2020年9月12日(土)
主張
安倍退陣とカジノ
賭博政治そのものを終わりに
カジノを中核とする統合型リゾート(IR)を「成長戦略の目玉」といって推進してきた安倍晋三首相が退陣します。新型コロナウイルス危機の中でカジノは完全に時代遅れのビジネスとなっており、安倍政権のカジノ解禁路線の行き詰まりは明白でした。安倍首相辞任を契機に、カジノ断念を迫るたたかいが求められます。
執着する推進派の政治家
安倍首相辞意表明の8月28日、カジノ誘致に執着している松井一郎大阪市長(日本維新の会代表)は「IR実施法という法律があるから、だれが首相になっても進んでいくと思う」とのべました。
安倍首相後継の最有力候補とされる菅義偉官房長官は4日の民放テレビ番組で、「IRは観光政策を進める上で必要不可欠と考えている」と語りました。
カジノを推進してきた政治家たちは、失速させないため躍起となっています。
安倍首相は第2次政権発足直後の2013年3月、「(カジノは)メリットも十分にある」と国会で答弁し、カジノ解禁へかじを切りました。そして、16年12月にはカジノ解禁推進法を、18年7月にはカジノ実施法を、国民の強い反対を無視して強行成立させました。
しかし、カジノを忌避する国民世論は根強く、カジノ解禁への政府のスケジュールは、遅れに遅れています。国内のIR施設の制度設計を示す政府の「基本方針」決定すら、当初の「今年1月をめど」という予定から、無期限先送りの状態です。
秋元司元内閣府副大臣(自民党離党)らが逮捕されたカジノ汚職事件は、金の力で裁判での証言をねじ曲げようとした証人買収事件にまで発展しました。腐敗と利権の温床であるカジノへの国民の批判はますます強まっています。
さらにコロナ感染拡大が世界のカジノ事業に与えた影響は決定的です。感染拡大の震源地になりかねないカジノは世界各地で閉鎖され、再開後もこれまでのように客をカジノに詰め込む営業はできず、賭博収益がほぼ消失しています。
どこのカジノも対前年比9割以上の収益減少で、世界的なカジノ企業の財務状況悪化は顕著です。1施設につき100億ドル(約1兆円)かかるという日本のIRに投資できるカジノ企業は、事実上見当たらなくなっています。最も意欲的だった世界最大の米ラスベガス・サンズですら、日本からの撤退を表明しました。
巨大な国際会議場、展示場、ホテルやエンターテインメント施設で客を集め、その客をカジノに誘導することで巨額の賭博収益をあげるというIRは、もはや成り立たなくなっています。
広がりみせる反対の運動
これまでカジノ誘致を正式表明した自治体は横浜市、大阪府と市、和歌山県、長崎県です。東京都なども誘致に意欲を示しています。いずれの自治体でもカジノに反対する市民の運動が大きな広がりをみせています。
横浜市では、誘致の是非を問う住民投票条例制定を求める直接請求署名が50万人を目標に、4日から開始されました。
過去のどの政権よりもカジノに前のめりな安倍政権がもたらした異常な賭博政治は、安倍首相の退場とともに、一掃する時です。