2020年10月18日(日)
学術会議任命拒否
自然保護団体が抗議した訳は…
日本自然保護協会 日本野鳥の会 WWFジャパン
自由に発言できる社会でないと
日本学術会議が推薦した会員候補6人が任命されなかった問題で、日本自然保護協会と日本野鳥の会、世界自然保護基金(WWF)ジャパンの3団体が13日、自然保護の観点から連名で抗議声明を出しました。自然保護団体が学術会議問題で政府に抗議する理由は―。(原千拓)
声明は「日本学術会議会員の任命拒否は、政権が学会及び研究者に圧力をかけていることにほかならない」と指摘。「自由な議論への圧力ともなり、不要な忖度(そんたく)や萎縮を引き起こし、政策の適切な実施を阻害するおそれがある」と厳しく批判しています。
日本自然保護協会の大野正人保護部長は、国の政策に対して提言を行うときや、自然保護活動する際には、専門家たちの意見を聞き、現地調査などから得た科学的な根拠を大事にしながら活動してきたといいます。「今、その科学の基礎となる『学問の自由』が揺るがされていると感じています」と訴えます。
日本学術会議は、政府に向けて多くの提言を出しています。大野氏は「その内容も私たちの活動と連携する部分が多く、私たちの活動にとって理論的なよりどころになっています。今回の問題がまかり通れば、科学に基づいた自由な議論が萎縮し、政府の審議会などにも影響が及ぶのではと危惧しています」と警鐘を鳴らします。
菅義偉首相が任命拒否したことについて声明では「日本学術会議法にもとづく学術会議の独立性を損なうもの」と批判。「政府が日本学術会議に政治介入したことは、日本の健全な自然保護の推進の観点からも見過ごすことができない」と訴えています。
日本野鳥の会の葉山政治常務理事は、自然保護は社会との連携が欠かせないといいます。「一見、この問題に自然保護団体は関係ないのではと思うかもしれません。しかし幅広い分野に関わることで、研究者の意見を聞いたり、各省庁の人たちと議論をしたりする際、お互い自由にさまざまな視点で意見を交わすことが大切です」と指摘します。
3団体の声明では「学問の自由を保証し、任命を拒否した理由を明らかにし、任命拒否を撤回すること」を求めています。
葉山氏はこう強調します。「首相の人事権で学術会議を締めつけるのはまずい。自分の考えを自由に発言できる社会でないと自然保護も進みません。苦言をきちんと聞ける政府であってほしい。いろいろな分野の科学者が集まって自由に議論を交わすことで日本の社会は発展していくものだと思います」