2020年10月9日(金)
原発汚染水海洋放出 漁業に打撃
全漁連と福島県水産加工業連 「断固反対」を表明
政府会合で
東京電力福島第1原発事故で増え続けている高濃度のトリチウム(3重水素)汚染水の処分方法をめぐって、政府は8日、関係者から意見を聴く会合を開きました。全国漁業協同組合連合会(全漁連)と福島県水産加工業連合会の両代表はいずれも、薄めて海に流す案に「断固反対」の立場を表明しました。
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福島県水産加工業連合会の小野利仁代表は事故発生以来9年半、“風評の最前線”にいる業界の苦悩について述べました。試験操業で沿岸の魚は当初の2割程度しか水揚げされない状況では「商売ができない」こと、福島の魚を外しても流通する形態になっている現状を紹介。「コロナ禍の消費低迷で真っ先に切られるのが福島県」「当たり前の商売をさせて」と訴えました。
全漁連の岸宏会長は福島の漁業者が放射能汚染に苦しみ続け、本格操業にむけて血のにじむ努力をしているなか、「海洋放出となれば風評被害の発生は必至。きわめて甚大な被害を憂慮する。国民の理解が得られない海洋放出はわが国漁業者の総意として反対だ」と述べました。
会合は7回目。これまで福島の地元自治体や近隣3県、農林水産業や観光業、小売業などの関係者、経済団体、消費者団体、周辺住民などから意見を聴きました。環境放出には反対・懸念の意見が圧倒的。処分方法を拙速に決めず、タンクを増設し保管継続を求める声が広がっています。
トリチウム汚染水問題 事故によって増え続ける高濃度の放射能汚染水は、セシウムなど62種類の放射性物質の濃度を国の放出基準未満まで低減できるとされる多核種除去設備(アルプス)で処理されます。しかし処理後の水にはアルプスでは除去できないトリチウム(3重水素)が高濃度に含まれ、敷地内のタンクには処理が不完全なものも含めて約123万トン(9月17日時点)のトリチウム汚染水がためられています。現行のタンク建設計画(約137万トン)では2022年秋ごろに満杯になるとみられます。基本方針決定から処分開始まで2年程度かかる見込みで、政府は、薄めて海に流す案や水蒸気にして大気に放出する案など、処分方法の検討を前のめりに進めています。