2021年5月19日(水)
障害福祉奪う差別的判決
千葉地裁 支給請求を棄却
脳性まひで障害福祉サービスを利用する天海正克(あまがい・まさかつ)さん(71)が65歳で介護保険の要介護認定の申請をしなかったことを理由に、千葉市が天海さんのサービス継続申請を認めず打ち切ったことをめぐり、憲法と障害者権利条約に違反するとして天海さんが同市などを提訴した裁判の判決が18日、千葉地裁でありました。内野俊夫裁判長は、天海さんが千葉市に障害福祉サービスを支給決定するよう求めた訴えを棄却する不当判決を出しました。天海さんは控訴する方針です。
原告控訴へ
判決は、天海さんのように65歳以上の「要介護状態であることが見込まれる」障害者が「正当な理由なく」介護保険の要介護認定を申請しないことは、介護給付の支給要否決定に「協力しないことにほかならない」として、障害福祉サービスの継続申請を「不適法なものとして却下することができる」との判断を示しました。
また、介護保険サービスは利用料が発生し、低所得者の生存権を脅かすものだとして天海さんが違憲だと主張したことに対して判決は、介護保険制度では低所得者への負担軽減策などが取られているとして、著しく合理性を欠き、明らかに立法権の裁量権を逸脱しているとはいえないとしました。
判決を受けて天海さんは「市が障害福祉サービスを全て奪うことは、生活全部を奪うことに他ならず、許すことはできない。重い責任を感じていないことに腹が立つ」と語りました。
日本障害者センターの山崎光弘事務局次長は判決について、日本は一般的な要介護状態の人には、要介護認定を申請するか否かを選択する自由を認めるにもかかわらず、障害者には認めないというものだと指摘。「障害者への差別的取り扱いに他ならず、障害者権利条約に照らしても認められない」と批判しました。
65歳の壁 不当
支援者ら「たたかい続ける」
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「天海訴訟を支援する会」は18日、判決に先立ち千葉県庁前で宣伝しました。
同会の八田英之代表は「おかしいことはおかしいと言える世の中にするために、命を大切にする国のあり方を問う裁判だ」と強調しました。
日本障害者センターの山崎光弘事務局次長は「介護保険を申請しないからとサービスを打ち切るなど異常だ。千葉市は市民を守るとの意識に立つべきだ」と批判しました。障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会の市橋博副会長は「全国の仲間たちの励みとなるべくがんばり続ける」と力を込めました。
日本共産党の浅野ふみ子衆院千葉5区予定候補は「65歳とともに障害が変わるわけではない。障害は自己責任ではなく、どんな人も生きるために保障されるべきだ。誰もが安心して暮らせる社会をつくるために、ともにがんばろう」と呼びかけました。
不当判決を受け、同会のメンバーらは「強く抗議する。控訴審で勝利する」「怒りがわいてくる」「5年間訴え続けた障害者の実態への無理解は許せない」など、障害者の権利を守るたたかいを続ける決意を語りました。