2021年4月28日(水)
主張
入管法改定案
人権侵害の拡大は許されない
菅義偉政権が「出入国管理及び難民認定法」改定案を今国会で成立させようとしています。同案は、非人道的と批判される入管行政を改めるのでなく、送還拒否への刑事罰の新設、難民申請者を強制送還する仕組みの創設など、在留資格がない外国人に早期帰国を迫るものです。国際社会の要請にこたえず、逆に人権侵害を拡大する改定案は撤回しかありません。
国内外の批判にこたえず
日本政府は、技能実習、留学生アルバイト、特定技能などの資格を設け、外国人労働者を「安価な労働力」として受け入れる政策を拡大してきました。それは人材ビジネスと搾取の構造が結びつき、人権侵害の温床となってきました。奴隷的労働や暴力、暴言に耐えかねてやむを得ず逃げ出した外国人は、「失踪者」として扱われ、在留資格を取り消されます。
日本の入管行政は、在留資格のない外国人は全て収容し送還するという「全件収容主義」をとっています。裁判所の審査を経ず、無期限で長期収容する非人道的な扱いです。国際法に反するとして、国連人権理事会などから繰り返し指摘されてきました。
ところが、改定案が収容に代わる仕組みとして新設する監理措置制度は、長期収容を解消するものではありません。必要性は入管庁が判断し、裁判所の審査はありません。長期収容は温存されます。
監理措置は、親族や支援者のもとで暮らすものですが、就労は認められません。入管庁が選定する「監理人」に、「許可条件」の順守状況を報告させます。本来外国人の生活を支援する人々や弁護士に監視役をさせ、告発を義務付けることは、外国人保護と根本的に矛盾します。
送還拒否、仮放免中の逃亡、監理措置違反などに刑事罰を科すことは、罰による威嚇で送還を促進する、不条理極まりないものです。
日本の難民行政は、審査に長期間を要する上、「難民」定義を「民主化運動のリーダー格」などと狭く捉えすぎることが問題になっています。2019年の認定率は0・4%です。難民に準じて外国人を保護する「補完的保護対象者」を新設するとしますが、そのガイドライン策定は入管の裁量任せです。根本解決につながりません。
さらに改定案は、難民認定手続き中は一律に送還が停止される現在の制度に例外を設け、「難民認定を2度却下された者」などは、難民申請中であっても送還を可能とします。迫害を受けるおそれのある国への追放・送還を禁じる国際法上の原則にも反し、国際水準とかけ離れたものです。
死亡事件の真相究明を
改定案の問題が明らかになる中、名古屋入国管理局でのスリランカ人女性死亡事件(3月)が起こりました。借金して留学生として来日し、学費が払えず退学し在留資格を失いました。恋人のDVから逃れるため警察に保護を求めたところ、入管法違反で逮捕、入管施設に収容されました。食事が満足にとれず、点滴も受けられず死亡しました。病状悪化を放置し、死に至らしめた疑いが濃厚です。
人権保障の立場にたたず、外国人個人の問題に責任転嫁し強権的に排斥する日本の入管難民行政のゆがみをあらわにした事件です。この事件の真相解明なくして、改定案の審議など許されません。