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2020年10月18日(日)

主張

菅政権と沖縄

新基地押し付けの強権やめよ

 菅義偉政権が発足して1カ月が過ぎました。沖縄では、日本学術会議推薦会員の任命拒否にみられる菅首相の強権ぶりが、安倍晋三前政権の担当相として民意を全く無視し辺野古新基地を押し付けてきた冷酷な姿勢と二重写しだという指摘が上がっています。菅首相が今後、沖縄に対し有無を言わせぬ強権的な基地政策を進めれば進めるほど、県民との矛盾は一層激しくなることは避けられません。

反対世論の高まり示す

 沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設をめぐり、防衛省沖縄防衛局が県に提出した埋め立て変更申請書に対し、県内外から1万8904件(速報値)もの意見書が寄せられました(県の9日の発表)。2013年の埋め立て申請時の意見書数の5倍以上に上ります。新基地反対の世論の高まりを示しているのは明らかです。

 沖縄防衛局が埋め立て変更の申請をしたのは、辺野古北側(大浦湾)の海底に軟弱地盤が広範囲に存在することが判明し、従来の計画では工事の完成が不可能になったためです。しかも、仮に今回申請した新たな計画通りに工事が進んだとしても、防衛省の試算で、新基地の完成には12年もの期間がかかるとされます。

 防衛省は今月1日、辺野古南側の一部区域で埋め立てが完了したと発表しました。しかし、沖縄県によると、今年8月末時点の土砂投入量は全体のわずか3・2%です。玉城デニー知事が「埋め立て工事は遅々として進まず、軟弱地盤という極めて重大な問題が発覚し、大幅な工期の延長が余儀なくされた現状においては、もはや辺野古移設(新基地建設)では普天間飛行場の一日も早い危険性の除去にはつながらないことが誰の目にも明らか」だと強調しているのは当然です。

 今回の申請で大きな問題の一つになっているのが、県内での土砂調達先です。

 申請書によると、埋め立て土砂(岩ズリ)について、県外から調達しなくても県内だけで可能だとしました。しかも、県内での調達可能量の7割は、糸満市と八重瀬町の沖縄本島南部から採取できるとしています。

 しかし、本島南部は1945年の沖縄戦で、数多くの住民が追い詰められ、逃げ場をなくし、命を落とした激戦地です。採石場などで土砂を採取すれば、戦没者の遺骨が含まれている可能性が指摘されています。「おびただしい戦没者が出た土地の岩や砂を、軍事基地を造るための海の埋め立てに使うのは許されない」との批判の声が上がっています。

県民の声も歴史も無視

 安倍政権の官房長官だった菅氏は、新基地反対の民意を徹底して無視する姿を、当時の翁長雄志知事から、「沖縄の自治は神話だ」と述べた米軍統治下の最高権力者・キャラウェイ高等弁務官にたとえられ、批判されたことがあります。翁長氏が、県民の沖縄戦での体験や、土地の強制接収による米軍基地建設の歴史を説明し、新基地建設中止を訴えたのに対し、菅氏は「私は戦後生まれなので、沖縄の歴史はなかなか分からない」と開き直ったこともありました。

 県民の声も、歴史も顧みず、「辺野古が唯一」とする思考停止の菅政権を追い詰め、新基地建設を断念させることが必要です。


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