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2020年9月1日(火)

性暴力被害者ワンストップ支援センター

コールセンター対応 4分の1

安倍政権が推進

 47都道府県がそれぞれ設置している「性暴力被害者ワンストップ支援センター」の運営時間総計23万4000時間のうち、コールセンター対応が約6万時間にのぼり、全体の4分の1を占めていることが本紙の調査で分かりました。安倍政権は国としてコールセンターの設置を打ち出しています。現場からは「24時間365日化に向けた最大の課題は支援員の確保。処遇の改善を」の声があがっています。


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 本紙は、「性犯罪・性暴力被害者支援交付金」資料(2017~19年度)を情報公開請求し、支援センターの運営について調べました。それによると、24時間運営をしているのは21都府県。このうち、夜間休日業務を業者に委託し、コールセンターで対応している県が10県あることが分かりました。

 導入年度は岐阜県が15年度。広島、徳島の両県が16年度。山口県が17年度。埼玉、新潟、富山、福井、静岡、愛媛の6県が18年度です。

 委託業者については、東京都千代田区に本社のあるダイヤル・サービス社(今野由梨社長)に集中していることが分かりました。同社の塚原雅子営業推進部長は、「単体(1県)では難しいことも5県、10県まとまれば」と話します。同氏の言葉を裏付けるように、国の交付金が創設された17年度にコールセンター業務委託が4県となり、翌年度、10県に広がっています。ただ、その後、増えておらず、頭打ちとなっています。

 委託額の総額は19年度4200万円に膨らんでいます。支援センターの運営費規模が最も大きい神奈川県(24時間運営)の4500万円に匹敵します。

 運営時間でも大きな比重を占めています。10県のコールセンター運営時間は計約6万時間。47都道府県の運営時間の総計約23万4000時間の4分の1に当たります。安倍政権は国として「平日昼間の8時間は自治体の支援センター、夜間休日はコールセンター」運営を来年度にも実施するとしています。これが進めば、全国の支援センター運営の大半をコールセンター業者が握る事態です。

肥大化で質低下の恐れ

 47都道府県に設置している「性暴力被害者ワンストップ支援センター」で、夜間休日のコールセンター業務を10県が業者に委託しています。委託総額は膨らんでいますが、各県の委託額は低く抑えられています。

 国は交付金要綱で24時間運営を行う場合の加算の基準額を決めています。しかし、各県の委託額は一部を除き基準額700万円(19年度)の半分程度です。

 北陸地方のある県では、18年度、最も低い額を提示したダイヤル・サービス社が288万円で受託したものの、19年度は別の業者がさらに低い額を提示し、248万円で受託しています。20年度は業務の人員体制などを審査した結果、ダ社が受託しています。ただ、委託額は依然低く295万円です(20年度の基準額870万円)。

 ダイヤル・サービス社が支援センターのコールセンター業務に参入したのは2015年。岐阜県が内閣府のモデル事業に参加し、同社に夜間休日の相談受付を委託したのが始まりです。

 内閣府のモデル事業報告書によると、「受付は看護師が行い、急性期の産婦人科診療の要否を判断することで、緊急の事案に対応できるシステムを整備」しているとしています。

 その後、同社は「内閣府のモデル事業の実績」業者として各県の受託を広げていきますが、「緊急の事案に対応できるシステム」の検証が求められます。

 内閣府が昨年6月から8月にかけて全国47都道府県の支援センターの支援状況を明らかにする初の調査を行いましたが、そもそもコールセンター業者は調査の対象外でした。この調査では、相談員・支援員(1034人)に処遇を尋ねたところ、「最低賃金以上」が6割、「無給・交通費程度」が3割でした。調査を分析した支援センターの所長や研究者らは、「性暴力被害者支援に関する研修を受けた上で、ボランティアで相談支援にあたる支援員が多くいることがわかった」と指摘。「ボランティアを継続的に活用していく運営は中長期には適切でない。人員体制の拡充を含めた処遇改善を」と提起。「24時間365日化に向けた最大の課題は相談員・支援員の確保」と強調しています。

 ダ社の塚原氏は、「われわれ(コールセンターの相談員)のできることは限られています。被害者支援は現場(支援センター)の支援員の肩にかかっています」と話します。

 性暴力被害者ワンストップ支援センターは相談を受けるとともに、被害者の要望にそって面談し、心身のケアを行います。病院など関係機関への付き添い支援(同行支援)は重要な柱です。支援には長い時間がかかる場合もあります。コールセンターの肥大化は、中長期的な支援の質の低下につながりかねません。


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