたい」と訴訟の目的を語りました。

 裁判では、番組の放送後にネット上で自身への中傷が続いたことも証言しました。

 「多くの人に支えられ、持ちこたえられた。在日3世の私が日本の良心とタッグを組んで、道が開けるということを思い起こさせてくれた。第1ラウンドが終わった」

 DHC社はこの日の生番組の中で「判決を精査中」としつつ、控訴の方向だとしています。

 控訴すれば、地裁判決が命じたDHCによる謝罪文は当面掲載されないとみられます。(安川崇)


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