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2021年2月12日(金)

主張

森氏が辞任の意向

「沈黙しない」力が追い込んだ

 東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が女性を蔑視する発言をした問題をめぐり、辞任の意向を固めました。「(森氏の)謝罪によって問題は終わった」とコメントしていた国際オリンピック委員会(IOC)が一転、森氏の発言を「完全に不適切だ」と厳しく非難する声明を出すなど、高まる国内外の世論に追い込まれました。森氏だけでなく、同氏に辞任を求めず、ジェンダー平等社会実現への日本の本気度について国際的な信用を失墜させた菅義偉政権の責任は極めて重大です。

IOCの異例の声明

 IOCの声明は、「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」などとした森氏の発言について「完全に不適切であり、IOCの公約や(五輪改革案の)アジェンダ2020に矛盾している」と指摘しました。その上で「オリンピック憲章が述べているように、われわれは、スポーツ界でのあらゆるレベル、あらゆる組織において女性の参画促進を奨励し、支援する使命に取り組んでいる」と強調しました。

 声明は、五輪の使命と、大会を準備・運営する組織委員会会長に森氏がとどまり続けることは相いれないことを事実上明らかにしたものです。

 いったん問題は済んだとしていたIOCが改めて声明を出したのは、森氏の発言に国内外で批判がわき起こり、急速に広がり続けたことが背景にありました。

 日本国内では、世論調査で森氏の発言を「問題がある」とした人は91%にも上りました(「読売」8日付)。森氏が組織委員会の会長として「適任と思う」は6・8%にすぎません(「共同」7日配信)。森氏の処遇検討を求めるオンライン署名は約15万人に達しました。

 森発言を契機に、五輪の会場や選手村などで活動する大会ボランティアの辞退申し出が相次ぎました。大会の国内スポンサー企業からも批判が噴出しました。東京電力福島第1原発事故で被災した福島県の男性は、日本の性差別の問題と事故の風評被害に苦しんだ故郷への思いを重ねて、聖火ランナーの辞退を表明しました。

 国際的にも、多くのメディアや人権団体、政府機関などが批判の声を上げました。

 国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチは森氏の発言を「金メダル級の女性蔑視」とする論評を発表し、欧州各国の在日大使館もツイッターで「沈黙しないで」などのハッシュタグを付けて抗議の意思を示す状況も生まれました。

菅政権の姿勢が問われる

 一方、菅首相は「大会組織委員会で人事は決める。(政府から)独立した法人としての判断を尊重する」と森氏の進退への言及を避けました。法律で独立性が明記されている日本学術会議への人事介入を当然視する菅氏がこう述べるのは、ご都合主義がすぎるとの批判が出たのは当然です。

 自民党の二階俊博幹事長がボランティアの辞退を「瞬間的」なものと軽んじ、森氏の発言を「内閣総理大臣を務め、党の総裁であられた方のことを現職の幹事長があれこれ申し上げることは適当でない」と述べたことも大問題です。森氏を擁護し続けた菅政権と与党の姿勢が改めて問われます。


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