しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2021年7月23日(金)

主張

東京五輪の強行

人間の尊厳守る理念も失った

 東京オリンピック開幕前日に、開閉会式のショーディレクターを務める小林賢太郎氏が解任されました。過去につくったコントでユダヤ人虐殺をやゆしていたことが発覚したためです。人権侵害の言動による五輪関係者の辞任が何度も繰り返されています。新型コロナ感染症急拡大の中で強行される東京五輪がいかに命と人権を軽視し、オリンピック憲章の根本原則に外れているかを象徴しています。きょう開幕する五輪のゆがんだ姿が浮き彫りになりました。

辞任続きのゆがんだ姿

 ナチスドイツによる組織的なユダヤ人絶滅では数百万人が犠牲になっています。国際法で「人道に対する犯罪」と規定され、関与した者の追及は今も続いています。ユダヤ人団体が厳しく批判したのは当然です。五輪の要職として小林氏が不適格であることは言うまでもありません。

 2月には大会組織委員会会長だった森喜朗氏が女性蔑視発言のため辞任に追い込まれました。3月には開閉会式の統括責任者が女性タレントを侮辱して辞めています。19日には開会式の音楽の作曲家が障害者へのいじめを雑誌で自慢していたことで辞任しました。個人の問題ではありません。このような人選をした大会組織委員会と日本政府の立場が問われます。

 感染急拡大の中で開催を強行すること自体、命に直結する人権の侵害です。根本原則に「人間の尊厳保持」「平和な社会を推進すること」を掲げる五輪憲章に真っ向から反することは明らかです。

 人命を危険にさらしてまで、なぜ五輪を開くのか。国際オリンピック委員会(IOC)も菅義偉首相も意義を語ることができません。「復興五輪」「コロナに打ち勝った証し」など政権が掲げた意義は次々に失われ、菅首相が約束した「安全・安心な大会」も「第5波」によって破綻しています。

 菅首相は米紙のインタビューで、中止を勧める周囲の進言を拒んだことを明らかにし「挑戦するのが政府の役割だ」と開き直りました。国民の命と引き換えに五輪という賭けに打って出る菅氏に首相の資格はありません。

 IOCのバッハ会長は来日後「開催に疑念があった」としながら、中止は選択肢にないと述べました。菅首相同様、感染拡大で犠牲者が増えても開催を強行する許しがたい態度です。

 憲章が掲げる「友情、連帯そしてフェアプレーの精神」も前提が崩れています。コロナで陽性となった選手が続出しています。チームに濃厚接触者が多く出て、開催が直前まで決まらない試合もあります。世界のアスリートが集い、同じ条件のもとでフェアに競い合う五輪ではなくなっています。

国民も選手も置き去り

 国民もアスリートも置き去りにして開催に突き進む背景には五輪の大きなゆがみがあります。ばく大なテレビ放映権料を払う大手メディアやスポンサーの意向が大会を動かし、大企業の利権が最優先されています。

 政権の浮揚を狙って五輪を利用してきた安倍晋三前政権と菅政権の責任も重大です。

 何のための、誰のための五輪かという根本問題は今後も問われ続けます。五輪の犠牲になる人が一人もいてはなりません。あくまでも中止を求めます。


pageup