2020年8月15日(土)
契約書より命が大切
セブン時短訴訟初弁論
元オーナー「契約解除は不当」
大阪地裁
人手不足などでコンビニエンスストアの24時間営業が困難になり、深夜の閉店に踏み切ったために不当にフランチャイズ契約を解除されたとして、大阪府東大阪市の元店舗オーナーの男性がセブン―イレブン・ジャパンを相手取って解除無効の確認などを求めた裁判の第1回口頭弁論が14日、大阪地裁でありました。男性は意見陳述で「命より大切な契約書などない。24時間365日営業が求められ、オーナーと家族は店に立ち続け、命の危険にさらされている」と訴えました。セブン側は争う姿勢を示しました。(安川崇)
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同社は店舗の明け渡しなどを求めて男性を提訴しており、二つの裁判が併合審理されます。
男性は同市の松本実敏さん(58)。2012年にコンビニ経営を始めました。訴状などによると、がんを患いながら共に店を支えた妻の死去や、アルバイトの退職などから店の人手不足が深刻化。松本さんが1日22時間シフトに入るなどしても解決せず、昨年2月に「このままでは過労死する」として時短営業を始めました。
24時間営業にこだわった本部(セブン本社)からは契約解除と違約金1700万円を提示されたとしています。
時短営業はマスコミに広く報じられました。「社会インフラ」とされるコンビニが、しばしばオーナー家族の過重労働で成り立っている実態が、社会問題化するきっかけの一つになりました。
本部はいったん契約解除を撤回しましたが、昨年末に改めて解除を通知しました。
訴状で松本さんは「契約解除は時短営業への意趣返しであることが明らか」だと指摘。優越的地位にある本部が意に沿わないオーナーとの契約を一方的に解除することは、独占禁止法が禁じる「優越的地位の乱用」にあたるとしています。
陳述では「サービスの負担はオーナーに押し付けられ、本部はその犠牲の上に利益だけを受け取っている」とも述べ、裁判の目的について「全国のオーナーの声を代弁し、本部と対等な交渉をすることをめざす」と語りました。
この日はセブン側代理人弁護士も意見陳述し、契約解除は「24時間営業をやめたことへの意趣返しではない」と主張。松本さんによる客への暴行など「異常な顧客対応」があったと繰り返し強調し、契約違反のため解除したと述べました。松本さんがマスコミ取材に応じたことについては「報道機関を利用した虚偽情報の発信や操作」だと批判しました。
閉廷後に会見した松本さんは「(セブン側は)僕を悪者にしたいのだろう。24時間営業を強制し、無理だと言っても聞かない。声を上げるとつぶそうとする。理不尽だ」と語りました。
セブン社は「引き続き裁判の中で主張・立証する」などとするコメントを出しました。
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傍聴した日本共産党の辰巳孝太郎前参院議員は「コンビニなどのフランチャイズチェーンでは、加盟店オーナーよりも本部の力がはるかに大きい。やむにやまれず声を上げた件が、裁判にまでなった。業界の健全化には法整備も必要だが、この裁判がそれに向けた一助になってほしい」と話しました。