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2020年10月27日(火)

国民の苦難に背 際立つ強権

菅首相 初の所信表明

 26日に始まった臨時国会で、初めての所信表明演説を行った菅義偉首相。コロナ禍のなかでの国民の苦難をよそに、「自助、共助、公助」と強調する一方、日本学術会議の会員任命拒否など国民に説明すべき問題には一切触れない強権ぶりを際立たせました。

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(写真)所信表明演説をする菅首相=26日、衆院本会議

学術会議一切触れず

 菅首相が国会も開かず最初にやった仕事は、日本学術会議会員候補6人の任命拒否でした。「学問の自由」を脅かす重大問題ですが、菅首相は演説でこの問題に一言も触れませんでした。国民の疑問に答えず、説明責任を果たさない強権的な姿勢をあらわにしています。

 任命拒否は、日本学術会議法に明白に違反し、憲法が保障する学問、思想・良心、表現の自由を侵害するものです。日本学術会議だけでなく国民全体にとっての重大問題です。

 しかし菅首相は、任命拒否の理由や経過を一切明らかにしていません。菅首相は安倍前政権下での官房長官時代も、森友・加計学園や「桜を見る会」をめぐる政治私物化疑惑について国民や国会に説明せず、「指摘は当たらない」などと疑惑にフタをしてきました。こうした強権的手法を新政権でも「継承」していることが早くもあらわになっています。

 「自分でできることは、まず、自分でやってみる」。菅首相が、目指す社会像として「自助・共助・公助」と語ったことに、野党議員から「自己責任内閣!」とやじが飛びました。国民への説明は果たさず新型コロナ禍で苦しむ国民に「自己責任」を迫る発言は、政治の責任を放棄するものに他なりません。

コロナ禍の現場無視

 菅首相は新型コロナウイルス対策について「爆発的な感染は絶対に防ぎ国民の命と健康を守り抜く」と述べたものの、実際の対応はずさんです。

 ヨーロッパに続き日本でも感染再燃が危惧される中、野党が強く要求し政府も必要性を認めてきたPCR検査の抜本拡充や「検査・保護・追跡」体制の強化は進んでいません。経営危機にある医療現場への減収補填(ほてん)は一言も触れず、公立・公的病院の統廃合・病床削減を進める「地域医療構想」の中止も言及しませんでした。

 事業と雇用の危機打開も極めて不十分です。菅首相は「マーケットは安定」「新たに働く人を400万人増やすことができた」といいますが、国民の暮らしや営業は全く見えていません。

 休・廃業を検討する中小企業が31万社に上り、非正規雇用者数はコロナ前に比べ100万人超急減しています。ところが菅首相は、休業支援金が予算額の3%しか支給されない深刻な事態は放置し、「Go To キャンペーン」、無利子・無担保融資を強調しました。

 政府の経済支援制度の多くは12月までに切れるもと、直接支援の継続と強化、消費税5%への減税と納入免除など、必要な支援を届けきることが必要です。

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(写真)臨時国会開会日行動で田村智子政策委員長(右)の訴えを聞く参加者=26日、衆院第2議員会館前

「目玉」政策 願い遠く

 「グリーン社会の実現に最大限注力していく」。菅首相は演説の目玉として、温室効果ガスを2050年までにゼロにする目標を掲げました。「パリ協定」の目標「気温上昇1・5度未満」を達成するための条件で、すでに国際社会では120カ国以上が表明しています。国民や国際社会の批判に押された結果とはいえ、出遅れは明らかです。

 ただ、菅首相は「石炭火力発電に対する政策を抜本的に転換」するとしたものの、廃止に触れませんでした。30年までに二酸化炭素の排出量を現在の半分にする必要があり、最大排出源の石炭火力発電所を段階的に廃止しなければなりません。

 菅首相が力を入れるとした次世代型太陽電池が完成しても、石炭火力発電所が稼働する限り実現は無理。二酸化炭素を再利用する「カーボンリサイクル」も挙げましたが、実用化のめどは立っていません。しかも、東京電力の福島第1原発事故を収束できないまま「原子力政策を進める」と述べ、原発推進に固執する無責任な姿勢を示しました。

 さらに「デジタル社会実現」として、プライバシー侵害の懸念が広がるマイナンバーカードと保険証の一体化も主張しました。

 グリーン社会、デジタル社会等の看板を掲げても、国民が願う政策からは程遠いのが実態です。

9条改憲姿勢あらわ

 菅首相は、「抑止力の強化」として、敵基地攻撃能力の保有の検討を指示した安倍晋三前首相談話(9月11日)を踏まえて「議論を進める」としました。歴代政権は「敵基地攻撃能力」保有を「違憲」としてきましたが、この憲法解釈の再検討を宣言した形です。

 さらに、憲法審査会で「与野党の枠を超えて建設的な議論を行い、国民的な議論につなげていく」と強調。自民党内部では改憲原案の年内作成に動き出しています。「敵基地攻撃能力」保有検討を新たな突破口としつつ、自衛隊明記の9条改憲に向けた危険な姿勢をあらわにしました。

 菅首相は、沖縄県民の圧倒的多数が反対する名護市辺野古の米軍新基地建設を「着実に進める」と強調。玉城デニー知事が求める問題解決に向けた対話も拒否しました。

 「沖縄の皆さんの心に寄り添い」などと口にしましたが、官房長官時代に県民の民意を踏みにじり弾圧してきた自身の行為を顧みない口先だけの言葉は空虚に響き、基地のない平和な沖縄を願う県民との矛盾が一層深まっています。


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