2021年8月3日(火)
原水爆禁止世界大会・国際会議
禁止条約支持の世論広げ廃絶へ前進しよう
2日に行われた原水爆禁止2021年世界大会国際会議で、主催者・被爆者らのあいさつ、第1セッション「核兵器全面禁止のためのグローバルな行動」、第2セッション「核兵器全面禁止のためのアジアでの行動」での発言を紹介します。
主催者らあいさつ
新しい時代始まる
原水爆禁止世界大会実行委員会運営委員会共同代表 野口邦和さん
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1月22日、禁止条約が発効し、核兵器の禁止が世界の規範になりました。新しい時代が始まり、人類は核兵器のない世界へ大きな一歩を踏みだしました。「生きているうちに核兵器をなくしてほしい」との被爆者の訴えを真摯(しんし)に受け止め、被爆者とともに、被爆の実相を大きく内外に発信し続けてきた成果が結実したのです。
今年の世界大会は、禁止条約が発効したもとで、改めて核保有国と核依存国に対し、核不拡散条約(NPT)の核軍縮・撤廃義務とこれまでの合意事項の実行を迫る国際世論を構築するため、国連、各国政府、草の根の市民社会が新たな共同を大きく発展させる場となるでしょう。
コロナパンデミック(世界的流行)を早期に収束させ、平和で公正で持続可能な世界を実現するため、グローバルな連帯と共同を大きく発展させようではありませんか。共同の力で、核兵器の非人道性を告発する被爆の実相と被爆体験の普及・継承を促進し、核保有国と核依存国に核抑止力に依存する安全保障政策の転換を迫ろうではありませんか。
犠牲を繰り返すな
日本原水爆被害者団体協議会事務局長 木戸季市さん
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日本被団協結成65年の記念の年を、私は喜びと危機感をもって迎えました。喜びは核兵器禁止条約の発効です。危機感は、原爆地獄を生き延びてきた被爆者が鬼籍に入り、いなくなる日が刻々と迫っていることです。
5歳7カ月のとき長崎の爆心地から2キロで被爆しました。母親は顔いっぱいと胸を、私は顔の左半分をやけどしました。避難した防空壕(ごう)はうめき声で満ち、全身やけどで転がり込んできた兄の友人はまもなく息を引き取りました。
日本被団協は「核戦争起こすな、核兵器なくせ」「原爆被害に国家補償を」の二大要求を掲げ活動してきました。人類は私たちの犠牲と苦難を繰り返してはなりません。
政府の被爆者援護は被害の実態と大きくかけ離れています。「黒い雨」訴訟はその象徴的事案です。
いま世界は大きく変わりつつあります。山が動く地響きが聞こえるようです。すべての人が手を結ぶ運動の実現を願います。
「黒い雨」被害者救済
原爆「黒い雨」訴訟を支援する会共同代表 牧野一見さん
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被爆地域の拡大運動に45年間取り組み、この6年間、訴訟の共同代表としてたたかってきました。
広島高裁判決は原告全面勝訴でした。高裁判決は、内部被ばくを認めた広島地裁判決を維持し、さらに強化しました。政府の被爆者援護法違反の行政を断罪して「黒い雨」被害者の救済を命じた画期的なもので、「ヒロシマの世論と運動・司法の英知」の勝利であるといっても良いものです。
オール広島と全国の世論と運動に押された政府は、菅首相が上告断念を表明。判決が確定し、原告にはきょうから被爆者健康手帳の交付が始まりました。
約1万3000人と推定される高齢化した「黒い雨」被害者全員に一日も早く被爆者健康手帳が届くように、国、県、市に申請書類や審査基準の改定を急がせるために引き続き頑張ります。ご支援ありがとうございました。
第1セッション 保有・依存国の運動交流
世界的規模の協力
西部諸州法律基金 アメリカ ジャッキー・カバソさん
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核兵器は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)の拡大を防ぎ、抑え込むには全く役に立ちませんでした。代わりに私たちに必要だったのは、先例のない世界的な規模での協力でした。
直面するさまざまな国家や地球規模の危機は、同じ根本的原因から生じ、個別の問題として解決しようとしても成功しません。私たちはこれまで以上に結集し、各国でそして国際的に政治的な力を構築する必要があります。
米国の連合体「貧者のキャンペーン」は核兵器廃絶を含め、米国の軍事費を半減することを求めています。労働組合や宗教団体、人種差別反対、貧困撲滅、環境保護団体、平和組織など驚くほど幅広い多様な組織から支持を得ています。
行動起こしている
核軍縮運動(CND)議長 イギリス デーブ・ウェブさん
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気候変動と核戦争が今もなお、私たちの生存にとって差し迫った脅威になっているにもかかわらず、世界の政府はこの二つの危険を阻止するための行動をほとんどとっていません。
しかし、たとえ政府が行動を起こさなくとも、人々は行動を起こしています。特に若者は自分たちの地球に何が起きているのかを理解し、それに対応しています。気候変動・平和・人道の運動は、それぞれの課題が実は関連していることに気づき始めています。
1月の核軍縮運動(CND)の世論調査で、英国民の59%が、政府は核兵器禁止条約に署名すべきだと言っています。私たちはこの支持をさらに増やすために街頭や議会内で行動しています。
被爆者をつくるな
フィンランド湾南岸公共評議会議長 オレグ・ボドロフさん
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北大西洋条約機構(NATO)には、バルト海のロシア側の沿岸で核兵器を使用する計画があります。実行されれば、ロシアの報復により世界的な核戦争になりえます。
ロシアでは過去10年間で核兵器予算は2・1倍に増加しました。
私たちは、2025年にヘルシンキで開催される欧州安全保障協力会議に合わせて信頼醸成措置の構築、対立の中止、核兵器使用の可能性に関する国際会議を開催するようにロシアを含むバルト海諸国の首脳らとNATO加盟国に対し呼びかけています。
この会議では、核兵器禁止条約への署名を各国政府に働きかけます。地球上のどの国にも被爆者をつくるなと声を上げています。
優先課題に押し上げ
「平和」グループ ベルギー ルド・デ・ブラバンデルさん
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核の共有は、北大西洋条約機構(NATO)の戦略の中核をなしていますが、三つの核保有国(フランス、イギリス、米国)のうち、他の加盟国の領土内に核を保有しているのは米国だけです。ベルギー、ドイツ、イタリア、オランダ、トルコに配備しており、これは核不拡散条約(NPT)違反です。
ヨーロッパの人口の過半数は核兵器禁止に賛成しています。核兵器が地球にもたらす脅威と行動の必要性の認識を高め、国民の支持を政治的圧力に変え、核兵器廃絶を優先課題に押し上げましょう。
世界は岐路に立たされており、軍拡競争を引き続き進めるのか、世界共通の安全保障のための平和的アプローチを推進するのかが問われています。
核保有国の包囲を
日本原水協事務局長 安井正和さん
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核大国は禁止条約を敵視し、核抑止力の強化をはかっていますが、禁止条約はそれを打ち破る力を持っています。
核兵器のない世界を実現し、核兵器使用の手を縛るためにも、禁止条約を支持する圧倒的な世論を築き、核保有国を包囲していきましょう。
カギを握るのは核保有国と依存国でのたたかいです。締約国会議を核兵器全面禁止・廃絶への転機とするため、世界中で行動を広げ会議に結集するよう呼びかけます。
日本では秋に総選挙がたたかわれます。禁止条約に参加する政府ができれば、日本の「核の傘」安全保障政策に転換をもたらし、日本とアジアの平和と安全にも大きく貢献することになります。
第2セッション アジア地域の非核化を
外交で紛争解決を
平和軍縮共通安全保障キャンペーン アメリカ ジョゼフ・ガーソンさん
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米国と中国の関係は1970年代初頭に国交正常化が始まって以来、最悪の状況にあります。根底には、台頭する大国と衰退する大国との避けられない緊張関係があります。
台湾はインド太平洋で最も危険な火種となっています。どちらの側も戦争を望んでいなくても、事故や誤算は起こります。中国は南シナ海の防衛範囲を拡大しました。米国の同盟戦略に沿い、英仏と日本などの軍艦が米第7艦隊に加わっています。
中国との新たな世界的な冷戦、中国との核戦争になりかねない熱い戦争は、人類が最も必要としないものです。米国と日本、北大西洋条約機構(NATO)、中国の軍隊は緊張を高めるのではなく、紛争の解決に向けた外交を追求すべきです。
条約に参加の政府を
日本原水協事務局次長 土田弥生さん
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核兵器禁止条約が発効し、圧倒的多数の国と人々が核兵器のない世界に進もうとする一方、核兵器国は条約に背を向け、核抑止力に固執し、核軍備競争を激化させています。
日本政府に軍事優先主義ではなく、「核の傘」からの離脱、被爆国として核廃絶の先頭に立ち、国連憲章と憲法に基づく外交を迫らなければなりません。
禁止条約は私たちに力を与えており、「核抑止力論」に対決するものです。条約参加の政府ができれば日本とアジアの平和と安全にも大きな貢献となります。条約批准を迫る署名は音楽家の坂本龍一さんなど著名な方々が呼びかけ人となり、その役割を果たすものです。総選挙で条約に参加する政府への転換を勝ち取りましょう。
朝鮮半島非核化を
韓国韓信大学統一平和政策研究院上級研究員 イ・ジュンギュさん
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核兵器は安全保障の最大の脅威であり、コロナのような伝染病、気候危機などへの国際協力を妨げ、資源を浪費し続けています。
東アジアで米中紛争が悪化すれば激しい軍備競争につながり、日本や韓国は犠牲を強いられます。アメリカとともに中国もふくめて平和を脅かすあらゆる行動に反対しなければなりません。
北朝鮮の核問題の解決と朝鮮半島の非核化が求められています。そのために核兵器禁止条約による国際規範の確立が最も重要です。
米中ロの北東アジア核戦略と米国の「核の傘」の問題を北朝鮮の非核化と合わせて扱う枠組みをつくり、北東アジア非核兵器地帯をつくる取り組みが求められています。
平和な世界めざし
ベトナム平和委員会事務局長 ドン・フイ・クオンさん
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東南アジアでは1995年に東南アジア非核兵器地帯条約が調印され、97年に発効しました。これは東南アジア諸国が地域の平和と安定を維持したいという願いと、核兵器の全面完全廃絶を前進させる具体的な行動をとるという決意の表明です。
アジア太平洋地域では、東シナ海と南シナ海など「ホットスポット(紛争発生地点)」での対立や紛争が、中国の行き過ぎた権益主張や一方的な軍備増強と合わせて、国民の命と生活を危険にさらしています。
核兵器など大量破壊兵器のない平和な世界をめざして、すべての国の政府とりわけ核保有国の政府に、核兵器禁止条約へ加盟するよう圧力をかけましょう。
運動が積極的役割
核軍縮平和連合 インド アチン・バナイクさん
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インドでは、国民の大多数が基本的な生存と快適な生活を求めることで頭がいっぱいで、核問題は意識からはるかに遠いところにあります。そうした現実を認識して私たちは、財政的・経済的な浪費に焦点を当てています。
南アジアの状況は、インドとパキスタンの間で継続的に繰り広げられている武力による戦争と冷戦のために、独特の危険をはらんでいます。
インドと中国の対立は基本的には国境紛争です。しかし主な障害となっているのは、日米印豪4カ国の「クアッド」をはじめ、中国を封じ込めようとする米国の政策です。
この点で、太平洋・インド洋の軍事化に反対する市民社会の共同の活動や反対運動が積極的な役割を果たします。