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2020年8月30日(日)

主張

米大統領選本格化

変革求める声が政治を動かす

 米国の民主党、共和党双方の党大会で正副大統領候補が正式に決まり、11月3日の投票に向けて激しい選挙戦が本格化しました。米国では新型コロナウイルスの感染拡大で18万人以上が死亡し、経済と人々の生活は苦境に立たされています。警官による黒人への暴行、銃撃が相次ぎ、抗議行動が広がっています。人命と分断・格差、人種差別をめぐり政治と社会のあり方がかつてなく問われる、世界注目の選挙です。

対立、分断あおった4年

 野党、民主党のバイデン氏は候補指名受諾演説で、国家の基本的な義務である「国民を守ることを怠った」とトランプ氏を批判し、大統領に就任したら初日から、連邦レベルでコロナ戦略を実行すると主張しました。

 候補者指名争いで、バイデン氏相手に健闘したサンダース上院議員は、コロナの感染拡大、人種差別、地球温暖化をあげて、「米現代史上もっとも重要な選挙戦」と指摘し、「反トランプ」での「結束」を強調しました。

 一方のトランプ大統領は、ホワイトハウスの敷地内に設けられた会場で指名受諾演説をし、「今年中にワクチンをつくりウイルスをつぶす」と叫んだものの、止まらない感染者、死者の増大と、自身の対策の問題にはふれずじまいでした。警官による黒人暴行への抗議運動に対しては、「暴徒による支配は許さない」「バイデンが当選したら治安はさらに悪化する」と敵意をむき出しにしました。

 政治的経歴がゼロだったトランプ氏は、前回選挙で激戦州を次々とおさえ勝利しました。大富豪に富が集中する一方で、自由貿易の名のもとで雇用が破壊され、国民の多くが経済的苦境に置かれているにもかかわらず、現状を打開できない既存政治への有権者の怒りが背景にありました。アフガニスタンとイラクでの米軍駐留の長期化とそれによる財政難も、トランプ氏はやり玉にあげました。

 しかしこの4年間、トランプ政権は米社会の深い行き詰まりと矛盾を打開する方策を示すどころか、大企業に一層の減税を行うなど格差をさらに拡大させました。安保・外交面では、「アメリカ・ファースト」を強く押し出し、イラン核合意や温暖化防止のパリ協定から離脱を表明するなど国連をはじめとする多国間の枠組み、国際協調に背を向けてきました。シリアやイラクで国際法を無視した一方的な軍事攻撃も行い、核戦力の新たな増強も続ける構えです。

 米国ではトランプ氏が対立と分断を繰り返しあおってきましたが、その一方で変革を求める市民の運動も広がっています。

市民運動反映した政策も

 民主党の政策綱領は、従来の内外路線を踏まえつつも、国民皆保険のない米国で公的な制度を導入するという主張を明記しました。サンダース氏の奮闘に体現された運動の力を示しています。ほかにも、格差是正を視野に入れた最低賃金の時給15ドルへの引き上げ、富裕層・大企業に対する公正な税制、公的な高等教育の無償化や学生ローンの帳消し、パリ協定への復帰などが掲げられました。

 コロナ危機の中、新自由主義からの転換、緊急の気候変動対策、人種差別反対、ジェンダー平等など市民の多様なたたかいが、米国政治を動かしています。


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