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2020年10月28日(水)

国会では沈黙 TVでは強弁

首相、勝手な基準で任命拒否正当化

学術会議の独立性を破壊

 国権の最高機関である国会での初の所信表明ではだんまりを決め込みながら、同じ日の夜のNHK番組では滔々(とうとう)と自説を一方的にまくしたてる―菅義偉首相は26日、自ら任命拒否した日本学術会議会員について、こんな異常な態度をとりました。

 首相による任命拒否は、「(学術会議の)推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する」とした日本学術会議法にも違反し、「学問の自由」を保障した憲法23条にも反する大問題です。首相の任命は「形式的なもの」とした政府答弁からも逸脱したもので、今国会の焦点課題です。それにもかかわらず、自ら問題を引き起こした菅首相は所信表明演説で一言も触れませんでした。

法治破壊

 一方で、NHK番組では学術会議について「若い人が極端に少ない」「結果的に、一部の大学に偏っている」などと問題を学術会議のあり方論にすり替え、「政府として関与し、責任をとる必要がある」と任命拒否を正当化しました。しかし、日本学術会議法17条に「優れた研究又は業績がある科学者」と会員推薦の基準を定めています。今回、政府が任命拒否の根拠にしている2018年の内閣府の文書でも同条の基準を示し、「会員としてふさわしいかどうかを適切に判断しうるのは、日本学術会議である」と明記しています。

 にもかかわらず、首相が「推薦はこうあるべき」と法律にない基準を勝手につくって任命拒否することは法治主義のあからさまな破壊です。そもそも菅氏は、学術会議の推薦名簿を「見ていない」と発言しており、語れば語るほど支離滅裂です。

 会員の多様性に問題があるかのような首相の言い分については、首相との面談(16日)について、現会員に送られた梶田隆章会長名のメール(全文)で、「現在の会員選考方式だからこそ女性会員比率を約35%まで上昇させ、関東圏以外の研究者の割合を50%程度にまで高め、ジェンダーや地域バランスを考慮し、多様な意見をくみ上げることができる会員構成になっている」と説明したとされています。

説明必要

 また、菅氏は、学術会議について「年間10億円、国の予算をつかって活動している政府の機関」「(会員に)任命すると公務員になる」と強調しつつ、「組織全体の見直しをしなければならない」などとすりかえ論を連発しました。

 しかし、国際的にみて学術会議の予算が少ないことは周知の事実、公務員になるといっても年間の手当は二十数万円程度で、返上している人もいます。

 国民が求めているのは、既に行われた任命拒否についての説明です。首相の発言自体、学術会議法第3条に定められた学術会議の独立性を破壊し、憲法で定める「学問の自由」をおとしめる行為です。菅首相は国会での審議から逃げずに任命拒否の理由を説明すべきです。


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