2021年4月18日(日)
主張
日米首脳会談
軍拡に突き進む約束許せない
菅義偉首相がバイデン米大統領と初めて対面で会談しました。両首脳による共同声明は、「台湾海峡の平和と安定の重要性」を明記しました。声明の中で、日米同盟とインド太平洋地域の安全保障を一層強めるためとして、日本が「自らの防衛力を強化する」と約束したことは極めて重大です。中国の覇権主義的行動が到底容認できないのは当然です。しかし、中国と軍事力の増強を競い合うことは、軍事的な緊張を高め、問題解決に逆行することは明らかです。
新たな基地負担を強いる
日米の首脳間の文書に「台湾」が明記されるのは、1969年の佐藤栄作首相とニクソン大統領の共同声明以来52年ぶりとされます。今回の共同声明は、中国が軍事的圧力・威嚇を強める台湾の問題に触れるだけでなく、東シナ海での一方的な現状変更の試みや、南シナ海での不法な海洋権益の主張と活動に「反対」を表明しました。この際、重要なことは、中国の主張と行動が国際法にいかに違反しているかを具体的に指摘し、その順守を求めることです。
ところが、共同声明はそうした冷静な批判を欠いたまま、日本の軍事力増強とともに、日米両国の「抑止力及び対処力」や「拡大抑止」=「核の傘」の「強化」、「サイバー及び宇宙を含む全ての領域を横断する防衛協力」の「深化」をうたいました。
日本の軍拡という点では、元米国防総省幹部が、中国「抑止」のためには、日本は軍事予算を国内総生産(GDP)の1%程度にとどめず、2%に増やすことが「最低限必要」と述べています(コルビー元国防副次官補、「時事」15日配信)。
菅氏は首脳会談後の共同記者会見で、今回の共同声明を「日米同盟の羅針盤」と語りました。これをたてに日本が際限のない軍拡に突き進むことは許されません。
日米軍事協力を今後あらゆる面で「深化」させるとしたことも大問題です。
米軍は、中国に対抗し、沖縄をはじめ日本の南西諸島やフィリピンなどの「第1列島線」に地上発射型の中距離ミサイルの配備を検討しています。また、台湾や南シナ海での有事をにらんだ新たな作戦構想を打ち出しています。
米海兵隊は、多数の小規模部隊を「第1列島線」の島々に展開させて、ミサイルや航空機の基地を構築し、そこから中国軍を攻撃するという「遠征前進基地作戦」(EABO)を進めています。米空軍も一時的な基地で航空機への迅速な整備・補給を行う「機敏な戦闘運用」(ACE)という構想を持っています。
実際、これらの作戦を想定した訓練が、沖縄をはじめ日本各地の米軍基地で行われています。沖縄県民や日本国民に新たな基地負担が強いられることは避けられません。
自衛隊を米軍支援に動員
有事となれば、米軍の拠点となる日本の基地が攻撃対象にされ、自衛隊が米軍支援に動員されることになります。
中国への軍事的な対応を強化することは、“軍事対軍事”の危険な悪循環を生み出すだけです。何よりも大事なことは、中国の覇権主義・大国主義に反対する国際世論を高め、外交的に包囲することです。