2020年9月20日(日)
主張
ジャパンライフ
「桜」疑惑の幕引き許されない
磁気治療器などの販売預託商法を展開し、破産した「ジャパンライフ」の創業者、山口隆祥元会長ら14人が詐欺容疑で逮捕されました。山口容疑者は、2015年に安倍晋三首相(当時)主催の「桜を見る会」に招かれていました。その際に届いた招待状が顧客勧誘の最大の宣伝材料に使われたことが大問題になっています。ところが、菅義偉政権は「桜を見る会」中止を表明する一方、過去の「桜」疑惑の再調査は拒否しました。国民は、「桜」をはじめ安倍前政権下で噴出した数々の疑惑の解明を求めており、幕引きを図ることは許されません。
首相招待状で被害拡大
山口容疑者らの逮捕容疑は、資金繰り悪化で配当の見込みがないのに、実態を隠して顧客から金をかき集め、だまし取ったというものです。警視庁などの合同捜査本部によると、被害者は44都道府県の延べ約1万人、被害総額は約2100億円に上ります。預託商法をめぐる詐欺事件の被害総額では過去最大級となります。
絶対に曖昧にできないのは、山口容疑者が首相の公的行事「桜を見る会」に招待された経過です。同容疑者に届いた招待状は、勧誘セミナーで使用されたチラシに印刷されました。安倍氏の顔写真と「ご招待状が届きました」というタイトルが付いたチラシは勧誘に大きな効果を発揮しました。「チラシを見て信用した」などと証言する被害者は相次いでいます。
招待状が山口容疑者に届いた15年2月ごろは、ジャパンライフが14年に行政指導を受け、立ち入り検査も日程に上った時期です。早くから問題を追及してきた日本共産党の大門実紀史参院議員は、強引な勧誘への苦情などが増えたのが15年であり、同社が荒稼ぎするタイミングに招待状をわざわざ送ったことは「ただの広告塔」にとどまらず「被害拡大に協力したことになる」と批判します。安倍前首相の責任は免れません。
昨年の国会で安倍前首相は、山口容疑者と「個人的な関係は一切ない」などと主張し、「桜を見る会」への招待の経過を説明していません。日本共産党をはじめ野党の調査などで、山口容疑者の招待状の受付区分番号「60」が安倍前首相の推薦枠だった事実が動かし難くなっているのに、政府は名簿を廃棄したと繰り返し、それを認めようとしません。当時の菅官房長官も「個人に関する情報」などを理由に解明に背を向けました。
税金を投じた政府行事に悪徳商法のトップが首相の名で招待され、それが詐欺被害を拡大させる重大な結果を引き起こしたことへの深刻な反省はないのか。あまりに無責任で、不誠実の極みです。
中止は免罪符にならない
ジャパンライフは政治家とのつながりが数多く指摘されています。加藤勝信官房長官は同社の宣伝資料に使われており、詳しい説明が求められています。
もともと「桜」問題は、安倍前首相らが地元後援会員らを大量に招き公費を使って飲ませ食わせした重大な国政私物化疑惑です。菅首相も16年の「桜を見る会」で別のマルチ企業幹部と一緒に写真撮影しています。来年から開催を中止するからといって、これまでの疑惑を帳消しにできません。臨時国会を直ちに開き、深まる疑惑を徹底解明することが必要です。