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2020年9月25日(金)

野党共闘から「資本主義の限界」まで

BS日テレ「深層NEWS」 志位委員長、大いに語る

 日本共産党の志位和夫委員長は23日夜放送のBS日テレ番組「深層NEWS」に出演し、菅義偉新内閣にどう対峙(たいじ)していくかや、野党共闘などについて語りました。司会は右松健太キャスターと久野静香アナウンサー、コメンテーターは飯塚恵子・読売新聞編集委員、ゲストは中北浩爾一橋大学大学院教授です。


米中対立――どの国であっても覇権主義を許さない立場が大切

 最初に、トランプ米大統領が国連総会で、新型コロナウイルスの拡大で中国を批判する演説を行ったニュースが紹介され、米中対立をどうみているかを問われました。

 志位氏は、中国の初動対応で明らかな問題があったとして、情報を世界に伝える点での問題や、警鐘を鳴らした医師などを弾圧したことに触れ、「事実関係を検証することが必要です」と指摘。一方で、米国が、世界保健機関(WHO)脱退を通知し、「中国ウイルス」と地名をつけるルール違反をしていると批判し、次のように語りました。

 志位 双方に問題があって、米中という二つの大国が協調しなければならないときに、覇権争いを繰り広げるのは本当に残念なことで、私は、両国にコロナの問題での協調をしっかりやるべきだと求めたい。

 右松 そのはざまで日本政府はどのようなスタンスをとるべきか。共産党はどう思っているでしょうか。

 志位 私は、相手がどんな国であっても、覇権主義――経済的覇権主義に対しても、政治的・軍事的覇権主義に対しても、「間違いは間違い」だときっぱり言う外交が必要だと思うんです。

 米国の軍事・経済の覇権主義はずっと前からですが、トランプ大統領のもとで「一国主義」という形でよりひどくなった。

 一方、中国も南シナ海・東シナ海で、力による現状変更を現に進めています。これは本当に許されないルール違反、覇権主義です。

 どの国であっても、覇権主義はよくないと、道理をもって説く自主・自立の平和外交をやるべきです。日本政府は両方に対して言うべきことを言っていないと思います。

米中の国内体制の違い、覇権主義の現れについて

 中北氏が、米国内でトランプ大統領への批判ができるのに対して、中国内では批判ができないと指摘。「共産党は綱領の中で、アメリカが世界平和の最大の脅威だと書いていて、たしかにこの前の綱領改定で中国に対する批判を強めて覇権主義・大国主義だときちんと批判されているが、でもやっぱり批判の矛先はどちらかというとアメリカに向いている。体制の全体を見ると、トランプ大統領はめちゃくちゃかもしれないけど、トランプ大統領を批判できる体制をもっている米国をもうちょっと高く評価してもいいのではないか」と質問しました。

 志位 政治体制の面でいえば、中国の政治体制はひどいです。まったくの人権侵害、人権抑圧をやっている。香港、ウイグルに対する対応がそうです。重大な人権問題は国際問題ですから、国際的な批判がきちんと必要です。これは米国(の体制)とは違う。

 ただ米国では人権問題が問題でないかというと、構造的な人種差別の問題があります。やはりこれも批判されるべきだと思いますが、たしかに米国では選挙によって選ばれる。

 ただ世界に対する覇権ということで見た場合、世界中に軍事基地を置く。ヨーロッパ、日本、韓国、オーストラリアに置く。軍事的プレゼンス(存在)をもって、世界にいつでも介入できる体制をもっているのは、米国一国だけなんです。ですからそれを批判している。

 中北 それはわかるんですが、現状変更をしようとしているのは、どちらかというと中国じゃないですか。例えば、尖閣諸島に中国軍が軍事侵攻した場合、共産党が連合政権に入ったら、米国に安保条約に基づいて出動を求めるのかどうか。

 志位 現瞬間だけをみると、中国の方がアグレッシブ(攻撃的)に覇権を振るっていると思います。ただ米国の方に問題がないかといったら、世界中の同盟国に「もっと金をよこせ」「駐留経費を何倍にしろ」と圧力をかけるわけです。それぞれの問題をきちんと見ていく必要がある。

 中北 尖閣の問題はどうですか。

 志位 これは私たち野党連合政権をつくった場合に、安保条約にどう対応するかについて答えを出していまして、それは2015年につくられた安全保障関連法を廃止して、前の法制に戻るということです。ですから、集団的自衛権の行使はやらない、憲法解釈では(集団的自衛権が)違憲というところに戻す。前の法制(に戻る)という点でいえば、仮に日本が有事という事態になった場合は、安保条約第5条で対応する。

 中北 米軍に出動を求めることに、共産党も賛成する?

 志位 政権としては(第5条での)対応を求めるということです。

ASEANのような平和の地域協力の枠組みを北東アジアに広げる

 この中で飯塚氏は、トランプ大統領が世界中の基地を撤収する方向に入っていると指摘。「世界は、ロシア、中国、イランとかが逆に仕掛けてきて、地域の不安定要因になるのではないか。むしろそっちで結構懸念している人たちの方が多い。世界中に基地を置いて、覇権を目指しているというのはちょっと状況が変わってきているのではないか」と問いました。

 志位氏は、トランプ大統領のもとで一定程度軍隊を撤収する動きも出ているとしたうえで、「しかし一番の中核部分は残します。それから日本からは引かない。むしろ『金をよこせ』と。それはヨーロッパの同盟国に対してもやるという形での覇権が現れている。いざというときには軍事力の行使をトランプ大統領のもとでやっているわけです。中東に対する軍事力の行使もやった。こういうことをやっているのは米国です」と語りました。これに対して飯塚氏は「そういう力がないと、力の空白が生じて、もっと不安定な世界になってしまうのではないか」と質問し、志位氏は次のように答えました。

 志位 私はそう思っていません。世界の中で今、地域の安定がしっかり保たれている地域を一つ上げるとすると東南アジア、ASEAN(東南アジア諸国連合)です。ASEANで、軍事同盟に入っている国はないんです。それでもTAC(東南アジア友好協力条約)という、あらゆる問題を平和的に解決するという条約を結んで、何でも話し合いで解決して、平和を保っている。なかなか米国や中国の介入があって難しいんだけれど、それでも大国の介入を排して、自主的・平和的な共同体をつくっています。そういう方向に向かっていくのが世界の未来だと思います。

 飯塚 ただ日本が自主・自立と言っているだけで、ことは終わらないというか、日本は第3の経済大国ですし、もっと積極的に働きかけないといけないんじゃないですか。

 志位 私は、ASEANのような平和の地域協力の枠組みを北東アジアでもつくるという構想を持つべきだと(思います)。われわれは「北東アジア平和協力構想」を提唱していますが、北東アジアに関連する六つの国=6カ国協議を構成している国で北東アジア版のTACを結ぶ――米国、ロシア、中国、韓国、北朝鮮、日本が入る。この六つであらゆる問題を平和的話し合いで解決するTACのような規範をつくって、ASEAN型の流れを東アジア全体に広げるということを提唱しています。

菅新内閣――行き詰まった「安倍政権の継承」では未来はない

 話題は、発足して1週間になる菅内閣に。菅内閣の顔ぶれや、全体的をどう見るかについて問われ、次のように語りました。

 志位 全体的に見れば、安倍政治が続いている、“安倍政治パート2”という感じです。(菅首相)ご本人も「安倍政権の継承」が最大の看板ですし、顔触れも20人のうち4分の3ぐらい、安倍政権の閣僚だった方が占めている。まさに継続という感じがします。

 では安倍政権が最後どうだったのか。私は、いろいろな点で行き詰まっていたと思います。

 たとえば「アベノミクス」といいますが、さっぱり国民の暮らしにいかないわけです。実質賃金はずっと下がる、非正規雇用は増える。

 外交でも、米国にも、中国にも、ロシアにも、覇権主義に対してものの言えない外交で、みんな行き詰まっていた。

 「森友」「加計」「桜を見る会」も説明がつかない。政治モラルの崩壊が起こり、国民の批判に対するまともな答えがない。

 新型コロナの問題も、感染がうまくコントロールできないで、行きあたりばったりを繰り返して批判をあびた。

 ですから行き詰まっていたものなんです。それをそのまま継承するという。私は、行き詰まったものを「この道しかない」といって継承するというのは、本当に未来のない政党だと思います。

 これまでの自民党だったら、ここまで行き詰まったら、多少目先を変えて、違った人を出したものです。田中角栄さんの後の三木武夫さんみたいな。そういう幅もなくなったという感じがします。

暮らしに役立つデジタル化は賛成だが、菅内閣の動きは二つの問題点が

 その上で、菅内閣が目玉政策として打ち出しているデジタル庁の設置や、「縦割り行政の打破」をどうみるかを聞かれました。

 志位 デジタル庁そのものはまだできていませんから、コメントは難しいですが、デジタル化は技術革新ですから、国民の暮らしに役立つデジタル化は、当然、大いにやるべしという立場です。

 ただ政府の動きを見ていまして、二つ問題があると感じています。

 一つは、菅首相が今日の政府の会議で、「マイナンバーカードの普及を一気呵成(かせい)に進める」とおっしゃった。つまり、普及の進まないマイナンバーカードを事実上強制的に取得させようという動きになっているのではないか。この間の動きを見ても、健康保険証、運転免許証をひも付けする。あらゆるものをひも付けしていく。こうなるとマイナンバーカードはもともと、任意取得が原則だったわけですが、事実上の強制取得になってしまう。そこに、あらゆる個人情報が全部圧縮されて詰め込まれることになりますと、個人情報の侵害という問題が出てくると感じます。

 それからもう一点は、なぜ日本でデジタル化が遅れているのかという、そもそも論の問題です。(グラフを示して)これは2020年版の総務省の「情報通信白書」です。サービスアプリケーションの利用にあたって、パーソナルデータを提供することについての不安です。一番左が日本で、「とても不安」「やや不安」を合わせると8割ですよ。

 右松 合わせると8割を超えているということなんですね。

 志位 8割です。米国、ドイツ、中国と比べても一番高い。一番不安だということです。

 これは、はっきり言って政府の信頼がないということです。「森友」「加計」「桜を見る会」、どの問題をとっても、情報の改ざん、隠ぺい、虚偽答弁をやっているわけです。「こういう政府に自分の大事な個人情報を預けて大丈夫だろうか」と、行政に対する信頼がない。

 やはり、デジタル化を進めようと思ったら、国民に信頼される政府にならなかったら進みません。無理やり、いろんなものをひも付けしてマイナンバーカードを強制的に持たせても進まない。信頼される政府にしないとだめだと言いたいです。

マイナンバーカード――始まりは社会保障切り捨て狙う財界の旗振り

 これに対して右松氏は、「マイナンバーカードを事実上強制的に取得させるのはいかがなものか。ただ、広く社会保障の整備をするとか、いわゆるセーフティーネットを広げていく、共産党の格差をなくしていくといった政策に、一つの手段としてマイナンバーカードがあると考えた場合、強く批判するものでもないのではないでしょうか」と質問しました。

 志位 マイナンバーカードの最初がどこから始まったかといいますと、財界の旗振りで始まった。その旗振りは、社会保障の負担と給付の関係をパーソナル・個人で全部洗い出そうではないか。つまり、給付に対して負担が少なすぎる、あるいは、負担に対して給付が多すぎる、これを削っていこうという、社会保障を削っていく話なんです。ですから、これは社会保障を良くしていくという話ではない。

 飯塚 いま、マイナンバーを進めようと言っている一番大きな理由は、コロナ対策の特別給付金10万円を配るときに、非常に遅いということがあって、カードが必要だという議論になっている。当初の議論はそうだったかもしれませんが、このご時世でデジタル化を進めるのは、遅すぎるくらいだと思うのですが。

 志位 私は、暮らしに役立つデジタル化は進めるべきだと思います。例えばICT(情報通信技術)を教育に入れていくとかは、やはりある程度必要です。(対面授業と)置き換えたらだめですけれど。

 それからオンライン診療も、一定程度、条件をつけなければだめで、対面診療と置き換えたらだめだけれども、コロナのもとではある程度、緊急策としては必要だと思います。初診までオンラインになってしまうと、いろんな問題が出てくると思いますが。

 いろんな分野でデジタル化していくというのはどんどんやったらいい。ただ、それがマイナンバーカードなのかというのは、本当に疑問であり、問題です。

内閣支持率――矛盾をはらんでおりもろいもの

 次いで、世論調査で菅内閣に対して高い支持率が出ていることをどう見るかが議論になりました。

 志位 過去の政権交代した後の最初の支持率を見ますと、悪いところで5割、普通6割、そして7割ということですから、6~7割というのは、政権が代わって、新しいことに対する期待が一つあると思います。

 同時に「読売」の調査を拝見しますと、支持の理由として「他に良い人がいない」というのが一番多い。これが30%。だからかなり消極的なものではないかなと思います。

 それともう一ついうと、矛盾をはらんでいるということです。

 右松 矛盾?

 志位 たとえば、「共同」でも「朝日」でも(世論調査で)、「森友」「加計」「桜」について解明すべきだというのが5~6割で、多数なんです。「読売」の調査を拝見すると、その設問がないんですけれども、「麻生さんの再任をどう思いますか」という質問に「評価しない」が53%。やはり、文書改ざんの責任者が再任するのは納得いかないというのが多いわけです。

 このように、「疑惑にふたをするような政治でいいのか」というのも、同じ世論調査で出ているわけです。ここには矛盾があるわけです。菅首相はそういう疑惑に全部ふたをしようとしているわけですから。矛盾をはらんだものでもろいと思います。

 飯塚 今の政権で、とりあえずでも4分の3の人たちが支持するといっているのは、ちょっとご祝儀ではないかなと感じますけれども。

 志位 これからたたかいがいのある数字だと思ってみております。

 飯塚 そうですね。これから何をするかですよね。

首相指名選挙――政権交代をめざしての他党への投票は今回が初めて

 議論のテーマは、衆院解散・総選挙にむけた野党の共闘に移りました。右松氏は、首相指名選挙で、日本共産党が立憲民主党の枝野幸男代表に投票した理由や、22年ぶりに他党の代表に投票したことを質問しました。

 志位 これは、この5年間、野党共闘をやってきまして、3回の国政選挙を一緒にたたかったという経過があるんです。

 そういうなかで、枝野代表から、「菅政権を倒し政権交代を実現するために連携していきたい」と首相指名選挙での協力要請がありました。そこで私は、「共闘をさらに進めることを願い、野党連合政権をつくっていくという意思表示として投票する」ということで、投票でああいう行動をとりました。

 22年ぶりといいますが、22年前は政権交代の話し合いがあって入れたというわけではないのです。あの時、菅(直人)さんだったのですが、野党が参院で多数になっていたなかで、参院で野党から首班(首相)をぜひ指名しようという動きになりまして、一致点として、菅さんが総理大臣になった場合には、すぐに解散・総選挙で信を問うという一点だけ確認をして、投じたということです。ですから、今回のように政権交代を協力してやっていこうということで投じたのとは、まったく違うのです。今回の対応は本当に初めてのことです。

 右松 初めてのことで、連合政権への意思表示ということですが、タイミング論でいいますと、明らかに(自民党の)菅さんが選ばれるタイミングでやるのは早すぎるのではないかという議論があります。

 志位 いま出していくことが、先々のわれわれの行動の幅をつくっていくということです。

野党連合政権――一致点で運営し、不一致点は持ち込まない

 これに対して中北氏は「22年前に比べて選挙協力などは深まっていますので、本気度は圧倒的に今回の方が強いと思う」と述べました。一方で、野党に自公政権を倒すまでの合意があるものの、野党連合政権をつくるところまでは合意がないのが現状だと指摘し、立憲民主党の議員から「共産党とは外交・安保政策が、基本政策が違いすぎるので、連立政権は無理だ」という声も出ていると紹介。「現実に立憲民主党の中でもそういう空気が強いと思います。どうそれを突破していくのか。どうやって一緒に連合政権をつくるか。共産党は綱領で安保条約の廃棄という主要な政策で、立憲民主党も認めがたい部分をどう乗り越えていくのか」と問われ、次のように語りました。

 志位 たしかに野党連合政権を一緒につくろうというところまでは合意に至っていません。政権交代を協力してやろうというところまできているんだけど、その先、もう一歩、進む必要があるんです。これは事実で、努力目標なんです。

 いま言われた点で、日米安保条約について、私たちは国民多数の合意で廃棄をしていく、日米関係は対等・平等の友好関係にしようということを綱領の大方針にしています。

 ただこれは、(連合)政権に持ち込んだら一致しません。これをどうするかについては、安保条約の廃棄を、政権に求めたり、持ち込んだりしない。では、この問題をどこまでやるか。憲法違反の安保法制の廃止はできる。これは一致しているから、ここまでは政権でやる。安保法制を廃止して、安保法制以前の条約と法制で対応する。それでいいとわれわれは割り切っています。

 ですから安保条約の問題、あるいは自衛隊の憲法判断の問題などは、日本共産党として独自の立場を持っていますし、これは党としては変えないけれども政権に求めない。政権としては、安保法制の前の条約と法制で対応する。

 中北 ただ政権をとるといろんなことが生じて、たとえば2001年、同時多発テロが起きました。当時の民主党は、特措法による自衛隊のインド洋派遣については賛成しました。そうした事態が生じたときに、日米同盟を尊重するかたちで米国をサポートするのか、しないのか。その点について判断が分かれてくるんじゃないか。

 志位 先ほど言ったように安保条約の運用については海外派兵になるような集団的自衛権はダメという立場ですけれども、その前の条約や法制で対応する。ですから(安保条約)第5条の事態が起こった時には5条で対応するところまではっきり言っています。安保条約についても政権としてはそういう範囲内で対応する。

 自衛隊についても、われわれは憲法違反という立場ですけれども、一致しませんから、政権として自衛隊は合憲という立場で対応する。

 右松 たとえば先ほどの01年の場合だと政権が賛成するとしたら共産党も賛成をしてくるのですか。

 志位 そういう個々の場合にどう対応していくかは、あらかじめよく相談していきたい。

野党連合政権の実現へ政治決断を

 右松 そこで折り合えるかどうかの不安が立民サイドにあるんじゃないでしょうか。

 志位 たしかに不一致点があります。違う政党ですから。

 とくに安保条約、自衛隊、天皇の制度、社会主義・共産主義はやはり違うわけですから、それについてどう考えるか。私たちは一致点でしっかり政権運営して不一致点は持ち込まない。一致しないものについての処理についても、できるだけみんなが合意できる一致点を探っていこうということです。

 私たちが不一致点にどう対応するかということについて文書をつくりまして、各党にお渡しして、「心配にはおよびません」という話はこの間ずっとしてきたところなんです。そういう努力をするなかで、「政権の協力もやっていかなくちゃいけないな」という声も起こってきています。そこは努力しだいです。

 また、日本共産党が入らないと、立憲民主党などだけでは多数にならないという場合もあり得るわけです。共産党抜きで政権をとれるかという問題があります。そこはぜひ政治決断してもらいたいと、他の野党のみなさんにはお話ししています。

 その上で、衆院解散・総選挙の時期について議論になりました。

 志位氏は「解散・総選挙を決めるのは政権の側ですから、いつあっても対応できるような準備をしなくちゃいけないというのは基本です。ただ一つ言いたいのは、国会での議論抜きの解散はダメです。国会でちゃんと所信表明演説をやり、衆参の代表質問をやって、予算委員会をしっかり時間とって、国政の基本問題――コロナの問題、内政・外交の基本の問題についてじっくり国民の前で議論して、争点をはっきりさせて解散するというのが絶対に最低必要だと言っています」と述べました。

解散・総選挙――政権合意、本気の共闘でひっくり返せる

 また右松氏は、世論調査で、野党の支持率が伸び悩んでいることに触れて、「現時点でたたかう状況になっているのか」と質問し、志位氏は次のように述べました。

 志位 これはやはり、野党の側が本気になって政権をとる、政権を担うという決意が見えなかったら、私は野党に対する期待が広がっていかないと思います。

 自公政権を倒すと言うだけじゃなくて、野党としてまず「政権を担いますよ」と、政権の合意をしっかりやる、これが一つ。

 それから、その政権が実行する公約です。本当に国民の暮らしを守り、民主主義を回復することや、平和の問題も含めて、地に足をつけた魅力ある政権公約をしっかりみんなで練り上げること、これが二つ目。

 そして選挙協力。

 この「3点セット」が必要なんです。選挙協力だけやっても、私は国民の中で期待を広げることはできないと思うんです。そこをきちっとやっていきたいというのが目下、努力中です。

 この中で、野党の中での選挙区調整が話題になりました。久野氏は、衆院の過半数は233議席が必要だと指摘。立憲民主党が現職107人で、200人の候補者擁立を目指すなど各党の擁立状況を紹介したうえで、日本共産党は現職議員12人、小選挙区で108人を擁立する予定(23日時点)だとして、「野党で過半数を狙えるか」と質問しました。

 志位 やはり狙わなきゃだめです。小選挙区での野党統一、一本化は非常に大きなカギになってくると思うんですが、私と枝野代表との党首会談で合意したのは、与野党が競り合っている選挙区を中心に一本化しようということなんです。全部で一本化するという合意ではない。そう言いますのも、やはり与党議員が圧倒的に強いところもあるわけです。そういうところは、比例票を掘り起こすという問題もありますから、野党はそれぞれ(候補者を)立てていこうと。そういう協議をやっていかなくてはいけない。競り合っているところを一本化して、本気で共闘をすれば、ざっと計算しますと100くらいの小選挙区でひっくり返せる。

 そうすると(首相指名選挙で)枝野さんに入れた票は衆院で134票でしょ。過半数に届くんですよ。競り合っているところを中心に統一候補をつくって、たたかう。それをやれば勝機が出てくると思います。

 ただ選挙協力だけではだめです。政権を担う覚悟がないとだめです。総選挙は政権を選ぶ選挙にもなる。その時に一体どうするのかという覚悟が示されないと、自民党の側は「選挙協力だけやって政権はどうするのか」と、絶対に矛盾をついてきます。やはり“一緒に政権をとろう”という覚悟が決まってこそ、選挙協力も生きてくるという関係だと思います。

消費税、原発、辺野古、新自由主義からの転換などでも一致

 飯塚 でも自衛隊とか、安全保障とか、天皇制とか、共通見解を得られないで統一候補を立てるとか、野合だと言われますよ。

 志位 そんなことはありません。たとえばさっき言った安保条約の問題でも、私たちは綱領の大方針としては安保条約廃棄ですけど、しかし今すぐやるのは安保法制をなくすと(いうことです)。

 飯塚 要するに時系列的に、先の話だと整理するんですか。

 志位 そうです。そういう整理をしています。いますぐ必要なのは、安保法制を廃止して集団的自衛権は行使できなくする。これが目下の緊急課題です。自衛隊を海外派兵して、他の国の人を殺したり、あるいは戦死者が出ることがないような日本にするのは大仕事ですから。これをまずやっていこうということです。

 ですから、あらゆる分野で、緊急の課題と中長期的な課題をきちんと仕分けすれば、無理な話じゃ全然ない。

 飯塚 相当うまく説明しないと、ちょっとわかりにくい感じがします。

 志位 大丈夫です。実は、この前の参院選挙をたたかう場合にも、市民連合のみなさんと野党各党で13項目の合意をやったんです。その中には安保法制の話だけではなくて、たとえば消費税、原発、辺野古の基地をどうするか、これまでなかなか一致にならなかった問題の多くが一致しました。

 それから大きな方向として最近、大事だと思っているのが、「新自由主義から決別しよう」「自己責任を押し付けるようなやり方じゃなくて、暮らしを守る政治の責任を果たすような方向へ転換していこう」ということも野党共通の方向になっていることです。

「資本主義の限界」――根本的に解決するために未来社会を展望する

 ここでテーマは、ポストコロナの社会はどうあるべきかに進みました。右松氏は、7月に行われた党創立98周年記念講演で、志位氏が、新型コロナの感染拡大のもと、「資本主義の限界」と、社会主義への希望が語られていると指摘したことに触れて、日本や世界が、資本主義から共産主義に進むべきだと考えているのかと聞きました。

 志位 すぐにそこに行こうというプログラムではないんです。日米安保条約の問題も、国民の暮らし中心の経済政策への転換も、資本主義の枠内でまずやっていこうというのが綱領です。ですから、すぐにそこに行こうという話ではないんだけども、コロナ・パンデミック(世界的大流行)のもとで「資本主義の限界」が言われるようになってきた。とくに格差の拡大、地球的な規模での環境破壊という二つの矛盾が噴出して、“この体制でいいのか”という問いかけがされるようになった。それを問題にして述べたんです。

 飯塚 おっしゃるように、資本主義の限界について論陣を張る人が世界でも増えてきたと思います。先ほどの7月の講演で志位さんは、社会主義・共産主義に進むことにこそ、いま人類社会の抱えている焦眉の問題の根本的解決の展望があるとおっしゃって、大いに広げようではありませんかと呼びかけていますね。一般的な国民からすると、いきなり社会主義・共産主義を大いに広めましょうと言われると、こんなにはっきり打ち出してしまって、ついてこられるのかなと感じてしまうんですけれど、大丈夫ですか。

 志位 講演ではいきなりそこにいったわけではなくて、まずコロナ・パンデミックで新自由主義が破綻した。すべてを市場原理にまかせて社会保障をどんどん削っていく、公衆衛生・保健所を削っていく。こういうやり方が成り立たなくなって転換が求められているというところを第一に押し出したんです。これは野党で共有できる立場だと思うんですよ。

 そのうえで、さらに突っ込んで考えていった場合、格差拡大の問題、地球的規模での環境破壊の問題という二つの大問題が、資本主義のもとで必然的に出てきて、(この体制のもとでは)根本的には解決できない問題だということを提起したんです。

 飯塚 でも共産主義を広げましょうというのはだいぶ十段跳びではないですか。

 志位 (講演では)格差の問題も、環境破壊の問題も、まず資本主義の枠内で最大限の解決をしなければならないと言っています。同時に、(飯塚氏が)読み上げていただいたように根本的な解決は、それを乗り越えたところにあるんだという展望を語ろうということを言ったのです。

 たとえば、なんでこんなパンデミックが起こったのか。厚生労働省によれば、この30年くらいに30の新しい感染症が出現している。なぜ起こるのか、資本主義のもとで森林がどんどん伐採される、地球の温暖化が進む。そういう中で、動物が持っていたウイルスが人に移ってくる。それによって新しい感染症が生まれてくると指摘されています。

 こうして資本主義のもとでの利潤第一主義で、環境を壊していくというやり方はもう限界だという声が聞こえてくるわけです。

 それでは、格差や環境の問題を解決するうえですぐに社会主義に進むか。そういうことを言っているんじゃないんです。まずは資本主義の枠内で地球環境の問題に最大限の対処をする。格差の問題に対処する。しかし根本的に解決しようと思ったら、利潤第一主義を乗り越える必要があるんじゃないかという展望を大いに話そうということを言っているんです。

 飯塚 たしかにコロナをきっかけに資本主義と社会主義の話が出てきたのは面白い論点ですね。

共闘の成功・前進とともに、共産党の躍進めざす

 議論の最後に、中北氏は「緊張感がある政治を取り戻すためには野党がどうやって連合政権をつくるか。これ自体すごく重要な点で、共産党がそれを真剣に取り組もうとしているのはよくわかります」と語りました。一方で、選挙協力のもとでも共産党が意外に伸びていないとして、「独自性と野党共闘をどう調和させていくのか。ここから共産党はかなり厳しい試練をどうやって乗り越えていくかが問われてくるなと印象を持ちました」と述べました。

 志位 いま言われた点はとても大事な点で、われわれは共闘を成功させるために全力をあげますけども、同時に、共産党自身が伸びていかないといけない。両方やらなくちゃいけないと思うんです。そのためには共闘の一致点を大事にするけども、党の独自性、先ほどいった社会主義・共産主義というのは、まさにわれわれしか言っていないものですし、中国やソ連と全く違うものを目指しているわけですから、共産党の独自の魅力や良さを大いにアピールしていきたいと思います。


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