2021年2月12日(金)
コロナ 高齢者施設など社会的検査広がる
25都府県が実施・計画
共産党が論戦・運動で提起
本紙調査
新型コロナウイルスの感染症拡大に伴う緊急事態宣言が10都府県で延長され、高齢者施設や医療機関でのクラスター(感染者集団)が多発するなか、少なくとも18都府県が高齢者施設などでの社会的検査を実施し、今後、実施を計画している自治体は7県にのぼることが本紙の調査でわかりました。全国の半数を超える25都府県が社会的検査を実施または計画しています。自治体レベルで高齢者施設や医療施設などへの社会的検査とその計画が広がっていることが明らかになりました。(政治部コロナ取材班)
調査は9~11日にかけて、47都道府県の担当者に、医療機関・高齢者施設などで、感染者が判明していない場合にも職員や入所者に対するPCR等検査(社会的検査)を実施しているかなどについて聞きとりました。
秋田、茨城、栃木、埼玉、東京、神奈川、長野、岐阜、静岡、京都、奈良、鳥取、広島、香川、福岡、長崎、宮崎、沖縄の各都府県が、医療機関、高齢者・障害者施設の無症状の職員に、少なくとも1回以上のPCR検査または抗原検査を行っていました。また、今後実施を計画・検討している自治体は、緊急事態宣言が出ている10都府県を除き、宮城、群馬、山梨、三重、滋賀、愛媛、佐賀の7県です。北海道や大阪府のように市町村レベルで実施している道府県もあります。
国通知前から実施
厚生労働省は4日付の事務連絡で、8日以降も緊急事態宣言が出ている10都府県(特定都道府県)に対し、感染多数地域における高齢者施設の職員への定期的PCR検査を行うよう通知。12日までに検査の集中的実施計画を提出するよう求めています。それ以外の地域(県)にも幅広い検査の積極的実施を求めています。本紙調査で、国が通知する以前から、自治体独自に無症状感染者の早期発見の取り組みが進められていることがわかりました。
各自治体は取り組みについて「高齢者は新型コロナウイルスに感染した場合重症化しやすく、無症状者をいち早く発見することが必要」との認識を表明。限られた財源の中、高齢者をはじめとする地域住民の命と暮らしを守る地道な努力が行われています。
複数の担当者から、「2021年度の国の支援策を早く出してほしい」「支援を継続してほしい」とさらなる国の支援を求める声も出されました。
日本共産党は一貫して積極的検査を提案。昨年6月の志位和夫委員長の予算委質問では、医療・福祉施設での無症状者を含めてPCR検査の実施を迫りました。各地の党議員団や地方機関も市民や運動団体と連携し、地方議会での質問や自治体への要請活動などを通じ、社会的検査の実施を求めてきました。
志位氏は、4日の記者会見でも「高齢者施設や医療機関での集団感染は、重症化や死亡に直結する極めて深刻な緊急事態だ」とし、全額国費で医療・高齢者施設での社会的検査を行う仕組みをつくるべきだと求めました。
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コロナ検査 5県で定期的・複数回
求められる対象者拡大
社会的検査を複数回行っているのは、神奈川、広島、福岡、長崎、沖縄の各県です。
神奈川県は、今年度中に高齢者・障害者施設で働く10万人余の全職員を対象に、2週間に1回程度のPCR検査の予算32億円を2月9日に提案しました。
広島県は、高齢者・障害者施設の職員を対象に、定期的な抗原検査を継続して実施。福岡県は、高齢者施設と障害者施設の職員にPCR検査を1月から月1回の頻度で行います。
長崎県は、昨年10月から県内40の病院と、介護、障害者施設、精神科医療機関で、すべての新規入院患者・新規入所者を対象に無料PCR検査を実施。平戸、壱岐両市では、高齢者、障害者施設の職員へ1週間に1回の定期的なPCR検査をしています。
沖縄県は、高齢者施設の職員を対象に2週間に1回のペースで3月までPCR検査を行い、医療機関の職員の検査費用を助成しています。
これらの取り組みに対し、例えば大阪府では、感染者が判明した場合に入所者全員を検査するよう通達しているとしています。感染者の発生を抑えるための検査としては、感染者が判明してからの検査では遅いという問題があります。
施設の自主的検査に補助
施設が行う自主的検査へ補助を行っているのは東京都です。都内の特別養護老人ホームや老人保健施設など1608施設に対し、PCR検査の費用を補助。予算額は27億4千万円です。
鳥取県は、無症状の高齢者施設、障害者施設、保育施設の職員のPCR検査費用の2分の1を助成しています。
栃木県では、県内の高齢者施設と精神病院の職員ら約2万人を対象に3月までに1回の抗原定量検査を行います。
静岡県は、感染拡大地の全573の高齢者・障害者施設の希望する職員を対象に抗原検査を実施。約300事業所の職員がすでに受検しました。
香川県は、入所系(デイケアなど通所施設を除く)の高齢者施設の職員全員を対象に、唾液による一斉PCR検査をします。
地域を限って社会的検査を実施しているのは、埼玉、長野、岐阜、奈良の各県です。
現状では、地域によって対象施設や対象者、頻度などで違いがあります。今後、国の全面的な負担・補助でより多くの施設を対象に、職員のみでなく入所者全体に対し、定期的な検査を行うことが必要です。
実施に向けて計画を作成中
宮城県は、検査対象の範囲を検討している段階で、実施に向けて計画を作成中です。
滋賀県では感染拡大の状況にあわせ、一斉・定期的な検査の実施を計画しています。
愛媛県は今後、高齢者施設の職員か利用者へのスクリーニング検査を予定するなど、各県で計画が進みつつあります。
市町村独自の取り組みも
都道府県では社会的検査を実施していない場合でも、市町村レベルで独自の取り組みを行っています。
北海道では札幌、函館両市で、高齢者・障害者施設の職員に定期的な検査を実施しています。
大阪府の寝屋川市では、特養ホームなどの職員約800人に2週間に1回程度の定期検査を実施しています。
全国に先駆けて介護施設の職員に社会的検査を進めてきた東京都世田谷区は、4人の検体を一度に判定するプール方式によるPCR検査を都内23区で初めて導入。検査対象は、区内の介護や障害者施設の職員ら約1万5400人です。
全額国費負担へ共産党が全力
検査拡充を求める市民の声を背景に、全国の自治体レベルの検査拡充の動きが政府を突き動かしてきました。
日本共産党は国政でも地方政治でも、PCR検査拡充による無症状感染者の早期発見、保護で感染拡大を封じ込める戦略確立を市民と求めるとともに、社会的検査の全額国費負担を求め全力を挙げています。
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