2020年12月19日(土)
カジノ「基本方針」決定
国民の批判に逆らい政府暴走
コロナ禍 首相危機感欠如
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菅義偉内閣は18日、全閣僚で構成するカジノ推進本部(特定複合観光施設区域整備推進本部、本部長・菅首相)を開き、カジノ「基本方針」を決定しました。国民の不安や批判に逆らって、コロナ感染拡大の中で、カジノ推進の暴走を加速させる菅政権の非常識な動きに批判が広がるのは必至です。
菅首相は同本部で「わが国を観光先進国としていくための重要な取り組み。必要な準備を着実に進める」とのべ、カジノに固執する姿勢を示しました。
政府は昨年9月に「基本方針」案を公表しましたが、その後、衆院議員の秋元司元IR担当内閣府副大臣(自民党離党)が逮捕されるカジノ汚職が発覚。さらに新型コロナ感染拡大で世界のカジノ事業がストップする事態が広がり、国内のカジノ事業は先行きが見通せない状態になっていました。
菅首相の就任後、「基本方針」に汚職対応や感染症対策などをアリバイ的に盛り込む改定案が示され、決定への手続きが進みました。今回の決定により、安倍晋三前政権で行き詰まっていたカジノが“再起動”されます。
誘致自治体が政府に申請する期間は、当初の「来年1月から7月まで」から、「来年10月から22年4月まで」に、9カ月間後ろ倒しされました。
政府の決定を受けて、誘致自治体による事業者選定などの準備作業が激しさを増すことになりかねません。
横浜市、和歌山県、大阪府・市、長崎県の4自治体がこれまでに誘致を正式表明しており、東京都も水面下で激しく動いていることが確認されています。
破たん認め断念を
菅義偉内閣がカジノ「基本方針」を決定しました。新型コロナウイルス感染が爆発的に拡大するこのタイミングで、平然とカジノ計画を前に進める菅首相の危機感の欠如に、あ然とせざるをえません。
菅首相は、これはカジノ実施法に基づくものだと強調しています。しかし、同法は安倍晋三前政権が国民の強い反対を押し切って強行したものです。
国民の大多数がカジノ解禁に反対する厳しい世論はいまも変わっていません。政府のカジノ開設に向けたスケジュールが繰り返し遅延し、行き詰まったのは、国民の声を無視する政治の限界を示したものです。
昨年12月に発覚したカジノ汚職事件は、カジノが巨大な利権事業であり、腐敗の温床となることを示しました。菅首相が、地元・横浜市にカジノを呼び込もうとしていることも合わせれば、カジノ利権をめぐる汚れた政治の流れが進んでいるかのようです。
新型コロナウイルスの世界的大流行は、世界中のカジノの閉鎖、営業制限を広げ、カジノの収益力が失われました。「3密」空間に客を詰め込み、24時間365日、無限に賭けを続けさせるカジノはもう無理なのです。
カジノの巨額収益をエンジンにして、ホテルや国際会議場、展示場などの巨大施設を運営するというIR(統合型リゾート)の構想は、完全に過去のものです。そうした大きな環境変化を検証し、破たん済みのIRカジノは断念すべきです。(竹腰将弘)
カジノ基本方針 国内のIR(カジノを中核とする統合型リゾート)の制度設計、最大3カ所とされるカジノ設置地域の選定基準などを決める政府の方針。当初は今年1月の決定がもくろまれましたが、カジノ汚職事件やコロナ禍の影響でストップしていました。