2020年9月22日(火)
中学教科書採択 育鵬社激減
侵略美化 歴史 6分の1
改憲誘導 公民 12分の1
7~8月に各地で行われた中学校教科書の採択の結果、侵略戦争を正当化する育鵬社の歴史教科書が、来年度は現在使われている冊数の6分の1に激減することが21日までに明らかになりました。歴史をゆがめる教科書を子どもたちに手渡すなという運動の成果です。子どもを改憲に誘導する同社の公民教科書は現行の12分の1の冊数になる見通しです。
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今年度まで育鵬社教科書を使用してきた地区のうち横浜市や大阪市、松山市など多くの地区が、今回は不採択にしました。同教科書を採択した地区数は歴史が21から6に、公民は19から4に大きく減少しました。
全国の採択結果に基づく「子どもと教科書全国ネット21」の推計(17日)によると、来年度から公立学校で使用される育鵬社の教科書は歴史が約1万200冊、公民が約3400冊です。
私立学校でそれぞれ千数百冊使用される可能性がありますが、それを含めても歴史が1万2000冊程度、公民が5000冊程度です。育鵬社版が占める割合は歴史教科書で約1%、公民教科書では0・5%以下にとどまる見通しです。
文部科学省によると、今年度使われている同社の教科書は歴史が約7万2500冊(占有率6・4%)、公民が約6万1200冊(同5・8%)で、来年度はいずれも大幅に減ることになります。
政治介入、押し返した
侵略戦争美化、改憲誘導の育鵬社教科書が激減したのは、各地で教職員、保護者、住民らが粘り強く運動を続けてきたからです。
現在、育鵬社の教科書を使用しているのは歴史で21地区、公民で19地区ですが、このうち来年度以降も同社を採択したのは歴史で5地区、公民で4地区にすぎません。歴史は安倍晋三前首相の地元である山口県下関市が新たに採択しました。
中高一貫校など都道府県立学校で育鵬社を使用しているのは歴史で8都県、公民で7都県ですが、引き続き採択したのはいずれも4県となり、ほぼ半減しました。東京都と愛媛県は、2001年に育鵬社版の前身にあたる扶桑社版教科書を全国の公立学校で初めて採択して以来、19年ぶりに侵略美化の教科書の使用をやめました。
育鵬社教科書については、自民党が地方議員に指示して同教科書の採択に有利になるような質問をさせるなど、露骨な政治介入を行ってきました。
これに対して「戦争する国」づくりのための教育を狙うものだと批判が高まり、育鵬社教科書の問題点を知らせ、現場の教員の意見を尊重して公正な採択を行うことを求める運動が各地で続けられました。自民党などの政治的介入で使われてきた教科書を市民の力で不採択にしたのです。
教科書採択 次年度から学校で使う教科書を決めることを採択と呼んでいます。小中学校の場合、ほぼ4年に1度おこなわれ、区市町村立学校は全国581の採択地区ごと、都道府県立学校は各教育委員会で決定します。今年は来年度から中学校で使う教科書が決められました。
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