2021年5月28日(金)
きょうの潮流
触れたり口に出したりしてはいけない物事を「タブー」といいます。語源はポリネシア語のtabu(タブ)。英探検家ジェームズ・クックがトンガを訪れ、ポリネシアの禁忌を記録したのは18世紀後半のことでした。歴史社会学者の田中ひかるさんは、「そもそもポリネシア語で月経を意味する」(『月経と犯罪』平凡社)と紹介します▼日本では最近まで女性の犯罪は“月経中”に多いとの「説」が専門家の中で当然視されていたと田中さん。そのナンセンスの根拠をたどり、経血を“けがれ”と見なす文化にも目を向けます▼“月経中は漬物に触れてはいけない”(インド)―こんな言い伝えは、洋の東西を問いません。口にするのもはばかられてきたのが生理です▼この沈黙を打ち破ろうと、世界各地で今、「生理ムーブメント」が広がっています。「生理の貧困」をなくそう、月経衛生教育を子どもたちに―との取り組みです▼日本でも学生団体の調査で、生理用品が買えず学校を休むなど日常生活に支障をきたす実態が明らかに。一部自治体では生理用品の無料配布が始まりました。衛生的で尊厳ある経血処置が特権であってはなりません▼きょうは「世界月経衛生デー」。平均的な生理周期(28日)と期間(5日)にちなみ、国際NGOの呼びかけで2014年から続く取り組みです。毎日8億人以上が生理の日を過ごしているのに、タブーとされ、困難は多い。その障壁を取り除くことはジェンダー平等への大事な一歩。政治が動くときです。