2021年7月26日(月)
“医療は人権”
国民皆保険求め全米で行動
感染拡大 貧困層打撃
【シカゴ=島田峰隆】バイデン米政権に国民皆保険制度「メディケア・フォー・オール」の実現を求めて、24日、全米50カ所以上で集会やデモ行進が行われました。参加者は、新型コロナウイルスの感染拡大が特に貧困層に打撃を与えているとして「医療は特権ではなく人権だ」と訴えました。
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労働組合や米国民主的社会主義者(DSA)など国民皆保険制度を求める団体が共同で呼び掛けた行動です。首都ワシントン、ニューヨーク、アトランタ、サンフランシスコなどの主要都市のほか、アラスカ州やハワイ州でも取り組まれました。
中西部シカゴでは「国民の命を商品にするな」「公的保険にこそ予算を使って」「企業の利益より人間に必要なことを優先して」などと書いたプラカードを持った市民数百人が集結。民主党進歩派が議会に提出している国民皆保険制度法案の可決を求めました。
集会では国民皆保険の実現を公約にシカゴ市長選へ名乗りを上げたこともあるジャマル・グリーン氏が発言。「アマゾン創業者のベゾス氏のように税金をほとんど払わない大金持ちが宇宙旅行を楽しんでいる間に、貧しい人々は無保険で病院にも行けず苦しんでいる」と批判。「医療は誰もが享受すべき権利だ」「たたかい続けて国民皆保険を実現しよう」と呼び掛けました。
シカゴ在住の参加者(69)は「最低賃金で働くファストフード店の労働者は低賃金な上に、けがや病気をしても無保険で病院に行けない人が多い。バイデン大統領には他の先進国では当たり前の国民皆保険制度を実現してほしい。保険会社の言いなりではいけない」と話していました。
米国の医療保険制度 米国には日本のような国民皆保険制度はありません。公的保険は高齢者や障害者、低所得者などに対象が限られ、国民の多くは民間保険か、雇用者が提供する保険に加入します。高い保険料に加え、失業や転職を機に保険を失う人が後を絶ちません。2014年に始動した医療保険改革法(オバマケア)も民間保険への加入を促す制度で、無保険者の解消にはつながっていません。