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2021年5月16日(日)

主張

入管法改定案

非人道性加速する改悪やめよ

 菅義偉政権が入管法(出入国管理及び難民認定法)の改定案を衆院法務委員会で採決する動きを強めています。国際社会から非人道的と批判が相次いでいる日本の入管行政の欠陥を改めるのでなく、在留資格を失った外国人の人権侵害を一層深刻化させる重大な内容の改定案です。審議の中では現在の入管当局の人権無視の体質や、法案の抱える問題が次々と明らかになり、国民の批判も急速に広がっています。改定案の強行は絶対に認められません。

死亡事件の真相解明急げ

 審議で大問題になっているのは、今年3月、名古屋出入国在留管理局に収容されていたスリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさん=当時(33)=が死亡した事件です。入管が必要な医療を受けさせず死を招いた疑いが極めて濃厚だというのに、菅政権は真相解明に背を向け続けています。

 留学生として来日したウィシュマさんは同居人からDVを受け、警察に保護を求めたところ留学生ビザが失効していたため逮捕され、昨年8月に収容されました。体調が悪化し、食事も歩行もできないほど衰弱しました。支援団体が一時的に収容施設を出る「仮放免」を求めましたが、入管に認められないまま、亡くなりました。

 法務省・出入国在留管理庁は4月に事件についての中間報告を公表しました。しかし、死亡2日前に診断した医師が、仮放免すれば状態改善が期待できると指摘した事実が記されておらず、入管の隠蔽(いんぺい)姿勢に批判が集まりました。

 さらに2月にウィシュマさんが診察を受けた外部の医療機関の診療記録に「(薬を)内服できないのであれば点滴、入院」と指示が書かれていたことが「毎日」13日付の報道で明らかになりました。中間報告に「医師から点滴や入院の指示がなされたこともなかった」と記載されていることと全く異なります。なぜ正反対の記述なのか、政府からまともな説明はありません。真相を知りたいと訴える遺族にも死亡の詳しい経過が伝えられていません。事件の徹底解明なしに改定案の審議はありえません。菅政権は、遺族や野党が求めている収容中のビデオ映像の開示などに応じるべきです。

 ウィシュマさんは、外国人の人権や尊厳を保障しない現在の入管制度の犠牲者です。在留資格のない外国人を全て収容する「全件収容主義」は、国連の人権理事会などから人権侵害だとして改めるように求められてきました。しかし、改定案は、国際的な要請にこたえず、むしろ逆行しています。

 長期収容の解消にはつながらず、厳罰化もすすめます。難民申請が2回却下されると強制送還が可能になる改悪も盛り込まれました。入管の裁量と権限の拡大は人権侵害を一層強めます。改定案は廃案しかありません。

「廃案」の声を大きく

 菅政権は大型連休明け直後から改定案審議の打ち切りと採決強行を何度も狙ってきました。それを許さなかったのは、野党の国会での共闘の力と、SNSなどで広がる反対の声です。作家、弁護士、国際法の研究者らが廃案を求める声明を発表し、議員会館前では外国からの移住者支援団体の座り込みが連日取り組まれています。世論と運動をさらに広げ、改定案の成立を断念に追い込みましょう。


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