2020年9月9日(水)
朝鮮半島最多 5台風上陸
停電・農作物被害
韓国「気候危機は深刻」97%
朝鮮半島を7日から8日にかけて襲った台風10号は、韓国、北朝鮮の両国に道路の冠水や停電、農作物などへの大きな被害をもたらしました。朝鮮半島では8月初め以来、観測史上最多となる五つの台風が上陸。気候変動の影響だとして深刻に受け止められています。(栗原千鶴)
8月5日に、台風4号が北朝鮮に上陸したのを皮切りに、10日に5号、26日に8号、今月2日に9号、そして今回の10号と、台風の来襲が相次ぎました。
韓国メディアによると9号、8号はそれぞれ史上2番目、3番目に強い台風となりました。これまで朝鮮半島への台風の上陸は平均年1回。2012年と19年は4回の上陸となっているといいます。
北朝鮮は、梅雨が始まった7月半ばから朝鮮労働党の機関紙「労働新聞」で、堤防の整備や施設の整備で人命と農作物の保護をするよう全党に呼びかけるなど、大雨への警戒を強めていました。
朝鮮中央通信によると、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長は5日、9号で被害を受けた現場を視察。安全対策の不備を理由に責任者を解任しました。また、7日には朝鮮中央テレビが台風被害の現場から中継や警戒を呼び掛けるなど、これまでにない報道態勢をとり、災害への危機感が強まっています。
韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は7日、「秋の台風が頻発することや人類の日常に新型コロナウイルスが侵入したことも気候変動と無関係ではない」と指摘。「環境問題は先送りできない課題になった」として、22年までの任期中に石炭火力発電所を10基を閉鎖し、再生可能エネルギーの拡大・普及を進める意向を明らかにしました。
市民の間でも、気候変動問題が深刻に受け止められています。
環境市民団体「緑色連合」と民間会社が合同で行った世論調査(8月20~25日)では、97%が新型コロナウイルスの感染拡大や大型台風などを経験し、気候危機が「深刻になっている」と回答。「韓国政府は国連の勧告通り、2050年までに温室効果ガス排出ゼロを実行しなければならない」「再生可能エネルギーに転換しなければならない」と回答した人が、ともに9割に上りました。