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2021年6月8日(火)

社会は変わるし、変えられる――志位さんと語る学生オンラインゼミ(8)

日本が外交イニシアチブ発揮して

北東アジアの平和

ASEANのような話し合いのテーブルを本当に実現できるのか

 質問 志位さんは北東アジアでもASEANのような話し合いのテーブルをつくることが、憲法9条実現のための政策だと話していますが、中国や北朝鮮が話し合いのテーブルについてくれるとは思えません。本当に実現できるでしょうか。

 志位 北東アジアでもASEAN(東南アジア諸国連合)のような話し合いのテーブルをつくろうと、私たちが言っているのは、2014年の第26回党大会で提唱した「北東アジア平和協力構想」というものです。

東南アジアでは目をみはるような平和の地域共同体がつくられている

 志位 私たちが、党大会でそういう提唱を行ったのは、東南アジアの国ぐにを何度も訪問して、この地域で目をみはるような平和の地域共同体がつくられていることに、びっくりしたんですね。そういう体験を踏まえて、この流れを北東アジアにも広げようというのが、私たちの提唱なんです。

 実は、東南アジアでも、かつては、1960年代~70年代までは、ベトナム戦争など互いに戦争をやっていました。ところが今では、東南アジアで戦争が起こるということは考えられなくなっています。なぜそう変わったかと言いますと、1976年にTAC=東南アジア友好協力条約というのを結び、武力行使を禁止し、あらゆる紛争問題を平和的な話し合いで解決することを地域のルールにして、実行しているのです。

 私は、2013年9月に、インドネシアのジャカルタに行きまして、ASEANの本部を訪問しました。そこでいろいろな話を聞いたときに一番驚いた話は、こういう話でした。

 「ASEANでは年間1000回を超える会合をやっています。あらゆるレベルで対話と信頼醸成を図っています。だからこの地域にもいろいろな紛争問題はあるけれど、戦争になりません。何でも話し合いで解決しています」

 中山 年間1000回ってどうやったらできるんでしょうね。

 志位 1年は365日ですから、毎日3~4回の会合をやっているという計算になりますね。それだけ年がら年中、会合をやっていましたら、お互いの立場が分かりますし、信頼もできてくる。ですから紛争があっても戦争にならない。これが今のASEANなんですね。もちろん、この地域でもいろいろな難しい問題があって、たとえば中国が覇権主義的な行動をやる、アメリカも影響力を強めるためにいろいろな行動をやる。でもASEANは、どんな大国の言いなりにもならない自主的なまとまりとして、団結を保ちながら前進しています。年間1000回もの会合をやって、紛争を戦争にしない――紛争の平和的解決を実践しています。

 私たちが呼びかけている「北東アジア平和協力構想」は、現にASEANが実行している平和の地域協力の流れを、北東アジアにも広げようという提唱です。北東アジアと言った場合、日本、韓国、北朝鮮、中国、ロシア、アメリカ、モンゴルなどを想定しているんですけれど、そういう国ぐにで北東アジア版のTACを結んで、あらゆる紛争問題を平和的に解決していくことを域内のルールとして確立するというのが私たちの提案です。

「バリ原則」には、東アジア・太平洋のほとんどの国が賛成している

 志位 そこでこの質問です。本当に実現できるのか。

 中山 どうなんでしょう。

 志位 たしかに困難はあるのですが、私は十分に現実性があるということを言いたいんですね。私たちが注目しているのは、2011年の11月に、インドネシアのバリで開催された東アジアサミット(EAS)で、「バリ原則」が調印されているということです。この「バリ原則」を見ますと、武力行使の放棄、紛争の平和的解決など、TACが掲げている諸原則がそっくり入っているんです。政治宣言という形でそういう合意が交わされている。EASの会議には、ASEANの10カ国に加えて、日本、中国、韓国、米国、ロシア、インド、オーストラリア、ニュージーランドが参加し、みんな賛成しているんです。政治宣言にまではなっている、それを条約にすればいいだけなのです。ですから、私は十分な可能性があると考えています。

 私自身、「北東アジア平和協力構想」について、関係各国の大使館をずっと訪問し、懇談してきましたが、韓国、中国、ロシア、モンゴルなどの大使館では、そういう方向にだいたい賛成ですという話なんです。肝心の日本政府はどうかというと、私は、代表質問で聞いたことがあるんです。「北東アジア平和協力構想」についてどう考えるかと。安倍首相(当時)の答えは否定はしないというものでした。積極的に進めようとも言わないけど、日本政府も否定はできない話なのです。

新しい政権が外交のイニシアチブを発揮すれば道は開ける

 志位 ですから、私たちも参加する新しい政権が、北東アジアにも平和の地域協力の枠組みをつくろうという外交のイニシアチブを発揮していくことができれば、現実のものになる可能性はあると思います。何でも平和的な話し合いで解決する、領土に関する紛争問題も、北朝鮮の問題も、中国の問題も、何でも話し合いで解決する。そういう方向に進むことは、その意思さえあれば、可能だと思います。

 中山 すごい力強いです。ありがとうございます。(つづく)


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