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2020年10月22日(木)

主張

調布市の道路陥没

外環地下工事との関係究明を

 東京外かく環状道路(外環道)のトンネル工事が直下で行われていた東京都調布市の市道が18日、突然陥没し、住民は不安の中で暮らしています。トンネルを掘るシールドマシンが現場の地下約50メートルを9月14日に通過し、そのころから数々の異変が起きていました。調布市は早急な原因究明と住民の安全確保を国と事業者に要請しました。シールドが通過した全域で徹底した調査が不可欠です。

真下で「大深度」の掘削

 外環道は都心から15キロの圏域を延長約85キロの環状で結ぶ計画です。現在、関越自動車道の大泉ジャンクション(練馬区)から世田谷区の東名高速道路に至る区間約16キロの工事が国土交通省、東日本高速道路、中日本高速道路の共同事業として進められています。40メートルより深い「大深度地下」にトンネルを掘って道路を通します。現場はこの区間上です。

 近隣の住宅街で9月から振動や騒音が発生し、外壁や道路に亀裂が入るようになりました。日本共産党の国会・地方議員団が調査し工事の停止と地盤調査を10月7日に国交省に求めましたが、陥没事故まで工事が続行されました。穴は幅、深さ約5メートルです。人命にかかわる大事故になりかねません。

 大深度地下の利用は2001年に施行された「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」で可能になりました。地下40メートル以深の公共利用には用地買収や地権者の同意が不要とされました。

 地下鉄、水道など多くのインフラが張り巡らされている都市部の地下でもさらに深い所には通常、建造物がなく、大規模開発に利用しやすいとの狙いです。同法の国会審議では、安全性が確立しておらず、住民の意見を反映する保障がないことが大きな問題になりました。

 JR東海によるリニア中央新幹線建設でも都市部の大深度地下が利用されています。地盤沈下や河川の水枯れなどが起きれば地上の環境や住民に与える影響は計り知れません。そのためにも今回の陥没の原因を全面的に解明し、公開することが欠かせません。

 国は調査を事業者まかせにせず、原因究明に責任を果たさなければなりません。安全が担保されない大深度の利用を認可すべきではありません。

 外環道の沿線住民は国と東京都による大深度地下利用の認可取り消しを求めて訴訟を起こしています。地表部の環境を破壊する恐れがあり、大深度地下の無断使用は憲法が定める財産権の侵害だとしています。国はこの声に耳を傾ける必要があります。拙速な工事再開は許されません。

不要不急の事業見直せ

 外環道建設は国の直轄事業であり、巨額の負担が国民に押し付けられる恐れがあります。関越―東名間の事業費は当初見込みの1・8倍に上る2兆3575億円に膨れ上がっています。大手ゼネコンとの官民癒着が事業費を膨張させたことを「しんぶん赤旗」日曜版が告発してきました。国交省は20年度当初予算だけで200億円を投入しています。今後も増える可能性があります。

 一方、外環道の費用に対する効果の見通しは国交省の事業評価で当初の想定を大幅に下回っています。不要不急の公共事業は中止し、予算を新型コロナ対策に回すべきです。


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