2021年5月18日(火)
建設石綿 国・企業に責任
4訴訟 最高裁、初の判断
「一人親方」救済も決着
建設資材に含まれたアスベスト(石綿)を吸い込み、肺がんや中皮腫などの深刻な健康被害を受けたとして各地の元建設作業員や遺族が国と建材メーカーを訴えた「建設アスベスト訴訟」の上告審判決が17日、最高裁であり、第1小法廷(深山卓也裁判長)は国とメーカーの責任を認めました。弁護士らは「基本的に勝利した」「13年にわたるたたかいで大きな前進を勝ち取った」と評価しました。
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アスベスト建材をめぐっては2008年以降、全国で1200人以上の原告が33件の訴訟を提起しました。このうち東京、神奈川、京都、大阪の4訴訟についてこの日、アスベスト訴訟に関する最高裁として初の判断を示しました。
判決は、国が「昭和50(1975)年にはアスベストを含む建材について肺がんや中皮腫などの重篤な疾患を発症する危険があることを示すよう(事業者に)指導監督すべきだった」「防じんマスクなどの保護具を使用させることを事業者に義務付けるべきだった」などと判断。違法な状態は「75年から04年まで継続した」(神奈川訴訟)としました。
建材メーカーについては、発症の危険があることを建材に表示する義務があったのに怠ったと指摘。「複数の企業が個別にどの程度の影響を与えたかは不明」としつつ、シェアの高いメーカーの製品は現場に届いた可能性が高いなどとして各社の共同不法行為を認め、「各社は連帯して損害賠償責任を負う」と述べました。
これまで各地の地裁・高裁判決では、国と建材メーカーの責任をより幅広く認める判決が相次ぎました。国は同種訴訟として異例の10以上の敗訴を重ねてきました。
当初、「労働者ではない」とされた個人事業主の「一人親方」の救済も一部訴訟ですでに確定。最高裁は判決でその理由について「危険にさらされるのは労働者に限られない」と述べ、一人親方を救済しないことは「合理性を欠き、違法」だと結論付けました。
一方でこの日の判決は、屋根工などとして屋外作業に従事した原告について救済を否定。弁護士は「今後の訴訟もある。すべての被害者の救済に向けて引き続きたたかう」などと語りました。