2020年9月18日(金)
戦没者の血と骨眠る激戦地の土
沖縄 新基地 埋め立てに使うな
遺骨収集ボランティア代表 具志堅隆松さん
「戦没者の血を吸いこんだ土や石、戦没者の骨を、基地を造る埋め立てに使ってほしくない」―。縦覧期間中の沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設に伴う設計変更申請書によると、沖縄本島南部からの埋め立て土砂の大量採取が予想され、沖縄戦の犠牲者の遺骨が混じる土砂が、同新基地建設に使用される恐れがあります。(小林司)
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「戦没者の遺骨を、軍事基地を造るために海の埋め立てに使うことは許されない。犠牲者に対する冒涜(ぼうとく)だ」―。これまでの約40年間、遺骨の収集や遺族への返還に取り組んできた沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」代表の具志堅隆松さん(66)=那覇市=は強く憤ります。
太平洋戦争末期の沖縄戦を主導していた旧日本陸軍(第32軍)は1945年5月、司令部が置かれていた首里城(現・那覇市)に米軍が迫ると、司令部を放棄して本島南部に撤退を始めました。
第32軍の撤退で、現在の糸満市や八重瀬町などがある南部一帯は地獄のような戦場と化し、多くの住民が巻き込まれ、犠牲者が激増しました。
辺野古新基地建設の従来の計画では、埋め立て土砂の「岩ズリ」の多くを県外から調達し、県内の採取場所は本島北部のみとなっていましたが、変更後は離島を含む県内全域に拡大。仮定している採取量を大きく上回る岩ズリの調達は、県内で可能としています。
県内の地区別でみると南部地区(糸満市、八重瀬町)で岩ズリの調達可能量の約7割を占めています。
南部では現在も多くの遺骨が未発掘で、採石場などで土砂を採取すれば遺骨が含まれる可能性があり、埋め立てに使われることで失われてしまう懸念があります。
戦没者の遺志 踏みつけ
「岩石を壊している現場で遺骨を見つけることは何度もある」と語る具志堅さんは、南部2カ所の採石場で昨年と2015年にそれぞれ1体、遺骨を確認・収容しています。
昨年、遺骨が見つかった採石場では、掘削作業中に突然、縦穴が出現。中からは県外出身の兵士と思われる遺骨が発見されました。縦穴は自然洞窟(ガマ)の一部で、ガマの入り口とみられる部分では、米軍の手りゅう弾の破片や、攻撃の跡が確認されました。
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業者が縦穴に気付かずに掘削を続けていたら、遺骨が粉々になっていたところでした。付近の山では、他にもガマが確認され、遺骨も発見されており、具志堅さんは発掘を続けています。
「骨が含まれていなくてもおびただしい犠牲者が出た地域の土や岩を、戦争に出撃するための基地の建設に使うこと自体が不謹慎で、犠牲者の遺志に背くのではないか。県外出身で、沖縄戦で亡くなった人もたくさんいる。(沖縄の遺骨問題は)全国の遺族の問題でもある」と、具志堅さんは訴えます。
「すみません。どうにか帰れるように頑張ってみますから」―。具志堅さんは発掘現場で、遺骨に向かって手を合わせました。