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2020年10月28日(水)

なくすな大阪市

「都」構想反対増え「伯仲」

記者座談会

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(写真)市民が街頭でマイクを握り訴え、人だかりも=25日、大阪市阿倍野区

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 大阪市をなくすかどうかの選択を市民に迫る住民投票が11月1日に迫っています。様相を担当記者で話し合いました。

  大接戦だね。「朝日」27日付の世論調査も賛成39%、反対41%。「賛否伯仲 反対増える」と報じている。

  26日付で報じた「共同」調査が賛成43・3%、反対43・6%。「読売」が賛成44%、反対41%。どの調査も反対が増えているのが特徴だ。

  維新は「圧勝」をもくろんでいたが反対派の草の根の運動と市民の良識が「賛否拮抗(きっこう)」まで持ち込んだ。「維新『反対』増に危機感 公明と陣営引き締め」(「読売」27日付)という報道が出るほど。反対から賛成に転じた公明党は山口那津男代表が大阪市入りしてテコ入れを図ったが、依然として支持者は反対の方が多い。

  反対理由で「大阪市がなくなるから」が多いことは感慨深い。前回2015年の住民投票後のアンケートでは、賛成多数になれば「大阪市が廃止・消滅」することを知らなかった人が圧倒的に多かったからね。

  前回は投票用紙に「大阪市廃止」が明記されていなかったが、陳情採択を受け、今回は明記。「行こう! 投票」と呼びかける選管のポスターにも「大阪市廃止・特別区設置住民投票」と書かれている。

  「都」になるかどうかを選ぶ住民投票ではない。130年の歴史をもつ大阪市をなくしていいのかの選択を迫る投票だ。

住民サービスは低下 自主財源3分の1に

正確な情報伝え切る

100万人対話が勝利のカギ

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(写真)連合振興町会の会長が次々マイクを握り思いを語る=24日、大阪市生野区

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(写真)山下芳生副委員長の街頭トークに立ち止まって聞き入る市民も=25日、大阪市阿倍野区

  世論調査でも反対理由で「大阪市がなくなるから」とともに多かったのは「住民サービスが低下する」だった。この問題をめぐってテレビ討論やビラ、街頭などで激しい論争になっている。

  実は単純な話だ。自主財源は3分の1に減る。特別区を設置するのに多額の費用がかかる。家計でいうと、収入は減る一方、支出は増える。これでは、何かを切り詰めないとやっていけない。

  「都」構想の財政シミュレーションでは、市民プールや子育てプラザなどの施設削減が盛り込まれている。これでよく住民サービスは「維持する」と言えたものだ。

  設計図の協定書にも、「維持」は特別区が設置される2025年1月1日まで。それ以降は維持するよう「努める」としか書けなかった。松井市長も、特別区の区長や区議会が決めることだと逃げている。

「拡充」とデマで

  ところが、最近は「拡充」と言い始めた。27日付の「号外 維新プレス」の見出しも「大阪都構想 住民投票 皆様の賛成で住民サービスが拡充します」だ。「『都構想で住民サービス低下』はすべてデマ」として「正しい情報は大阪市役所副首都推進局にお問い合わせください」と電話番号まで書いている。

  市役所を維新の出先機関とでも思っているのかね。それとも、自分たちではまともに答えられないということか。

  「拡充」の根拠に挙げているのが「都構想の実現によって得られる財政効果は1・1兆円(10年間の累計)」(「維新プレス」)というのだからあきれる。

  その数字は市が委託した嘉悦学園の報告書だね。専門家からも学問的な信ぴょう性が疑われ、松井市長もテレビ討論で「参考資料」としか言えなかった報告書だ。それを維新のビラに堂々と掲載するのだから、開いた口がふさがらない。

  元副知事の小西禎一さんは、自らの行政経験から、要するに予算をそれだけカット(削減)するということで住民サービスの維持・拡充とは両立しない、と言う。

「説明不十分」と

  維新は「デマだ」「デマだ」と言うほど墓穴を掘る。反対派の「特別区設置コスト1300億円(15年間)」に新庁舎建設費が含まれていることに松井市長はテレビ討論でかみついた。

  特別区設置時に新庁舎を建てないというのはあくまで「暫定的」で先送りしただけの話。そのことによって、例えば新淀川区の職員の8割が区外の現中之島庁舎を間借りする。災害の時にどうするのか、と新たな矛盾を引き起こしている。

  公明党議員は法定協で「自然な流れとして、それぞれの(特別区の)庁舎を建設するという声も出てくる」として、その際の費用負担のあり方を整理するように求めた。これを受けて「将来的な庁舎のあり方について、特別区長・区議会を拘束するものではない」と確認されている。

  「住民サービスの維持」も「初期コスト(費用)を抑える」も公明党を賛成に取りこむためのごまかしにすぎないということか。公明党支持者も納得していないことは世論調査にも表れている。松井市長らの説明が「十分でない」が多い(「朝日」調査で53%)のは当然だ。

  権限・財源を府に奪われたら住民サービスの低下は避けられない。大阪市の力を生かしてこそ拡充ができる。

カジノしかない

  コロナ禍でも維新の「成長戦略」はカジノとインバウンド(訪日外国人旅行者)頼みだ。カジノは典型的な「3密」(密閉・密集・密接)産業。コロナ禍で経営悪化した大手カジノ資本の日本進出計画からの撤退が相次いでいる。それでも「人の不幸で成り立つ」カジノにしがみつく。命と福祉・暮らし第一に転換することが求められている。

  しかも、特別区設置後、カジノ誘致が計画されている新淀川区の区長が誘致に反対しても「知事の権限」だから、特別区長が反対しても工事が止まることはないと松井市長が記者会見で発言したことが、「やっぱり『都』構想は府の独裁化か」と波紋を呼んでいる。

元には戻れない

  コロナ禍で十分な説明や議論もなく、「よくわからない」「迷っている」という人も多い。維新が市役所まで使った「賛成」誘導宣伝に狂奔する中、正確な情報をどれだけ伝え切るかだ。

  ある連合振興町会の会長さんが言っていた。若い人から「おっちゃん、いっぺんやってみたらええやん。あかんかったら元に戻したらええやんか」と言われた。その会長さんは「いっぺん大阪市を廃止したら、元に戻られへんのやで」と伝えたという。

  街頭でのトーク集会で、5年前の住民投票では何もしなかったという女性が「5年前、反対する人たちがいたから、いまの大阪市がある」と、今回は連日街頭に立って訴えている様子が印象的だった。

  11月1日を新たな大阪の出発の日にできるかどうか。日本共産党も加わる「大阪市をよくする会」と「明るい民主大阪府政をつくる会」は、100万人対話をやり抜くことが勝利のカギだと提起している。


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