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2020年12月24日(木)

窓口アタフタ マイナンバーカード受診

“患者も病院も手間増える”

 病院の窓口で、保険証や診察券を出すのにアタフタした経験はありませんか。来年3月から保険証の代わりにマイナンバーカードが使えるよう政府が進めています。そうなると、もっとアタフタする人が増えそうです。(矢野昌弘)


 厚生労働省はマイナンバーカードを読み取る「顔認証付きカードリーダー(読み取り機)」を、医療機関と薬局にタダで提供しています。導入した診療所や薬局には約43万円、病院には最大で約210万円まで補助するとしています。

 この機械は、読み取り部分にマイナンバーカードを置くと、カメラが窓口に来た人を撮影。マイナンバーカードのICチップに入った顔写真データと顔を照合して、本人か確かめるというものです。

 「患者も医療機関も、手間が増えるだけだ」。東京保険医協会副会長で内科医院を営む吉田章さん(67)は言い切ります。

 「高齢者が自力で機械を使いこなすのは相当、難しい。やるとなれば、援助のための職員を新たに雇う必要があるのではないか」

毎回提示必要か

 厚労省はマイナンバーカードを使う利点に、受診者の保険の情報が、オンラインで自動的に最新のものに更新され、保険が有効かすぐ確認できることをあげています。

 保険証は、月初めにみせれば、次回から提示不要というのが一般的ですが、マイナンバーカードだと、医療機関は受診のたびにカードの提示を求めざるをえなくなりそうです。

 厚労省の担当者は「今は無効になった保険証を回収しなかった(支払基金など)保険者に責任がある。しかし今後は(オンラインですぐに)資格があるか確認できるのに怠った医療機関の責任が出てくる」といいます。

 そのため、無効の保険証と知らずに医療機関が請求しても「保険者から受け取れるはずの診療報酬は『受け取れませんよね』となる」と説明します。

 吉田さんは「うちの医院で保険証が無効だったケースは年に1件あるかないかだし、診療報酬もきちんと回収できている。現状に問題があると思わない。それなのに、わざわざ顔認証を使わせようとするのはおかしい」。

顔認証のみ補助

 顔認証付きカードリーダーは3製品があり、顔認証を使わずに暗証番号で本人確認する機能もあります。児童や乳幼児の場合は、保護者が暗証番号を入れます。暗証番号だけなら市販のカードリーダーで代用できますが、厚労省は、顔認証付きの3製品にしか補助をしません。

 吉田さんは「補助が出ても、導入費用をまかなえるかも疑問だし、維持費を考えると厳しい。もし導入が義務化されたら、『医院を閉じる』と話す医師もいる」と話します。

 来年3月以降も保険証で受診できます。しかし政府は将来的に保険証の廃止を検討しています。

 顔認証付きカードリーダーの製造メーカーは「顔認証と暗証番号の他にも、職員が窓口に来た人とマイナンバーカードの顔写真データを見比べる目視確認もOKなので、保険証が廃止されても問題ない」と本紙に答えました。目視で済むなら、あえて巨費をかける新システムが必要なのか、疑問です。

図

(図)保険証代わりにマイナンバーカードを使うことの“メリット”を強調する厚労省の説明資料


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