2021年5月12日(水)
医療費窓口負担「2倍化法案」衆院可決
政府説明ボロボロ 徹底審議で廃案を
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11日に衆院本会議で採決・可決された「高齢者医療費2倍化法案」(自民、公明、維新、国民民主の各党が賛成。日本共産党と立憲民主党は反対)。今後、議論の舞台は参院に移りますが、政府の法案説明はすでにボロボロです。75歳以上への医療費窓口2割負担の導入によって深刻な受診控え・健康悪化を引き起こす同法案は、徹底審議で廃案にするしかありません。
受診控え見込み
政府は衆院審議で、政令で2割負担の対象とする単身世帯「年収200万円以上」(課税所得28万円以上)、夫婦世帯「年収320万円」(所得が多い方が同28万円以上)について「負担能力がある」と繰り返してきました。しかし、負担できるなら起きない受診控えを見込んで、給付費を年1050億円(2025年度)も削減できると推計していたことが、野党側の追及で分かりました。
菅義偉首相は、受診控えの影響額も踏まえず「直ちに健康に影響しない」と無責任な答弁に終始。野党側が根拠を明らかにするよう再三求めると、厚生労働省が持参した各種研究論文では過去の窓口負担増で受診控え・健康悪化が起きた実態が示されていたのです。
特に同省が補助金を出した研究は、糖尿病は治療中断が失明など重度の合併症につながるため、負担軽減こそが必要だと提起していました。「健康に影響しない」などという答弁はまったくのデタラメです。
審議では、過去の負担増が平均寿命の押し下げにつながったという学識者の指摘や、受診控えの影響額は戦前の推計式で収入の違いを反映しておらず、より大きな抑制効果が出ることも明らかになっています。
政府は、窓口負担の月額上限制度(高額療養費)があるから“大丈夫”と言いますが、日々の受診時の負担は文字通り2倍化します。
現役も負担増に
「現役世代の負担軽減」という言い分はどうか―。本人負担の軽減はわずか月平均30円(22年度)。現在22歳の人を考えた場合、単純計算で74歳まで支払う保険料の軽減は平均で計1万8千円にすぎず、80歳まで生きれば窓口負担増は平均16万円です。現役も高齢者も負担増になるのが実態で、一番削減されるのは公費です。
田村憲久厚労相が「誰かが負担しなければならない」と居直る一方、参考人として意見陳述(4月20日)した日本福祉大学の二木立・名誉教授は「医療に受益者負担を適用すべきではない」として、税・保険料で「応能負担」を求めるべきだと強調しました。負担増は大企業・富裕層にこそ求めるべきです。(松田大地)