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2020年11月8日(日)

首相、苦し紛れの「事前調整」論

学術会議任命拒否 根拠 総崩れ

 「総合的・俯瞰(ふかん)的」「多様性確保」―。日本学術会議会員の任命拒否問題をめぐる「正当化」論がことごとく破綻した菅義偉首相。苦し紛れに持ち出したのが、「今回は(事前)調整がなかったから任命に至らなかった」(5日参院予算委)という発言です。しかし、学術会議側に責任をなすりつけようという新手のすり替え論も、裏を返せば選考・推薦の段階で介入するという「露骨な政治介入宣言」(日本共産党の小池晃書記局長、6日参院予算委)にほかなりません。矛盾は深まるばかりです。

口実くるくる

 これまで首相は、任命拒否について「総合的・俯瞰的な活動を確保する観点から判断した」と言い張っていました。しかし、日本共産党の志位和夫委員長が「6人を任命すると『総合的・俯瞰的活動』に支障をきたすのか」と追及すると、首相は「人事に関することでお答えは差し控えたい」と述べるだけで、その理由を答えられませんでした。

 「必ず推薦のとおりに任命しなければならないわけではないとの点は、内閣法制局の了解を得た政府の一貫した考え」という言い訳も、「政府が行うのは形式的任命」「推薦していただいた者は拒否しない」という、公選制から推薦にもとづく任命制に変わった1983年当時の一連の政府答弁を覆すもので、解釈の改ざんだと明確になりました。

 しかも「内閣法制局の了解」も「平成30年11月15日」(井上信治科学技術担当相)とわずか2年前であることも明らかになりました。

 「多様性が大事だ」などという理屈も破綻しています。大事ならなぜ、私立大学からの3人を拒否したのか、女性研究者を拒否したのか、その大学から唯一の研究者を拒否したのか―いずれも説明できず、支離滅裂ぶりをあらわにしました。

 こうして「正当化」論をくるくる変え、いずれも破綻したなかで持ち出してきたのが「事前調整」論です。

元会長が反論

 首相は委員会答弁で、「以前は」推薦名簿提出前に、内閣府と学術会議との間で「一定の調整が行われていた」と発言。「以前」とは、2017年のことと明言しました。

 しかし当時の会長・大西隆氏は「首相のいう『調整』が『推薦名簿』の変更を意味するのであれば、調整した事実はない」ときっぱり反論しており、首相のウソは明白です。

 重大なのは、首相が「推薦前の調整が働かず…任命に至らなかった」と告白したこと。「任命」以前の「選考・推薦」の段階で政府が介入することを公然と宣言したのです。小池氏が指摘するように、学術会議法17条は、会員の選考・推薦は学術会議の権限としており、選考・推薦への政府の介入が違法であることは明白です。まさに「露骨な政治介入」です。

表:次々と破綻する任命拒否問題での「正当化」論

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