2021年5月20日(木)
主張
GDPの落ち込み
暮らし支える強力な支援急げ
新型コロナ感染の急拡大による日本経済の激しい落ち込みが浮き彫りになっています。内閣府が発表した2021年1~3月期の国内総生産(GDP、速報値)は、物価変動を差し引いた実質で、20年10~12月期に比べて1・3%落ち込みました。年率換算で5・1%の下落です。マイナス成長は20年7~9月期以来、3四半期ぶりです。20年度は、19年度比で4・6%減となり戦後最悪の落ち込みです。コロナ禍で苦境にあえぐ国民の暮らしを支え、日本経済を立て直すための抜本的な対策がいよいよ急務です。
コロナ封じ込めの戦略を
1~3月期GDPがマイナスになった最大要因はGDPの半分以上を占める個人消費の冷え込みです。個人消費は前期に比べ1・4%減少しました。1月初めに東京など4都県を皮切りに発令された2度目の緊急事態宣言は3月下旬まで続きました。この間、外出・外食の自粛要請などにより消費支出に大きなブレーキがかかったことで飲食・宿泊業を中心に大きな打撃を受けています。
民間企業の設備投資も1・4%のマイナスで、鈍い状態となりました。輸出は2・3%の増加ですが、前期(11・7%増)よりも大幅に鈍化しました。
深刻なのは、4月末に3度目の緊急事態宣言が発令され、対象地域の拡大や期間延長が繰り返されていることです。4~6月期が2期連続でマイナス成長に陥る危険は極めて高く、底が見えない「コロナ不況」に突入しかねない状況です。書き入れ時の大型連休に休業や事業縮小をせざるを得なかったサービス業などは厳しい事態に立ち至っています。コロナによる解雇や雇い止めも相次いでいます。
コロナ対応で無為無策を重ね、感染悪化の「人災」を引き起こした菅義偉政権の責任は重大です。コロナを封じ込めるという戦略目標を明確にし、ワクチンの安全・迅速な接種、大規模な検査、十分な補償と生活支援を本気で実行することが不可欠となっています。21年度予算の予備費の活用だけでなく、補正予算案を編成し必要な対策を講じることが急がれます。
20年度GDPの落ち込み幅がリーマン・ショック当時の08年度の3・6%減を超えて戦後最悪となったことは、深刻です。これまでの延長線上の経済対策では日本経済が危機から脱却できないことを示しています。
日本経済はコロナ禍の以前から厳しい消費不況に直面していました。とくに14年4月と19年10月の2度にわたる消費税率の引き上げは、安倍晋三前政権による大失政に他なりません。コロナへの緊急の対応を強めるとともに、経済政策を大本から改めることが一層必要になっています。
消費税の減税を決断せよ
消費税率を5%に戻すことを一刻も早く決断すべきです。コロナ禍で、世界では消費税(付加価値税)の減税に踏み切っている国々が生まれています。日本でも実施が切実に求められます。
消費税減税は所得の低い人の暮らしを支えるためにも有効な政策です。コロナで生活苦を強いられている国民に恩恵が行き渡ります。コロナ禍で莫大(ばくだい)な利益をあげる大企業・大資産家に応分の負担を求めることは、不公平税制をただす上でも重要です。