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2021年5月22日(土)

改定少年法に対する山添議員の反対討論(要旨)

参院本会議

 日本共産党の山添拓議員が21日の参院本会議で行った改定少年法に対する反対討論(要旨)は次の通りです。


 法案は、18、19歳の少年について「特定少年」と規定して刑罰化を図り、実質的に少年法の適用を除外する範囲を広げ、「少年の健全な育成」との基本理念に反する事態をもたらすものです。

 そもそも立法事実が欠ける法案です。少年事件はピーク時の10分の1に激減し、凶悪化しているわけでもなく、法制審でも国会審議においても、現行法は「有効に機能している」との評価が繰り返し語られました。

 唯一の立法事実は、公選法や民法の年齢引き下げと合わせるものです。少年院収容者の約65%が中卒・高校中退者、被虐待経験のある者は男子35%、女子55%です。この実態を置き去りに、来年4月の成年年齢引き下げをにらみ期限ありきで進めたことに抗議します。

 法案は、少年法制に数々のゆがみをもたらします。

 少年事件は、家裁調査官が社会調査を行い、個々の少年の心情や境遇など「要保護性」を見極め、少年院送致や保護観察といった処遇を決める基礎とします。法案は、事件を家裁から検察官に送り返し、成人と同じ刑事処分に付す、原則逆送対象事件を大幅に拡大しています。法定刑の重さを基準に一律に逆送することは、一人ひとりに寄り添う少年法の基本原則に反します。健全育成にそぐわない調査が広がりかねません。

 法案は、少年院送致などの期間上限を「犯情の軽重」を考慮し定めます。しかし、「犯情」は成人の量刑に用いられる概念で、教育的措置を行う少年法の保護処分とは相いれません。少年法のルールのもとで決めるべきです。

 法案は、18、19歳を虞犯(ぐはん)の対象から外します。「犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際」などの事由があり、将来罪を犯す恐れがある場合です。元小田原少年院長の八田次郎氏は「虞犯は、少年らの生きづらい社会のセーフティーネットとして機能しており、最後のとりで」と言っています。18、19歳を対象から外すのは、育ち直りを必要とする少年に冷たい法案と言わねばなりません。

 このほか、起訴時点で推知報道が解禁されるなど、刑罰化に伴い、更生と再犯防止、立ち直りのための少年法の意義を後退させ、被害者の権利保護を強めるものでもありません。

 法案は、少年の健全育成に機能を果たしてきた少年法制を大きくゆがめるものです。現行少年法を変える必要はありません。家裁調査官を増員し、社会調査を充実させ、少年の要保護性に応じた処遇を適切に行う体制整備が求められています。


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