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2021年4月11日(日)

主張

「普天間」合意25年

最もあり得ぬ辺野古は断念を

 1996年4月12日に当時の橋本龍太郎首相とモンデール駐日米大使が会談し、沖縄県の米海兵隊普天間基地(宜野湾市)の「全面返還」で合意してから、あすで25年になります。両政府が普天間基地に代わる同県名護市辺野古の新基地建設で現行の計画を決めてからも15年がたとうとしています。いまだ普天間基地の返還が実現しないのは辺野古への「移設」を条件にしているからであることは、この四半世紀が証明しています。

「痛み」はどこでも同じ

 橋本・モンデール会談での合意は、普天間基地を「5~7年以内」に返還するとしていました。しかし、当初から、普天間基地の能力と機能を沖縄県内に維持することが前提とされていました。

 これを踏まえ、日米両政府が96年12月に発表したSACO(沖縄に関する特別行動委員会)最終報告は、普天間基地に代わる新基地を海上に造ることを打ち出し、後に辺野古沖が候補地とされます。普天間基地を狭隘(きょうあい)な沖縄のどこに移そうとその「痛み」に変わりはないと、県内外で反対の世論と運動が沸き起こったのは当然です。そのため、計画は行き詰まり、建設案も二転三転しました。

 2006年5月、日米両政府は米軍再編の「ロードマップ(行程表)」に辺野古沿岸部にV字形の滑走路を持った新基地を建設するという現行計画を盛り込み、「14年までの完成」を目標としました。しかし、県民の粘り強い反対運動などによって新基地建設は進まず、沖縄本島の嘉手納基地以南の米軍基地統合計画(13年4月)では普天間基地の返還は「22年度またはその後」に先送りされました。

 しかも、その後、新基地建設のために埋め立てを予定している大浦湾の海底に軟弱地盤が広がっていることが判明します。日本政府は19年12月、軟弱地盤の改良工事のため、新基地の完成と米軍への提供手続き完了までに約12年かかり、総工費は約9300億円に上ることを明らかにしました。

 沖縄県が設置した有識者による「米軍基地問題に関する万国津梁(しんりょう)会議」は今年3月にまとめた提言で、辺野古の新基地計画は、政府が言うように普天間基地の危険性除去のための「唯一の解決策」ではなく、「最もありえない選択肢」だと強調しました。

 その理由として▽軟弱地盤の改良工事に伴う工期長期化と工費増大の問題が未解決▽政府が18年12月から強行している埋め立て土砂の投入は1月末時点で必要量の4・3%にすぎず、大浦湾は未着手のままで完成の見通しがない▽コロナ禍の下で新基地建設のばく大な費用を別の用途に回す方がはるかに有益―と指摘しています。

危険性放置は許されない

 沖縄戦の犠牲者の遺骨が今も残る本島南部を埋め立て土砂の調達先にしている政府の方針に「米軍基地建設のために使うのは戦没者への冒涜(ぼうとく)だ」と強い批判も起こっています。

 普天間基地では、他基地からの米軍機の飛来増などにより騒音被害や事故の危険が増大しており、いよいよ放置は許されません。

 新基地ノーの沖縄の民意も、この間の県民投票や知事選、国政選挙などで繰り返し示されています。新基地建設の中止と普天間基地の無条件返還こそ問題解決の唯一の道であることは明らかです。


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