2021年8月5日(木)
政府の患者入院限定方針
批判噴出 与党も撤回要求
首相「撤回しない」
急増する新型コロナウイルス患者の入院対象を重症者などに限定し、それ以外は自宅療養を基本とするとした政府の無責任な方針転換に国民の不安と憤りが集中し、野党が批判を強めるなか、政府・与党に4日、大きな動揺が走りました。
自民党は同日、新型コロナ感染症対策本部などの合同会議で政府の新方針の撤回を求めることで一致。衆院厚生労働委員会では、公明党の高木美智代政調会長代理が、政府に「撤回も含めて検討し直していただきたい」と求めました。
背景には、感染爆発を起こしながら診療の体制も整わないまま患者を自宅に放置する政策を決めた政府と与党政治家への国民の強い憤りがあります。
「国民にまっとうな医療体制を供給しないというメッセージだ」。3日夕のTBS系番組で医師の倉持仁氏が政府の方針を厳しく批判し、菅義偉首相や小池百合子都知事について「こういう人たちに国を任せては国民の命は守れない」と辞任を求めると、ツイッターには多数の共感の声が飛び交いました。
日本共産党など野党3党は4日、政府方針は「命を切り捨てるものだ」と撤回を要求することで一致しました。
同日の厚労委で立憲民主党の長妻昭副代表が政府を追及すると、田村憲久厚労相は、「本来入院しなければならない方々の病床を確保するための対応だ。もしそうならなければ、また元へ戻せばいい」と方針の見直しに言及せざるをえませんでした。
質疑では、政府対策分科会の尾身茂会長が、「政府とは毎日のように相談・連絡・協議をしているが、この件に関しては相談したことはない」と事前の相談がなかったことを明かし、病床逼迫(ひっぱく)の背景となった感染の急拡大についても「オリンピックが人々の意識に与えた影響はある」と明言しました。
一方、田村厚労相は病床運用の方針は政府が決めることだと開き直り、リスクが高くないと判断されれば中等症でも高齢者でも在宅とする方針を示しました。
菅首相は4日夜、政府の入院限定方針に与党から撤回要求が出ていることについて「撤回しない」と表明。「理解してもらう」などと記者団に話しました。