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2021年3月19日(金)

主張

同性婚訴訟の判決

差別解消へ国は責任を果たせ

 同性間の結婚が認められないのは婚姻の自由などを保障した憲法に違反するとして、北海道の同性カップル3組が国を訴えた裁判で、札幌地裁は同性婚を認めない民法などの規定を違憲とする初めての司法判断を示しました。判決は、性的指向を理由に差別的な扱いを受けることは憲法14条の「法の下の平等」に反すると明確に認定しました。性的少数者の人権と尊厳を保障する立場から、不利益の解消を国に迫った画期的な判決です。政府と国会は判決を真摯(しんし)に受け止め、法律の整備に直ちに踏み出すべきです。

初の「違憲」判断に喜び

 同性婚を否認する現行制度の違憲性を問う「結婚の自由をすべての人に」訴訟は2019年、同性カップルが札幌、東京、名古屋、大阪、福岡の5地裁に提訴していたものです。

 初の判決となった札幌地裁が同性婚否認を「違憲」と判断したことは、原告をはじめ全国の同性カップルや支援の人たちに大きな励ましと勇気と喜びを広げています。司法を動かしたのは粘り強い運動です。

 現在の民法や戸籍法は男女の結婚を前提にしており、同性婚を認めていません。そのため、同性カップルは相続権や税金の配偶者控除など法的・経済的な権利が認められていません。

 病院で家族としての面会や付き添い、手術の際の同意判断も許されないことなども問題になっています。異性カップルであれば抱えなくてもいい物理的・心理的な負担が同性カップルには重くのしかかっています。

 今回の判決は、性的指向の違いでもたらされるこれらの数多くの差別を憲法14条の平等原則に照らして不合理としました。

 判決は、性的指向は「性別、人種などと同様」に自分の意思によって選択や変更ができない個人の性質であると指摘しました。同性カップルと異性カップルの違いは、変えることのできない性的指向によるものです。ところが異性カップルは結婚によって法的な地位や権利を受けることができているのに、同性カップルはその一部さえも受けることができません。このことを「合理的根拠を欠く差別的な取り扱いに当たる」(判決)と解決を求めたことは、重要な前進です。

 国側は裁判で、同性愛者でも異性との結婚は可能であり現行制度は差別でないと主張しました。個人の性的指向を否定し、望まない結婚を事実上強いる暴論です。判決は、この国の言い分をきっぱりと退けました。ここにも性的少数者に寄り添った判決の姿勢があらわれています。差別を押し付ける現行制度に固執する国の態度に道理はありません。

法整備に踏み出す時だ

 同性婚を認める国・地域は約30にのぼります。日本でも同性カップルを認証するパートナーシップ制度を導入する地方自治体が約80に広がっています。同性婚を認めることは大きな流れです。

 日本共産党など野党は19年の国会に「婚姻の平等」法案を提出するなど同性婚法制化に力を注いでいます。自民党は、「(同性婚を進めることは)社会の混乱につながる」(下村博文政調会長の17日の記者会見)などという否定的な立場を改め、法整備に責任を果たさなければなりません。


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