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2020年10月9日(金)

論戦ハイライト

全国民への攻撃 学問の自由守れ 学術会議任命拒否

田村智子議員の質問 参院内閣委

 8日の参院内閣委員会で、菅義偉首相による日本学術会議の会員6候補の任命拒否問題を取り上げた日本共産党の田村智子議員。今回の任命拒否が、日本学術会議法に違反し、憲法23条が保障する「学問の自由」にも反する重大問題であることを浮き彫りにしました。


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(写真)質問する田村智子議員(左から2人目)=8日、参院内閣委

 田村氏は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックのもとで、科学的知見が行政や国民生活にとってどれほど重要か経験していると指摘。「科学の追究と誠実さをもって科学者が活動し、発言することが今まさに求められている。任命拒否は日本学術会議のみならず、科学の成果を享受する国民にとっての大問題だ」と訴えました。

田村氏 任命拒否の基準示せ

官房長 答えは差し控える

 そのうえで田村氏は、今回の任命拒否の基準を示すよう要求。日本学術会議法は、推薦の基準を優れた研究または業績がある科学者としています。ところが、菅首相は「総合的・俯瞰(ふかん)的な活動を確保する観点から任命を判断した」と述べ、加藤勝信官房長官は「専門領域の業績のみにとらわれない」観点から判断したと述べています。

 田村 法に定めのない基準がなければ(首相らの言い分は)おかしい。総理の選考基準を明確に示してください。

 大塚幸寛内閣府官房長 人事に関することですので、お答えは差し控える。

 田村 (法に定めのない)基準があると言ったら、学問の自由に関わるから言えないということだ。

 今回の任命拒否は、首相による任命は「形式的」なものだという1983年の日本学術会議法改定時以来の法解釈を覆すものです。

 田村氏は「形式的任命という法解釈を維持しているのか、否定するのか」と質問。内閣府の大塚官房長は、任命は「形式的」だと繰り返された1983年の国会答弁を「踏まえている」と答弁。一方で、「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である」という憲法15条1項を持ち出し「推薦どおりに任命すべき義務があるとまで言えない」と強弁しました。

官房長 任命権は憲法15条が前提

田村氏 根拠にならない 「不適当」の理由を文書で示せ

 田村氏は、形式的任命を否定できないのに「裁量がある」という「根拠」として法制局から示された、1969年に衆院文教委員会で高辻正己法制局長官(当時)が国立大学の学長任命の解釈について答弁した文書を紹介。答弁では「申し出があった者を任命することが、明らかに法の定める大学の目的に照らして不適当と認められる、任命権の終局的帰属者である国民、ひいては国会に対して責任を果たすゆえんではないと認められる場合には…任命しないことも理論上の問題としてできないわけではない」としています。

 田村 この考え方に立つのであれば、任命されなかった6人は、明らかに日本学術会議法の目的に照らして不適当であると総理大臣が判断した。これしか総理の裁量の余地はないということになる。

 官房長 任命権は憲法15条を前提としている。

 質問に答えず、憲法15条を何度も持ち出す内閣府に対し、田村氏は「憲法15条1項に基づいて任命しないという判断は国民、国会に対する責任だと総理も言っている。だけど、国民の中から不適当だと、その理由を示せる人は誰もいないと思う」と述べました。

 田村 憲法15条を持ち出すのはやめるべきだ。明らかに不適当であるという理由を示すべきだ。

 官房長 人事の詳細についてはお答えを差し控える。

 田村 憲法15条1項は、国民主権にかかわる問題です。明らかな理由をこの委員会に文書で示すことを要求します。

官房長 推薦の通りに任命しなくてはならないということまでは言及されてない

田村氏 推薦された全員を任命。拒否はしない。一貫した政府答弁

 田村氏は、政府の「形式的任命」について質問。1983年、日本学術会議の会員について、学者による選挙制度を廃止し、推薦に基づく内閣総理大臣の任命とするという日本学術会議法改定法案の審議で、政府が繰り返し「形式的任命」と発言していたと指摘しました。

 田村氏は「形式的任命」が繰り返された理由について、政府・自民党が、日本学術会議は偏向しているとか、政府の方針に反する内容を国民にアピールしているなどと攻撃し、学術会議の「体質改善」と称して、会員の公選制を廃止し、推薦に基づく任命制が提案されたという経緯があるからだと指摘しました。

 その上で田村氏は、任命制を採ることで、戦前の弾圧事件の滝川事件のように人事を通じた監督が行われ、日本学術会議の独立性や学問の自由が脅かされるのではないかという危惧から何度も質問があり、そのたびに政府は、そういう心配はないと「形式的任命」という答弁を繰り返したと主張しました。

 田村 今回の任命拒否は、83年の政府答弁を覆す行為だ。

 官房長 形式的な発令行為との発言があるのは承知しているが、必ず推薦の通りに任命しなくてはならないということまでは言及されてない。

 田村 違います。83年の会議録は、推薦に基づき総理大臣が任命する、それは形式的任命・形式的発令行為であり、推薦された全員を任命する。拒否はしない。一貫した政府答弁です。国会会議録というのは、国会と国民に示された条文解釈そのものです。

 田村氏は、推薦されたものを任命拒否することはあり得るという日本学術会議法の解釈を示す文書の存在を質問しました。

 木村陽一内閣法制局第一部長 指摘されたような義務的任命であるのかどうかという点について明瞭に記載したものというのは、私が知る限り見当たりません。

官房長 職務の独立性は保障されている

田村氏 形式的でなく裁量権を持って任命の適否を判断すれば学問の自由が保障されなくなる

 田村氏は、該当するのは前述の高辻法制局長官の答弁だけだと指摘。高辻氏の答弁は極めて限定的で、「推薦通り任命すべき義務はない」という議論とは全く違うと主張しました。

 田村氏は、形式的任命は学問の自由の保障そのものに関わると中曽根康弘首相(当時)が明確に答弁していると指摘しました。

 田村 今後この学術会議は、例えば他の諮問機関のような形に変わっていくのかと質問したことに、中曽根総理はどう答弁しているのか。

 官房長 当時の中曽根総理大臣が「政府が行うのは形式任命にすぎません。したがって、実際は各学会なり学術集団が推薦権を握っているようなもので、政府の行為は形式的行為であるとお考えくだされば、学問の自由・独立というものはあくまで保障されるものと考えております」と答弁をしています。

 田村 政府の行為、総理の任命は形式的行為・形式的任命である。だから学問の自由・独立は保障される。逆の言い方をすれば、形式的でなく裁量権を持って任命の適否を判断すれば、学問の自由が保障されなくなるという答弁です。憲法23条に学問の自由が規定されている、だからこれまでは形式的任命、推薦の通りに任命が行われてきたということではないんですか。

 田村氏の追及に、大塚氏は「あくまでも職務の独立性というものは保障されており、この任命うんぬんによる規定とは別物である」などとまともに答弁できませんでした。

田村氏 言論の自由につながる民主主義の根幹

 田村氏は、形式的対応とは異なる対応をして学術会議の人事への介入を始めたのは2016年からで、安倍政権が立憲主義を踏みにじる安保法制を強行し、これに多くの科学者が憲法違反だとの見解を示した15年の後だと指摘しました。

 田村 学術会議をめぐる歴史的な経緯を見ても、こうした学者や学術会議の動きと、今回の6人の任命拒否を切り離して考えることはできません。学問の自由が脅かされている。それは科学者だけでなく、国民全体の言論の自由をも脅かす道につながる。政府の方針に賛成の意見も、批判的意見も、科学的知見から自由に行われる。それが学問の自由であり、言論・表現の自由であり、民主主義の根幹です。大変重大な問題です。官房長官および総理の出席による国会質疑を求めて質問を終わります。


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