2021年6月25日(金)
きょうの潮流
二人はLINE(ライン)でつながっていました。互いに気づかい、相手の亡くなった夫のために線香をあげに行きたいという返事も。それが途絶えました▼近畿財務局に勤めていた赤木俊夫さんが残したファイルが見つかった。そんなメッセージを妻の雅子さんは安倍昭恵氏に送りました。それから既読もつかなくなったと。開示されたファイルには森友問題をめぐる財務省の公文書改ざんで昭恵氏や政治家の名前を消すことがまっ先に指示されていました▼「強く抗議」「納得できず」。そこには公務員の仕事に誇りをもちながら、権力の理不尽な要求に従わざるをえなかった俊夫さんの無念がにじみでています。一連の動きは当時の安倍首相が国会で「私や妻が関係していたとなれば首相も国会議員も辞める」と答弁したことで始まりました▼なぜ改ざんが行われたか。主導したのは誰か。経緯や指示系統は。死に追い込まれながら託した記録は、国民や国会を欺いた不正を徹底して解明することを求めています▼それなのに当事者の安倍氏や麻生財務相をはじめ、現政権も再調査を拒んでいます。そこに政治を私物化した問題の実像がみえます▼雅子さんは沖縄「慰霊の日」を前に、遺骨が眠る土砂の埋め立てに抗議のハンストを続ける具志堅隆松さんの応援に駆けつけました。「不条理のそばを黙って通り過ぎるわけにはいかない」と具志堅さん。こちらの二人は心が通じ、励ましあっています。くじけずに声をあげて、この国の不実とたたかうために。