2020年9月30日(水)
主張
消費税増税1年
暮らし支える減税を決断せよ
安倍晋三前政権が消費税の税率を8%から10%に引き上げてから10月1日で1年になります。景気が下り坂に入った時期に強行された消費税増税は、経済を急激に冷え込ませました。いまの日本経済の危機的な状況を招いた原因は、新型コロナウイルスの感染拡大だけでは説明できません。暮らしと経済を立て直すために、消費税率を緊急に5%に引き下げることをはじめ、思い切った経済対策に踏み切るべきです。
景気後退下での大失政
2019年10月の消費税率引き上げは、安倍政権下での14年4月の5%から8%への引き上げに続き、2回目のものでした。
日本経済は8%増税で長期にわたる不況が続き、米中貿易紛争による世界経済の悪化もあらわになる中、10%増税を行えば取り返しがつかないとの警告が相次いでいました。ところが安倍政権は、「戦後最長」の景気拡大が続いていると主張して、増税を強行しました。しかし景気拡大は“虚構”で、増税の1年も前の18年10月に景気拡大局面が終了していたことを、政府は今年7月末、公式に認めました。増税が経済失政であったことは隠しようがありません。
安倍政権は増税にあたって「万全」の対策をとるとして複数税率の導入やキャッシュレス決済へのポイント還元を行いました。しかし、負担軽減や消費拡大の効果はありませんでした。
消費税の10%増税後、消費不況が顕在化し、国内総生産(GDP)は、昨年10~12月期に大きく落ち込みました。それ以降GDPは今年4~6月期まで、3四半期連続でマイナスです。4~6月期は前期に比べ年率で28・1%も落ち込みました。リーマン・ショック直後の09年1~3月期の17・8%減を上回る戦後最悪の下落幅になったのは、消費税増税で弱体化していた経済に、コロナが追い打ちをかけたためです。
ノーベル経済学賞を受賞した経済学者ポール・クルーグマン・ニューヨーク市立大学教授は最近出版された『コロナ後の世界』の中で、日本の消費税について「はっきり言って増税はすべきではありませんでした」と指摘し、経済政策の転換の必要性を語っています。
安倍政権の2回の消費税増税の際、官房長官として内閣のカナメにいたのが菅義偉首相です。安倍政権の失政の責任を免れることはできません。しかも菅氏は、消費税は「社会保障の貴重な財源」だと述べて税率引き下げを拒否するだけでなく、将来の増税についてまで発言しています。消費税頼みの政治では、暮らしも経済もますます破壊されます。
世論と運動を強める時
コロナ禍のなか、経済は休業者や失業者が増え企業の倒産や廃業も相次ぐなど、いよいよ底なしの様相です。暮らしと経済を支えるには、コロナ対策と並行した、消費税率引き下げなどの抜本的な経済対策が不可欠です。「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」(市民連合)は次の総選挙に向けた野党への要望で「消費税負担の軽減」を求めました。
消費税の5%への緊急減税が必要です。大企業や富裕層に応分の負担を求めて財源を確保する税制改革を進めることが重要です。消費税減税の実現に、世論と運動を強める時です。