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2021年6月7日(月)

社会は変わるし、変えられる――志位さんと語る学生オンラインゼミ(7)

大事なのは「二重のとりくみ」

軍事的・経済的なアメリカ依存

脱却するために何が必要か、その具体的な道筋は

 質問 軍事的・経済的にアメリカ依存から脱却するために何が必要か具体的な道筋を教えてください。

 志位 これは日本の改革の根本問題です。そのためには「二重のとりくみ」が大事だということを言いたいです。

日米安保条約に対する賛成、反対の違いを超えて、緊急の課題で協力していく

 志位 第一は、日米安保条約にたいする賛成、反対の違いを超えて、いろいろな緊急の課題で協力していくことです。

 野党間では、憲法違反の安保法制を廃止する、辺野古新基地建設は中止する、日米地位協定を抜本改正するなどの一致点が、すでにつくられています。こういう緊急の課題では、安保条約にたいする賛成、反対の垣根を越えて、一致点を大切にして協力していきたいと考えています。

写真

(写真)県民はあきらめないと、メッセージボードを掲げる県民大会の参加者=2018年8月11日、那覇市

 この点にかかわって、私がとても印象深く思い出すのは、亡くなった沖縄県の翁長前知事がおっしゃった言葉です。

 「これまで沖縄では、米軍基地を真ん中に置いて、保守と革新がたたかってきた。そのことで一番喜んだのは日米両政府です。これからは、保守は革新に敬意をもち、革新は保守に敬意をもち、お互いに協力してやっていきましょう」

 とてもいい言葉だとジーンときました。そういう精神で、一致点を大切にしてやっていきたいというのが一つなんです。

日米安保条約廃棄の国民的多数派を――在日米軍の正体を広く明らかにしていく

 志位 同時に、第二に言いたいのは、日米安保条約を廃棄して、本当の独立国といえる日本をつくる、アメリカとの関係は対等・平等の日米友好条約を結ぶ、そこにこそ私たちは、日本の未来があると確信していますが、そのための国民的多数派をつくる独自の努力を行うことがとても大切だということです。

 そのためには、一つの「神話」を打ち破る必要があります。どういうことかというと、「在日米軍は日本を守ってくれている」。この「神話」がずいぶんと浸透している。これを打ち破ることがとても大切だと思うんですね。

図

 (パネル8)これを見てください。在日米軍は、四つの「殴り込み」部隊――つまり海外への侵略と干渉を専門にする部隊で構成されているんです。

 第一は、「海兵遠征軍」です。沖縄県と山口県岩国基地を根城にしています。アメリカは三つの「海兵遠征軍」を持っており、「第1海兵遠征軍」と「第2海兵遠征軍」は本拠地がアメリカにあります。「第3海兵遠征軍」だけが、沖縄と岩国を本拠地にしている。アフガニスタン戦争、イラク戦争など、「殴り込み」を専門でやっている部隊です。海兵隊に基地を提供しているのは、世界に日本だけしかありません。

 第二は、「空母打撃群」です。神奈川県の横須賀基地を母港にしています。米海軍というのは11の空母を持っているんですけども、母港を海外に置いているのは横須賀基地だけです。「空母打撃群」も「殴り込み」専門の戦闘部隊です。

 第三は、「遠征打撃群」です。長崎県の佐世保基地を、強襲揚陸艦という空母並みの巨大な戦闘艦が母港にしています。強襲揚陸艦は、佐世保を根城にして、沖縄まで行って、沖縄で海兵隊を積んで中東に行く、これを繰り返してきました。強襲揚陸艦に母港を提供しているのも日本だけです。

 第四に、「航空宇宙遠征軍」というのがありまして、青森県の三沢基地、東京都の横田基地、沖縄県の嘉手納基地などに駐留する爆撃機とか、空中給油機とか、輸送機とか、戦闘機とか、そういう軍用機が一つのグループを構成して、地球のはてまで攻撃に行く。これも「殴り込み」専門の部隊です。

 これが在日米軍の正体です。この四つのすべてが、海外への「殴り込み」を専門にしています。「在日米軍が日本を守っている」というのは「神話」なんです。これはアメリカの歴代の国防長官自身が「日本を守る任務を与えている部隊はない」というくらい、はっきりしていることなのです。

 中山 自分で言っている。

 志位 自分で言っている。こうして日本は、海外への戦争の「殴り込み」の本拠地にされている。しかも今の危険は、米軍が「殴り込む」だけじゃなくて、安保法制を発動して自衛隊もつれていこうというところにあります。

 ここまで日米安保体制の危険が深刻になっているわけですから、緊急の課題として安保法制廃止で力をあわせながら、日本共産党の独自の努力として、日米安保条約をなくして本当に独立国といえる日本をつくることにこそ、日本の平和と安全を守る道があるということを大いに訴えていく、そういう「二重のとりくみ」を行うことが大事になっているのです。

安保廃棄の流れを強めることは、緊急の課題を前に進めるうえでも一番の力になる

 志位 「二重のとりくみ」ということで、もう一つ言いたいのは、日米安保条約廃棄の流れをうんと強めることは、さまざまな緊急の課題を前に進めるうえでも一番の力になるということです。

 どういうことかといいますと、さきほど冒頭に述べた緊急の課題のどれをとっても、本気でやろうとしますと、日米安保体制の現状を絶対だという勢力、今の現状には指一本触れさせないという勢力からの激しい妨害が起こります。

 たとえば辺野古新基地建設を中止する、これは野党共通の政策ですけれども、本気で実行しようと思ったら、激しい妨害が出てくるでしょう。「そんなことをしたら日米安保体制が弱まってしまう」という妨害が必ず出てくるでしょう。現に民主党政権のさいにも、そういう妨害がありました。

 そのときに、「日米安保条約は、日本の平和にとって有害無益であって、日米安保条約を廃棄した独立・平和の日本にこそ未来がある」ということを堂々と主張する流れが強くなってこそ――日本共産党や民青同盟はそうですけど――、そういう流れが強くなってこそ、辺野古新基地を止めるという緊急の課題一つとっても、それを前に進める力になる。こういう関係にあります。

 緊急の課題を本気で実行するうえでも、「二重のとりくみ」が大切になってくる。このことを私は言いたいと思うんですね。

経済的なアメリカ依存の状況をどう考えるか

 中山 ありがとうございます。軍事的に「米軍が守ってくれる」というのが「神話」だという話をおっしゃったんですけど、経済的にもアメリカ依存じゃないかっていう質問で、そこから脱却するには何が必要かということはどうでしょうか。

 志位 日米安保条約というのは、第2条に日米経済協力という条項があって、この条項も一つのテコにしながら、日本経済をアメリカの支配下に組み入れていくということが戦後一貫して続けられてきました。

 たとえばエネルギーも、石炭産業をつぶしてアメリカの支配下にある石油に置き換え、原発を押し付ける。食料も、日本人の食生活を変えて、お米を減らして小麦に変えるなどのことをやってきた。食料自給率は38%まで下がってしまいました。

 最近で言えば、TPP(環太平洋連携協定)交渉などを通じて、あらゆる関税、非関税障壁を撤廃して、アメリカの多国籍企業が日本でもうけたい放題の状況をつくるということを散々やったあげく、最後には交渉から離脱し、今度は日米の2国間交渉で無理難題を押し付けた。

 本当に身勝手な内政干渉を繰り返してきたわけですが、そのために日本経済全体がゆがめられてきた。矛盾がひどくなり、もろく弱い経済になってしまった。この面からも、アメリカ依存からの脱却が、各分野の強い要求になっていると思います。そうした各分野のたたかいを発展させ、合流させることが大切です。

 日本経済もアメリカ依存・従属から抜け出さないと、独立国としてのまともで健全な発展の道が開けてきません。

 中山 今の話を聞くとアメリカ依存の経済って全然発展性がないですね。

 志位 発展性がないです。それにくわえて今の状況を言うと、バイデン米政権は、まず対中国の軍事・経済戦略をつくり、それに全面的に日本を組み入れるというやり方をとっています。米軍の戦略に自衛隊を動員し、日本経済も米国の対中戦略に組み入れていくというやり方をしています。これは日本にとって、たいへん有害で危険な道だということも、言っておきたいと思います。

 (つづく)


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