2021年6月1日(火)
社会は変わるし、変えられる――志位さんと語る学生オンラインゼミ(1)
人間の自由・解放が社会主義の特徴
日本民主青年同盟主催で5月23日に行われた「社会は変わるし、変えられる―志位さんと語る学生オンラインゼミ」が新鮮な共感を広げています。日本共産党の志位和夫委員長がオンラインゼミで語った内容を紙上再現し、テーマごとに連載します。
学生オンラインゼミは、民青同盟の中山歩美副委員長の司会で、日本共産党の志位和夫委員長をメインスピーカーに迎えて、行われました。事前に学生から質問を募集し、それに答えるという双方向の企画となりました。前半では五つの学生班からの質問に、後半では全国から寄せられた質問と、さらに企画の途中にメールで寄せられた質問に答えるという形で進められました。
学生時代――48年前、民青同盟との出会いについて
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中山 では、今日はさっそくこれから志位さんに話を伺います。志位さんは東京大学の工学部出身ということですが、学生時代はどんなことを学ばれたのですか。
志位 工学部では、応用物理(物理工学科)が専攻で、超電導というのがありますでしょ。物質の温度をどんどん下げていくと電気抵抗がなくなっちゃうという現象があるのですが、その実験などをやっていました。ただ、あまり授業はきちんと出ていなかったので、物理というよりも“政治学”を学んでいたと。(笑い)
中山 そうなんですね。民青にも入られていたということですよね。なので、民青の大先輩ということで、民青との出会いも教えていただけますか。
志位 大学1年生のときに、当時、田中角栄さんという人が総理大臣をやっていたんですが、小選挙区制というのを出してきた。キャンパスで反対の大運動がおこりました。
当時の自治会執行部のみなさんはたいへんデモが好きで、毎週のように国会に行くんですよ。私が、授業が終わって駅の階段をのぼって、「今日は家に帰って勉強しようかな」と考えていると、後ろの方から声が聞こえてきて、「学友のみなさん、一緒に国会に行きましょう」と呼びかけている。わっしょい、わっしょい、と学内を回っているんです。そうしますといろいろ考えるわけです。「このまま家に帰っていろいろやりたいことがあるな、でも、ここでデモに参加しないで小選挙区制が通っちゃったらあとで後悔するだろうな」と悩むんですよ。当時、純真でしたから。今も純真ですけれども(笑い)。そういうこともあって悩んだ末にやっぱり行こうということになって。
学内のデモの声がする方に行きますと、キャンパスが薄暗くなっているなかでデモをやっている。みると10人ぐらいでやっている。「10人で国会に行くの」と聞いたら「君が入れば11人だよ」と言われて(笑い)、一緒に国会までデモに行ったりして。そういうなかで友だちができまして、民青に入って、党に入った。もう48年前ですけれども。
やっぱり民主主義を守るという民青の姿はかっこよかったですし、共産党もかっこよかったですね。そういう道を選んでよかったなと思っているんですけれども。
中山 はじめてこういうふうに、志位さんと民青との出会いを、詳しく聞くことができました。では、民青の大先輩の志位さんに、さっそく学生からの質問に答えてもらう形で学習会をすすめていきたいと思います。
事前に質問を寄せていただいた五つの班の方々から、質問をしていただこうと思います。志位さんからの回答をうけて、あらためて質問をして、それに答えてもらうという形ですすめていきます。
社会主義・共産主義
具体的なイメージを教えてほしい
長野県の学生班 共産・社会主義が実現した未来社会について聞いたとき、「青写真は描かない」と説明されました。具体的なイメージがないと絵空事のように感じてしまいます。何か具体的なイメージを教えてもらえませんか。
労働時間がうんと短くなる社会――すべての人間が自由に全面的に発展できる社会
志位 具体的なイメージ、まず直球できましたね。私なりに二つ話したいと思います。
第一は、労働時間がうんと短くなる社会ということです。そのことによって、すべての人間が自分の能力を自由に全面的に発展させることができるようになる社会、これが私たちのめざす社会なのです。
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(パネル1)これはマルクス、エンゲルスが『共産党宣言』のなかで社会主義について特徴づけた言葉です。「各人の自由な発展が万人の自由な発展の条件であるような一つの結合社会」。こういう特徴づけをしたのです。
「各人の自由な発展」とありますでしょ。これはどういうことかというと、人間というのは、みんな自分のなかに、さまざまな能力や才能をもっています。科学者の才能、芸術家の才能、職人の才能、アスリートの才能、いろいろな才能をみんなもっているのです。ところが、資本主義のもとでは、長時間労働によって、さまざまな才能や能力をもっていても、それを生かせる人は一部で、埋もれたままになってしまう方も少なくありません。社会主義・共産主義になれば、すべての人間が、自らの能力を自由に全面的に発展させることができるようになる。
それでは、その保障をどこに求めるか。マルクスは、若いころからこの問題を探求していくのですけれども、到達した結論というのは、労働時間を抜本的に短くする。ここにこそ、その保障があるという結論に到達するんですね。
たとえば、1日3~4時間労働、週3~4日労働、こうなりましたら、どうなるか。自由に使える時間がうんと増えますでしょ。こういう自由時間が増えたらどうなるか。自由時間ですから何に使ってもいい、遊んでもいいんですけれども、そういう自由な時間がみんながもてるようになったら、人間はそれを自分の能力を発展させるために使うようになると思うんです。
そのことが社会全体を素晴らしく豊かなものにして、「万人の自由な発展」につながっていく。一人ひとりが自由に発展することが社会全体の素晴らしい発展につながり、両者の好循環がおこってくる。このことをマルクス、エンゲルスは述べているんですね。
人間による人間の搾取がなくなり、資本主義につきものの浪費がなくなる
志位 それでは、なぜ社会主義・共産主義になると労働時間が短くなるのか。二つ言いたいと思います。
一つは、生産手段の社会化によって、人間による人間の搾取がなくなるということです。日本の全産業で試算しますと、労働時間の半分以上は搾取されて資本に吸い上げられている。つまり、半分以上は“ただ働き”をさせられている。ですから搾取がなくなったら、大幅に労働時間が短くなります。
もう一つは、資本主義につきものの浪費がなくなるということです。資本主義というのは、一見、効率的に見えるんだけれど、途方もない浪費社会なんですよ。たとえば、恐慌・不況が起こるでしょ。2008年のリーマン・ショックのときを見てください。あのときに何が起こったかというと、「派遣切り」で大勢の失業者が出る。一方で工場は休んでいる。これは、浪費の最たるものでしょ。それから、資本主義というのは利潤第一で、ともかくもうけが最優先ですから、「大量生産・大量消費・大量廃棄」、これが特徴になっています。ほんとうにひどい浪費社会なんですね。こういう浪費を一掃すれば、いまの生産力の水準でも、社会全体がうんと豊かになるし、労働時間をうんと短くすることができます。
資本主義のもとでかちとった価値あるものを、すべて引き継ぎ、豊かに花開かせる
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志位 具体的なイメージということでもう1点のべますと、資本主義のもとでかちとった価値あるものを、すべて引き継ぎ、豊かに発展させ、花開かせる、そういう社会だということです。
たとえば、資本主義のもとで自由と民主主義の制度がつくられます。日本も、日本国憲法のもとで自由と民主主義のさまざまな制度がつくられてきました。こういう制度はみんな引き継いで、豊かに発展させ、花開かせていく。つぶれてしまった旧ソ連とか、今の中国のような自由も民主主義も人権もないような社会は、私たちのめざす社会ではありません。
それから人間の豊かな個性も引き継いでいきます。資本主義社会は、人類の歴史のなかで初めて、人格的に独立し、豊かな個性をもった自由な人間が、社会全体の規模で生まれてくる社会です。まだ搾取制度がありますから制約はあるけれど、人格的な隷属は過去のものとなり、豊かな個性をもった人間を生みだすという特別の歴史的意義をもつ社会なんですね。個人の自由や権利についての自覚が大きく発展することも可能になります。民主主義の感覚、人権の感覚、ジェンダー平等の感覚なども、成長していきます。こうした人間の豊かな個性をみんな大事にして、未来に引き継いでいく。
資本主義のもとでつくられたあらゆる価値あるものを引き継ぎ、花開かせる社会。これでイメージがだいぶ出てきませんか。
中山 そうですね。自由がなくなるという疑問も青年から出されると思うんですけど、それとは全然違うということですよね。
志位 そうですね。人間の自由、人間の解放こそ、社会主義・共産主義の特徴なんです。
社会主義になると、お金への執着などはなくなっていくのか
中山 なるほど。ありがとうございました。では、長野の学生の方、いまのお話をうけてさらに質問などありませんか。
学生 社会主義への移行期のなかで、お金とか権力への執着というのは捨てられるのでしょうか。執着というのは、生まれつきの闘争心が元になっていると思うんですけど、そういったものを環境によってなくすということができる根拠は、なんでしょうか。
志位 お金への執着ということを言われましたが、これは資本主義社会のなかで生まれてきているものなんですね。資本主義というのは、生産の目的・動機が何かというと、ひたすらお金を増やすこと、つまり利潤を増やすことにあります。私たちが「利潤第一主義」と呼んでいるものです。利潤を増やすことが、生産の目的・動機であり、それに突き動かされて「生産のための生産」に突き進んでいくのが、資本主義社会なのです。資本主義社会では、生産手段――工場や機械や土地などを、資本が独り占めにしている。根本的に言いますと、そこから自分の富をひたすら増やす、という「利潤第一主義」の衝動が生まれてくるわけです。
私たちのめざす社会主義というのは、生産手段を個々の資本のもとにおくのではなくて、社会全体のものにする。生産手段を社会全体のものにする変革によってつくられる社会です(生産手段の社会化)。そうなってきますと、今度は生産の目的・動機が変わってきます。これまでは、自分の富を増やすのが目的だったんだけど、生産手段が社会全体のものになっていけば、社会全体をよくすることが生産の目的・動機になってきますよね。
ですから、そういうふうに社会が大きく変わることで、お金への執着というのも、だいぶ変わってくると思うんです。もちろん、それが変わるには何世代ものプロセスが必要だと思うけれども、だんだんと今の社会のようなお金もうけへの執着というものに代わって、生産の目的が社会全体をよくするということになってきて、人間の価値観も変わっていくのではないか。これが私たちの見通しなんです。
中山 なるほど。学生の方、どうですか。
学生 社会主義に変わることによって、労働者の価値観もふくめて変わっていくんだなというのが、すごい画期的な考え方だなと思いました。(つづく)