2021年2月10日(水)
東日本大震災10年
志位委員長 被災地とのオンライン会談
被災者に寄り添う支援 継続・強化を
東日本大震災から10年の節目を前に、日本共産党の志位和夫委員長は9日、岩手県の達増拓也知事、陸前高田市の戸羽太市長とオンラインで会談し、復興の現状・課題や要望について聞きました。
「誰一人取り残さない」の理念で
岩手県知事 達増拓也さん
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志位氏は「知事はこの10年間、復興の先頭に立ち、『被災者一人ひとりの幸福追求権を保障する』、『犠牲者の故郷への思いを継承する』という二つを原則にすえて取り組み、独自の被災者への医療費免除も続けてこられた」と敬意を表明。コロナで新たな困難が加わるもと、心のケアや災害公営住宅のコミュニティーづくり、苦境にある漁業・水産加工業への支援、防災集団移転事業の移転元地の利活用などについて、現状と国への要望を聞きました。
達増氏は「誰一人として取り残さない」との理念で、国民健康保険の一部負担金免除をはじめ、国が終了した事業の継続、国の制度に上乗せした手厚い支援を県独自にすすめてきたと紹介。継続的な対応が必要な心のケアは、コロナ禍により対面での支援に支障が生じ、一人ひとりに寄り添った支援を続けたいと述べました。
活用が決まった移転元地は6割にとどまり、利活用の促進に向け市町村への支援が必要だと指摘しました。
漁獲量大幅減
復興に影を落とす問題として、サケなど主要魚種の漁獲量の大幅減をあげました。「復興需要の縮小傾向も重なり、消費税率アップ、地域経済への影響があり、そこにコロナによるさらなる消費の落ち込みが加わり、被災地の生業(なりわい)再生に大きな影響が出ている」と強い懸念を示しました。
志位氏は、水産業がグループ補助の返済時期を迎える中、補助の継続と強化が必要だと強調。魚種転換の取り組みにもふれ、「従来の枠にとどまらない、思い切った新しい支援が必要ではないか」と尋ねると、達増氏は「北海道・東北で日本の漁獲量のかなりの部分を占める」として国をあげての対応を求めました。
災害公営住宅のコミュニティー形成について、志位氏が「生活支援相談員を増やし、ケアが届くようにしていくため、国の支援強化が大事だと思います」と語ると、達増氏は「現場のニーズに応えきれていない。国の大きな支援が必要」と応じました。
コロナ禍の自粛により、岩手でも事業者の収入の落ち込みが「緊急事態宣言のかかっているところと同じくらい大変な状況」だと説明した達増氏。「時短・休業要請のない地域でも収入減の著しい事業者に減収補てんする給付金がどうしても必要」と支援を強く要請。志位氏は「緊急事態宣言が出ている、いないにかかわらず、事業者全体の苦境を救っていかなければならない」と、事業規模に応じた給付金、持続化給付金や家賃支援給付金の第2弾を求めていくと述べました。
残る心のケア
「心のケアやコミュニティー支援は、難しいから残っている。今まで以上に丁寧に寄り添い対応していかなければならない。ゴールに向けてラストスパートで一気に終わらせようという感覚ではなく、むしろ末永く寄り添って、どこまでも一緒に復興を歩んでいく姿勢をまずオールジャパン、国に求めたい」
達増氏がこう述べると、志位氏は「本当にその通りだと感動をもって聞きました。そういう姿勢で国が支援を続けるよう求めたい」と応えました。
達増氏は「日本全体でコロナ感染者をほぼゼロに減らすことが、最大の経済対策であり、社会経済活動の回復につながる」と強調。事業者や個人への徹底的な支援として給付金などを求めました。
最後に「岩手県は市民と野党の共闘の先進県であり、知事に大きなご尽力もいただき、心強く思っています。引き続き協力できたらと願っています」と語った志位氏。達増氏も「私も野党共闘と市民のみなさんに力強く支えられ、復興、コロナ対策にも取り組むことができています。私の方こそ、お礼を申し上げ、これからもよろしくお願いします」とエールを交わしました。
津波で人が死ぬことがない街へ
陸前高田市長 戸羽太さん
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住宅再建や生業の再建について独自の支援策を手厚く行ってきた陸前高田市。志位委員長が「被災者のみなさんに心を寄せて10年間頑張ってこられたことに心からの敬意を表します」と切り出すと、戸羽太市長は「日本共産党の皆さま方には発災以来ずっと寄り添っていただいたことに心から感謝します」と応じました。
海の環境問題
養殖業が主要産業の一つとなっている陸前高田市。貝毒の発生などを例にあげ、市長が今一番心配していることとして挙げたのは海の環境の問題でした。
市長はこの中で、福島第1原発事故による汚染水処理の問題に言及。「岩手県内の沿岸自治体の市長のみなさんが、海洋投棄に対しては反対すると話をされている。しかし、国から(海洋投棄について)相談などが何もない」と政府の対応に苦言を呈しました。「漁業者のみなさんが頑張り、マイナスから、やっと今、養殖できるような環境を整えてきた。それに加えていま、コロナで苦戦しているわけです。そこは、ご一考いただかないといけない」と述べました。
戸羽市長は、「復興という切り口だけではなくて、地方創生というところも含めて国に後押しをしていただけると、われわれとしては勢いも付きますし、未来が見えてきます」と強調。公共交通機関の脆弱(ぜいじゃく)化など、地方独自の問題にふれ、「免許を返納した高齢者が、町のはずれから中心部の商店街までタクシーで買い物に来ると6千円もかかる。都市とは違う独自のルールが必要ではないか」と提起しました。
志位氏は、汚染水の海洋放出には断固反対をつらぬくこと、処理のあり方について国から説明がないことについても政府にきちんと対応を求めると表明。公共交通のあり方についても、前向きに具体策を検討していきたいと答えました。
全体が高齢化
「被災者の心のケアの問題、災害公営住宅での地域のコミュニティーづくりの課題について聞かせてください」と切り出した志位氏に戸羽市長は、「問題は全体が高齢化していることです」と応じました。「顔見知りの方に相談に行っていただき、様子を見に行っていただいていますが、これがなくなると、世の中との接点がなくなるという人もいるのではないかという状況です」と述べ、相談員の重要性について語りました。
話題は、新型コロナウイルス感染症の影響に。戸羽市長は、「三陸の水産物には、ウニやアワビなど高級なものが多く、外食産業、ホテルや旅館業がだめになれば、それとリンクしてものが売れなくなるという現実がある。送料無料になるような補助金を出し、市として支えているが、長引けば、限界がきます」ときびしい現状を語りました。
戸羽市長は、震災後の街づくりにとって大事なのはスピード感だったと強調。「時限的、限定的でいいので、国や都道府県がもっている権限を現場におろすことが必要です」と強調しました。
その上で、震災後の街づくりの考え方について次のように熱く語りました。「私たちがなぜこういう街をつくったかといったら、二度と同じ間違いを繰り返さないぞと、二度と津波で人が死ぬことがない街をつくるんだということです。伝えたいのは、やはりどうやったら人が命を落とさなくて済むのか、そのためには何を日ごろから考えなければいけないのかということです」
市長はさらに続けました。「私たちが目指しているものの原点は、100年後か200年後か分からないが、また津波が来た時に、『先人の人たちがこういう街をつくってくれたから助かったね』『良かったね』と言ってもらえる街をつくることです。これが私たちの一番の責任と思っています」
志位氏は、「将来を見据えた情熱的な取り組みに敬意を表します。市長の言われた方向で、現在とともに将来の世代に責任を負う街づくりのために、力をあわせていきたい」と応じました。